遺贈寄付とは | メリット・デメリットと自治体など寄付先を解説

「終活」という言葉がすっかり定着し、ご自身の人生の締めくくり方について前向きに考える方が増えています。その中で近年、新たな財産の残し方として大きな注目を集めているのが「遺贈寄付」です。
身寄りがいないため、財産が国庫に納められるくらいなら社会の役に立ててほしい」「お世話になった故郷や母校に恩返しがしたい」といった想いを、遺言書を通じて実現できる素晴らしい選択肢として選ばれています。
一方で、遺贈寄付には事前に知っておくべきルールや注意点もあります。ルールや注意点を知っておかなければ遺贈寄付を実現できないばかりか、残されたご家族に迷惑をかけるおそれもあります。
本記事では、遺贈寄付の基本的な仕組みから、具体的なメリット・デメリット、寄付先の選び方、そして実際の手続きの流れまでを分かりやすく網羅的に解説します。ご自身が築き上げた大切な財産の「最後の生かし方」を検討されている方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。

保有資格:R7司法書士試験合格者(2026年中に司法書士事務所を開業予定)、行政書士、ファイナンシャルプランナー(2級・AFP未登録)
取扱予定業務:遺産承継(預貯金、相続登記など)・生前対策(遺言、任意後見、信託など)・民事裁判・離婚
遺贈寄付とは
遺贈寄付とは、ご自身がお亡くなりになった後に、残った財産の一部または全部を、特定の団体や自治体に寄付することです。
通常、亡くなった方の財産は、配偶者や子どもといった相続人に引き継がれます。しかし、生前に遺言書を作成しておくことで、ご自身の意思で財産の行き先(NPO法人、公益法人、学校、地方自治体など)を指定することができます。
遺贈寄付の近年の傾向
近年、遺贈寄付への関心は急速に高まっており、実際に寄付を行う人や金額も増加傾向にあります。その背景と現在の傾向について、公表されているデータや調査結果をもとに解説します。
【1】遺贈寄付の認知度と関心の高まり
遺贈寄付という言葉や仕組み自体の認知度は年々上昇しています。
日本承継寄付協会が発表した「2025年度『遺贈寄付』に関する実態調査」によると、20代~70代における遺贈寄付の認知度は63.8%に達しており、特に70代では84.5%と非常に高く浸透しています。
また、日本ファンドレイジング協会が発行する「寄付白書2025」の調査でも、「将来資産があれば、亡くなる際に一部を遺贈寄付してもよいと思う」と回答した人の割合が44.8%となっており、社会貢献への前向きな姿勢を持つ方が増えていることがわかります。
参照:2025年度『遺贈寄付』に関する実態調査 | 日本承継寄付協会
参照:寄付白書2025 | 日本ファンドレイジング協会
【2】実際の寄付件数・寄付額も増加傾向
関心が高まっているだけでなく、実際に遺贈寄付を実行する件数も増えています。
国税庁のデータをもとにした集計によれば、2023年度(令和5年度)に全国で実行された遺贈寄付は約1,142件、金額にして約643億円に上りました。件数・金額ともに増加傾向を維持しており、超高齢社会を背景に、自身の財産の最後の使い道を真剣に考える層が確実に増えていることが読み取れます。
【3】背景にある「国庫帰属財産」の急増
遺贈寄付が注目される大きな理由の一つが、身寄りのない「おひとりさま」の増加です。
法定相続人がおらず、遺言書も残されていない場合、その方の財産は最終的に国庫(国の財産)に入ります。最高裁判所の統計によると、このようにして国庫に帰属した相続財産の総額は2022年度(令和4年度)に約769億円に達し、過去最高を更新しました。この20年間で数倍に膨れ上がっています。
「自分の財産がただ国に回収されるくらいなら、生前のうちに遺言書を残し、応援したいNPO法人や母校、お世話になった自治体のために使ってほしい」——このような思いから、終活の重要な選択肢として遺贈寄付を選ぶ方が近年急増しているのです。
遺贈寄付の3つのメリット
遺贈寄付には以下のメリットがあります。
【1】自分の財産を社会貢献・未来のために活かせる
まず、生前に築いた大切な財産を、ご自身が関心を持つ分野の社会貢献や未来のために活かせる点です。
医療の発展、子どもたちの教育支援、動物愛護、環境保護など、ご自身の価値観や想いを反映させた寄付先を自由に選ぶことができます