【ひな形付き】初心者でもわかる遺産分割協議書の書き方ガイド


保有資格:R7司法書士試験合格者(2026年中に司法書士事務所を開業予定)、行政書士、ファイナンシャルプランナー(2級・AFP未登録)
取扱予定業務:遺産承継(預貯金、相続登記など)・生前対策(遺言、任意後見、信託など)・民事裁判・離婚
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遺産分割協議書とは?
遺産分割協議とは、故人の遺産を、誰が、どの割合で、どのように引き継ぐのかを、相続人全員で話し合うことをいいます。その話し合いの結果をとりまとめた書面が遺産分割協議書です。遺産分割協議自体は口頭(口約束)でも成立しますが、あとで言った・言わないのトラブルになることを防ぐために遺産分割協議書を作っておいた方が安心です。
遺産分割協議証明書との違い
遺産分割協議書に似た書面として「遺産分割協議証明書」という書面があります。どちらも遺産分割協議の内容をまとめた書面という点では共通しています。
しかし、遺産分割協議書は、1通の書面に相続人全員が署名・実印の押印をして完成させます。一方、遺産分割協議証明書は、同じ内容の書面を相続人の数分作成し、各相続人が個別に署名・押印するという違いがあります。
相続人が遠方に住んでいる場合や人数が多い場合、1通の協議書を郵送で回し合うと時間や紛失のリスクが生じます。証明書方式なら各相続人に同時に郵送・回収できるため、安全かつスムーズに手続きを進めることができます。
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遺産分割協議書が必要な場合
このように、言った・言わないの相続人の間のトラブルを防止するという意味でも遺産分割協議書の作成は必要といえます。また、法務局や金融機関などの第三者は、相続人間でどのような協議が成立したのか知りようがありません。そのため、遺産の名義変更をする際に、法務局や金融機関などの第三者に対して「このような話し合い(協議)の結果になりましたよー」ということを証明する必要がある場合には遺産分割協議書の作成は必須といえます。
【遺産分割協議書の作成が必要な場合】
- 遺産(不動産、預貯金など)がある場合(遺産の名義変更等をする場合)
- 特例を適用して税務署に相続税の申告をする場合
遺産分割協議書が不要な場合
一方で、以下のようなケースでは遺産分割協議書の作成は必要ありません。
【遺産分割協議書の作成が不要な場合】
- 相続人が一人しかいない場合
- 有効な遺言書がある場合
相続人が一人しかいない場合は遺産分割協議が不要だからです。また、遺言書がある場合は遺言書に書かれてあるとおりに引き継ぐのが原則だからです。もっとも、相続人全員の同意があれば遺言書と異なる引き継ぎ方もできます。その場合は、相続人間の話し合いが必要となりますので、遺産分割協議書の作成は必要でしょう。
遺産分割協議書を作成するための準備
仮に、遺産分割協議書の作成が必要な場合でも、作成する前にいろいろとやらなければならないことがあります。
【1】遺言書がないことの確認する
まず、相続手続をはじめるにあたっては遺言書がないかを確認しなければなりません。遺言書があると、原則として遺言書に書かれてあるとおりに遺産を引き継ぐ必要があり、遺産分割協議は不要となるからです。遺言書の探し方は遺言書の種類によって異なります。
【2】相続人を確定する
遺言書がないことを確認できたら、次は相続人を確定する作業に入ります。具体的には、故人の出生から死亡までの戸籍や相続人の戸籍などを収集し、解読して相続人を確定します。遺産の名義変更等が必要なときは相続関係説明図などの書類を作る必要があります。
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【3】遺産を確定する
相続人の確定作業と同時に遺産の確定作業も進めます。具体的な作業は遺産によって異なります。不動産であれば固定資産税納税通知書や名寄帳などを取り寄せて、故人名義の不動産であることを確認することから始めます。また、不動産などのプラスの財産だけではなく、借金などのマイナスの財産も調べる必要があります。
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【4】相続するか否かを判断する
遺産をある程度確定できたら、各相続人は遺産を相続するかしないかを決める必要があります。もし相続したいのであれば特段何もする必要はありませんが、相続したくない場合は家庭裁判所に対して相続放棄を申述する手続をとる必要があります。この手続は、相続人が故人の死亡及び自身が相続人となったことを知ってから3か月以内にとる必要があります。
【5】遺産分割協議する
相続人・遺産が確定したら、相続人間で遺産の分け方について話し合います。話し合いは相続人全員(以下の人を除く)がどこかの場所に集まって行う必要はありませんが、何らかの形で関与させて意思確認をとっておく必要があります。相続人や遺産が欠けると協議自体が無効とされてしまうおそれがありますので注意が必要です。
【遺産分割協議に参加させなくてよい人】
- 相続放棄した人
- 欠格事由がある人
- 廃除された人
- 自分の相続分を他人に譲渡した人
Q:遺産分割協議が無効となる場合(例)
遺産分割協議が無効となる場合とは、次のようなケースが考えられます。
- 相続人が一部欠けた状態で遺産分割協議をした
例:前妻(前夫)との間の子、認知された非嫡出子、養子などの存在を知らずに、現在の家族だけで協議を終わらせてしまった
- 相続人でない人を遺産分割協議に参加させた
例:相続放棄した人や、欠格事由がある人、廃除された人、あるいは戸籍上のミスで相続人だと思い込んでいた人を遺産分割協議に参加させた
- 判断能力に欠ける人を遺産分割協議に参加させた
対策:認知症や重度の知的障害がある方(成年被後見人)については成年後見人を、相続人に未成年者がいる場合には特別代理人を選任する申し立てを家庭裁判所に対して行う必要があります。
Q:遺産分割協議が取り消される場合
次に、遺産分割協議が取り消される場合とは、次のようなケースが考えられます。
- 詐欺(だまされて合意した)
例:「実家の土地は価値がほとんどない」と嘘の評価額を見せられて引き下がったが、実際には価値の高い土地だった。特定の相続人が故人の預金口座を隠していたなど。
- 脅迫(脅されて合意した)
例:「この内容にに同意しないと暴力を振るう」「実印を押さなければ家族に嫌がらせをする」などと脅され、拒否できない状況で無理やりサインさせられたなど
- 錯誤(重大な勘違いがあった)
例:遺産分割協議後に、故人に「遺産額を大きく上回るような多額の借金(マイナスの財産)」があることが後から発覚した場合など、その事実を知っていれば絶対にその内容で合意しなかったと言える場合。
【無効と取消しの違い】
無効と取消しの違いは以下のとおりです。
無 効:はじめから効力が生じない。
取消し:取り消すまでは一応有効。取消しの意思表示をすることで過去に遡って無効にできる。なお、取消しには期間制限が設けられています。
遺産分割協議に応じない、進まない場合は?
遺産分割協議は相続人全員の合意が不可欠です。一部の人が話し合いに応じなかったり、過度な要求をして納得しなかったりすると、不動産の名義変更などの各種相続手続きがストップしてしまいます。協議が進まない場合は、以下の対処法を段階的に検討しましょう。
【1】内容証明郵便を送る
何度も連絡を無視する相手、疎遠な相手には、「遺産分割協議に協力してほしい」という旨を手紙にし、内容証明郵便で送ります。公的な記録として残るため、こちらの本気度が相手に伝わり、話し合いのテーブルについてくれるきっかけになります。
【2】専門家を間に入れる
対立が激しく、直接の交渉を任せたい場合は「弁護士」へ。深刻な対立はなく、単に手続きが放置されている状態であれば「司法書士」へ依頼しましょう。専門家が案内状や内容証明を作成し客観的に介入することで、スムーズに遺産分割協議が進むきっかけになります。
【3】調停を申し立てる
当事者同士で遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てます。中立な立場の調停委員が間に入り、双方の言い分を聞きながら解決に向けた調整を行ってくれます。相手と直接顔を合わせずに進めることもできるため、冷静な話し合いが期待できます。
【放置は厳禁!早めの対処を】
相続手続きには「相続税の申告(10ヶ月以内)」「相続登記の義務化(3年以内)」など、期限が定められているものがあります。協議が進まないからといって放置せず、早めに弁護士などの専門家に相談するか、家庭裁判所の手続きを活用して解決を目指しましょう。
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遺産分割協議書のひな形
遺産分割協議を経て合意に達することができたら、次は、その合意した内容を遺産分割協議書にまとめます。ここでは、以下のような遺産分割協議が成立した場合に作成する遺産分割協議書のひな形をお示しします。まずは、ざっくりとしたイメージをつかんでいただければと思います。
【設例】
故 人:山田太郎(夫)
相 続 人:山田花子(妻)、山田一郎(長男)、山田二郎(次男)
遺 産:①山田太郎名義の土地、建物②預金500万円
協議の結果:①は妻が相続する。②は長男と次男が半額ずつ相続する。
遺産分割協議書
(本 籍)〇〇県〇〇市〇〇町一丁目〇番地
(住 所)〇〇県〇〇市〇〇町一丁目〇番〇号
(登記簿上の住所)〇〇県〇〇市〇〇町一丁目〇番〇号
(被 相 続 人)山田太郎
昭和○○年○月○日出生
令和○年○月○日死亡
被相続人 山田太郎 の下記相続財産について、同人の相続人が 山田花子、山田一郎、山田二郎であることを確認の上、相続人全員にて遺産分割の協議を行った結果、下記のように相続することに合意した。
記
第1条 相続財産中、次の不動産は 山田花子 が相続する。
不動産の表示
(土地)所 在:〇〇県〇〇市〇〇町一丁目
地 番:〇〇番〇
地 目:宅地
地 積:〇〇〇.〇〇平方メートル
(建物)所 在:〇〇県〇〇市〇〇町一丁目〇〇番地〇
家屋番号:〇〇番〇
種 類:居宅
構 造:木造かわらぶき2階建
床 面 積 :1階 〇〇.〇〇平方メートル
2階 〇〇.〇〇平方メートル
第2条 相続財産中、次の預金は、相続人山田一郎と相続人山田二郎がそれぞれ2分の1ずつ相続する。
なお、分割に際して端数が生じた場合には、当該端数は相続人山田一郎が相続する。
〇〇銀行 〇〇支店 普通預金 口座番号:1234567
第3条 本協議書に記載のない財産、及び後日新たに判明した財産については、相続人山田花子が相続
する。
上記のとおり、遺産分割協議が成立したので、これを証するため本書を作成し、署名押印する。
令和〇年〇月〇日
住所:〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
氏名:山田花子 ㊞
住所:〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
氏名:山田一郎 ㊞
住所:〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
氏名:山田二郎 ㊞
遺産分割協議書のダウンロード
上の内容の遺産分割協議書の書式はこちらからダウンロードできます。
遺産分割協議書の書き方
それでは、ここからは、遺産分割協議書のひな形について、各箇所ごとの書き方について解説していきたいと思います。
冒頭
遺産分割協議書
(本 籍)〇〇県〇〇市〇〇町一丁目〇番地
(住 所)〇〇県〇〇市〇〇町一丁目〇番〇号
(登記簿上の住所)〇〇県××市××町三丁目△番△号
(被 相 続 人)山田太郎
昭和○○年○月○日出生
令和○年○月○日死亡
タイトルは「遺産分割協議書」とします。本籍・(故人の死亡時の)住所・被相続人は今回の被相続人が山田太郎であることを明確にするために書きます。登記簿上の住所は遺産に不動産がある場合に書きます。本籍・住所と登記簿上の住所が異なるときはこれらを併記します。不動産の名義変更をする際は当該不動産が故人の不動産であることを証明する必要がありますが、その際は、住所と登記簿上の住所との一連のつながりを戸籍の附票等で証明する必要があります。
導入文章
被相続人 山田太郎 の下記相続財産について、同人の相続人が 山田花子、山田一郎、山田二郎であることを確認の上、相続人全員にて遺産分割の協議を行った結果、下記のように相続することに合意した。
ここでは、誰の相続財産(「被相続人 山田太郎 の下記相続財産について、」の箇所)を、誰が(「同人の相続人が 山田花子、山田一郎、山田二郎であることを確認」の箇所)遺産分割協議した(「相続人全員にて遺産分割の協議を行った」の箇所)のかを書きます。一人でも相続人が欠けると遺産分割協議は無効ですので、確認の意味でもここで誰が相続人であるかを書くことをおすすめします。
【数次相続が起きた場合】
被相続人(山田太郎)が亡くなって最初の相続(一次相続)が始まった後、その相続人の一人(たとえば、山田花子)が亡くなってしまい、次の相続(二次相続)が開始するという相続が重なってしまう状況を数次相続といいます。数次相続が起きた状態で、たとえば、山田一郎と山田二郎が山田花子の遺産も含めた遺産分割協議をする場合は導入文章から書き方の工夫が必要となってきます。
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第1条(不動産の相続)
第1条 相続財産中、次の不動産は 山田花子 が相続する。
不動産の表示
(土地)所 在:〇〇県〇〇市〇〇町一丁目
地 番:〇〇番〇
地 目:宅地
地 積:〇〇〇.〇〇平方メートル
(建物)所 在:〇〇県〇〇市〇〇町一丁目〇〇番地〇
家屋番号:〇〇番〇
種 類:居宅
構 造:木造瓦葺2階建
床 面 積 :1階 〇〇.〇〇平方メートル
2階 〇〇.〇〇平方メートル
不動産の相続では「不動産の表示」を登記事項証明書(登記簿謄本)の表題部に書かれてあるとおりに書くことがポイントです。土地は所在、地番、地目、地積で、建物は所在、家屋番号、種類、構造、床面積で特定します。登記事項証明書は最寄りの法務局やインターネットからでも取り寄せることができます。
【土地の表題部】

【建物の表題部】

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第2条(預金の相続)
第2条 相続財産中、次の預金は、相続人山田一郎と相続人山田二郎がそれぞれ2分の1ずつ相続する。
なお、分割に際して端数が生じた場合には、当該端数は相続人山田一郎が相続する。
〇〇銀行 〇〇支店 普通預金 口座番号:1234567
預貯金の相続では「金融機関名」、「支店名」、「預金の種類」、「口座番号」で相続の対象となる口座を特定します。預貯金残高は日々変動するため書きません。ゆうちょ銀行の場合は「記号」と「番号」で特定するのが一般的です。「記号」と「番号」は通帳の見開きページに記載されています。
第〇条 相続財産中、次の貯金は、相続人○○○○が相続する。
ゆうちょ銀行 通常貯金 記号:12345 番号:12345671
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第3条(その他の財産の相続)
第3条 本協議書に記載のない財産、及び後日新たに判明した財産については、相続人山田花子が相続する。
最後に、本協議書に記載のない財産や、後日になって新たに判明した財産を誰が引き継ぐかを決めた条項を盛り込んでおきます。この条項を入れておくことで、後から小さな遺産が見つかった際に、再び相続人全員で遺産分割協議をやり直す手間を防ぐことができます。漏れのない遺産分割協議書とするためにも盛り込んでおくことをおすすめします。
締め、日付、住所・氏名・押印
上記のとおり、遺産分割協議が成立したので、これを証するため本書を作成し、署名押印する。
令和〇年〇月〇日
住所:〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
氏名:山田花子 ㊞
住所:〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
氏名:山田一郎 ㊞
住所:〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
氏名:山田二郎 ㊞
最後に、相続人全員が合意した証として署名と押印を行います。日付は「最後の人が署名押印した日」を書くのが一般的です。 住所と氏名は必ず「印鑑登録証明書」に記載されている通り一言一句正確に書きます。不動産の名義変更や預貯金の解約の際は、各相続人の印鑑登録証明書の提出を求められますのであらかじめ取得しておきます。氏名は手書き(自署)します。また、押印は必ず市区町村に印鑑登録している「実印」を鮮明に押してください。
遺産分割協議証明書を作成してもよい
ここまで解説してきた遺産分割協議書は、一通の遺産分割協議書を相続人が持ち回りし、相続人全員が署名・押印する形をとっていました。しかし、必ずしもこの形をとらなければならないわけではありません。
相続人が多い、海外居住者の相続人がいる、住所を知られなくないなどの事情から、一通の遺産分割協議書を持ち回りし、それに相続人全員が署名・押印することが難しい場合もあるでしょう。
そのような場合は、同じ内容の遺産分割協議書を相続人の数だけ作り、相続人全員に遺産分割協議を渡して、その協議書には相続人一人だけが署名・押印するという遺産分割協議証明書を作ることも考えられます。

遺産分割協議書が複数枚になった場合の対処法
遺産分割協議書が複数枚にわたるときは、A3用紙を使うことをおすすめします。A4用紙を複数枚使う場合、書類が一連のものであることを示すため用紙と用紙の間に契印を押す必要がありますが、A3用紙ではこれが不要だからです。A4用紙にこだわりがある場合は、袋とじにするという方法もあります。この場合、袋とじをした箇所だけに契印を押せば足ります。
遺産分割協議書の条項のひな形
ここでは、これまでに解説できなかった遺産分割協議書においてよく使われる条項のひな形を紹介します。ここで紹介するひな形はあくまで一例にすぎませんので、参考程度にとどめていただきますようお願いします。
葬儀費用の負担
相続人全員は、喪主である相続人〇〇が葬儀費用を負担することを確認した。
葬儀費用については誰が負担すべきという決まりはありません。しかし、話し合いの結果、相続人間で一定の合意形成が図られた場合には、後々のトラブルを防止する意味でも遺産分割協議にその内容を書いていた方がよいと考えます。上記は、特定の相続人がご自身の財産から負担し、他の相続人に請求しない場合の条項例です。
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代償分割による遺産分割
第○条(遺産の取得)
相続人○○○○(長男)は、被相続人の遺産である以下の不動産を取得する。
不動産の表示
(土地)所 在:〇〇県〇〇市〇〇町一丁目
地 番:〇〇番〇
地 目:宅地
地 積:〇〇〇.〇〇平方メートル
(建物)所 在:〇〇県〇〇市〇〇町一丁目〇〇番地〇
家屋番号:〇〇番〇
種 類:居宅
構 造:木造瓦葺2階建
床 面 積 :1階 〇〇.〇〇平方メートル
2階 〇〇.〇〇平方メートル
第〇条(代償金の支払い)
1 相続人○○○○は、前条の遺産を取得する代償として、相続人△△△△(次男)に対し、代償金〇〇〇万円を支払う。
2 相続人○○○○は、前項の代償金を令和〇年〇月〇日までに、相続人Bが指定する以下の金融機関口座に振り込む方法により支払う。なお、振込手数料は相続人○○○○の負担とする。
(※ここに振込先の口座情報を記載します)
代償分割による遺産分割を行うことで合意できたら、遺産分割協議書に代償分割に関する条項を盛り込むべきです。上記は相続人である長男が不動産を取得する代わりに、相続人である次男に代償金を一括で支払う内容となっています。「遺産を取得する代償として」という文言を盛り込むことがポイントで、この文言がかけていると代償金の支払が次男への贈与とみなされ、次男に贈与税がかかる可能性があるため注意が必要です。
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配偶者居住権の設定
第〇条(所有権の取得)
相続人○○○○(被相続人の長男)は、被相続人の遺産である以下の不動産を取得する。
不動産の表示
(土地)所 在:〇〇県〇〇市〇〇町一丁目
地 番:〇〇番〇
地 目:宅地
地 積:〇〇〇.〇〇平方メートル
(建物)所 在:〇〇県〇〇市〇〇町一丁目〇〇番地〇
家屋番号:〇〇番〇
種 類:居宅
構 造:木造瓦葺2階建
床 面 積 :1階 〇〇.〇〇平方メートル
2階 〇〇.〇〇平方メートル
第〇条(配偶者居住権の取得)
被相続人の配偶者である相続人△△△△は、相続開始時に居住していた前条の建物につき配偶者居住権を取得する。 なお、配偶者居住権の存続期間は、相続人△△△△の死亡時までとする。 相続人○○○○は、相続人△△△△に対し、この配偶者居住権の設定登記を備えさせるものとする。
配偶者居住権は、配偶者以外の人が建物の所有権を取得したことが前提となる権利です。そこで、本条項例では、「所有権の取得」において、長男が被相続人の不動産(の所有権)を取得することを明らかにしています。配偶者居住権は設定登記をしてはじめて意味のあるものとなります。設定登記の申請では、配偶者居住権をいつまで存続させるのか(存続期間)を明記して行わなければなりません。そのため、遺産分割協議書でも存続期間(配偶者の死亡時まで)を明記しています。
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生命保険の契約者の変更
第〇条(生命保険契約者の変更)
相続人〇〇は、被相続人が契約していた下記生命保険契約における契約者たる地位(解約返戻金請求権を含む)を承継取得する。
記
保険会社名:〇〇生命保険株式会社
保険種類 :〇〇保険
証券番号 :〇〇〇〇〇〇〇
被相続人が生命保険の「契約者」であり、かつ「被保険者(保険の対象になっている人)」が別の方である場合、その保険契約は被相続人が亡くなった後も存続し、「保険契約者の地位(生命保険契約に関する権利)」が相続財産として遺産分割の対象となります。この契約者の地位を特定の相続人に引き継ぐ(名義変更する)ための遺産分割協議書の条項案は上記の通りです。
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車の名義変更
第〇条
相続人〇〇は、被相続人が所有していた下記の自動車を取得する。
記
普通乗用車(※または軽自動車など) 1台
車名 :〇〇〇〇
自動車登録番号:〇〇 〇〇〇 〇 〇〇〇〇
車台番号 :〇〇〇〇〇〇〇-〇〇〇〇〇〇〇
名義人 :○○○○(被相続人の氏名)
車を相続する場合の遺産分割協議書では、対象となる自動車を特定するために「車検証」の記載内容に沿って正確に相続する車の情報を記入することが重要です。なお、車検証は2023年(令和5年)1月4日(軽自動車は2024年1月4日)より、徐々に電子車検証に移行しています。
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遺産分割協議書の作成 Q&A
最後に、遺産分割協議書を作るにあたってよくある疑問についてお答えします。
Q.パソコンで作る必要がありますか?手書きではだめですか?
どちらでも有効ですが、パソコンでの作成をおすすめします。手書きの場合、一文字でも間違えると相続人全員の実印による訂正印が必要になるなど、修正の手間が膨大になるためです。
Q.用紙と書式に決まりはありますか?
決まりはありませんが、前述のとおり、用紙が2枚以上にわたる場合はA3用紙を使うか、袋とじにすることをおすすめします。また、縦書きでも横書きでも構いませんが、数字が書きやすい横書きが主流です。
Q. 遺産分割協議書はいつまでに作成しなければなりませんか?
期限はありません。しかし、以下の手続きには期限があるため、それに間に合うように協議書を作成するのが一般的です。
- 相続税の申告・納付(故人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内): 相続税がかかる場合、この期限までに申告と納税を済ませる必要があります。特例(配偶者の税額軽減など)を使うには、申告までに遺産分割協議が終わっている必要があります。
- 相続登記の義務化(相続により不動産の取得を知った日から3年以内): 2024年(令和6年)4月1日より、不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記をすることが義務化されました。
- 特別受益・寄与分の主張期限(故人の死亡時から10年以内): 2023年(令和5年)4月の民法改正により、「故人が死亡してから10年」を経過すると、原則として「特別受益」や「寄与分」の主張ができなくなりました。 10年を過ぎてしまうと、生前の事情が一切考慮されず、法定相続分に従って遺産を分けることになります。「自分は親の介護をがんばった」「あの人は生前に多額の援助を受けていた」といった事情を遺産分割に反映させたい場合は、10年以内に遺産分割協議をまとめるか、家庭裁判所に調停を申し立てる必要があります。
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Q. 遠方に住んでいる相続人がいて全員で集まるのが難しいです。どうすればよいですか?
遺産分割協議では全員の合意があればよいため、電話、メール、LINEなどで話し合いを行うこともできます。内容がまとまったら協議書を作成します。 署名押印については、1通の遺産分割協議書を相続人間で順番に郵送して署名・実印の押印をしていく方式や、同じ内容の協議書を人数分作成して各自が1通ずつ署名押印する方式で進めることができます。
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Q. 相続人の中に未成年者がいる場合、親が代わりにサインしてもよいですか?
夫が亡くなり、妻と未成年の子どもが相続人になるケースです。この場合、妻と子どもは遺産を分け合う「利益が対立する関係(利益相反関係)」になります。そのため、親権者である妻が子どもの代理人になることはできず、妻が子どもの代わりにサインすることはできません。家庭裁判所に申し立てて、子どものためだけの代理人(特別代理人)を選任してもらい、その人が代わりに遺産分割協議に参加し、署名押印を行います。
Q. 認知症で施設に入っている親がいます。他の家族で決めてしまってもよいですか?
相続人の一人が認知症であっても、その人を除いて遺産分割協議を成立させることはできません。もっとも、相続人が認知症であって判断能力が欠ける方を遺産分割協議に参加させても、その協議は無効です。そこで、相続人が認知症などで意思能力が欠けている場合、家庭裁判所に申し立てて成年後見人(判断能力の程度によっては保佐人・補助人)を選任してもらう必要があります。そして、選任された後見人が、本人の代わりに遺産分割協議に参加し、署名押印を行います。
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Q. 連絡が取れない、あるいは行方不明の相続人がいる場合はどうすればいいですか?
相続人の一部が行方不明だからといって、その人を除外して作った遺産分割協議書は無効です。この場合、家庭裁判所に申し立てて、行方不明者の財産を管理する不在者財産管理人を選任してもらいます。その後、家庭裁判所の許可を得た上で、その管理人が不在者の代わりに遺産分割協議に参加します。
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Q. 借金などのマイナスの財産も遺産分割協議書に書くべきですか?
借金やローンなどのマイナスの財産は、法律上、故人の死亡と同時に法定相続分に応じて自動的に分割されます。 遺産分割協議書の中で「長男がすべての借金を背負う」などと決めること自体は自由(相続人間では有効)ですが、銀行などの債権者に対しては「協議で長男が全額払うことになったから、自分(他の相続人)には請求しないでくれ」と主張することはできません。
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Q. 遺産分割協議書に「捨印(すていん)」は押すべきですか?
捨印とは、あらかじめ欄外に実印を押しておくことで「後から誤字脱字があっても、この印鑑で自由に訂正してよい」という意思表示になるものです。手続きをスムーズにする側面はありますが、捨印を押すことで自分以外の誰かに勝手に金額や相続する割合などを書き換えられてしまうリスクがあります。そこで、専門家に作成を依頼するとき以外(自分たちで遺産分割協議書を作成するとき)は、遺産分割協議書には捨印は押さない方がよいでしょう。
Q. 相続人の一人が海外に住んでいて、実印も印鑑登録証明書もありません。どうすればいいですか?
住民票を日本から抜いて海外にお住まいの方は、日本の市区町村で印鑑登録ができないため印鑑登録証明書が取れません。このような場合は、海外在住の相続人向けに「遺産分割協議証明書」を作成して海外の滞在先へ郵送し、本人が現地の日本大使館や総領事館に赴いて、領事の目の前で署名(サイン)と拇印を行います。これにより発行される「サイン証明書(署名証明書)」を、印鑑証明書の代わりとして使います。
💡海外在住の相続人が不動産を相続する場合の注意点
①相続登記に使用する場合のサイン証明書は、持参した遺産分割協議証明書と領事館が発行する証明書を綴り合わせて契印(割印)する形式のものを取得する必要があります。
②令和6年(2024年)4月1日より、海外在住者が不動産を相続して名義変更をする際、登記簿に「国内の連絡先(国内で連絡先となる者の氏名・住所)」を登録するか、あるいは「国内に連絡先がない旨」を併せて登記することが新たに義務付けられました。
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Q. 一度全員で合意して実印を押した遺産分割協議を、後からやり直すことはできますか?
一部の相続人だけが不満を持っている状態ではやり直せませんが、全員が「やり直そう」と同意すれば、法的には再度、話し合うことは可能です。 しかし、一度確定した遺産の移動を後から変更することになるため、税務署からは「遺産分割ではなく、相続人同士の財産の譲渡(または贈与)」とみなされる可能性があり、その場合、高額な贈与税や譲渡所得税、不動産取得税などが新たに発生してしまうおそれがあります。そのため、安易なやり直しは禁物です。

保有資格:R7司法書士試験合格者(2026年中に司法書士事務所を開業予定)、行政書士、ファイナンシャルプランナー(2級・AFP未登録)
取扱予定業務:遺産承継(預貯金、相続登記など)・生前対策(遺言、任意後見、信託など)・民事裁判・離婚

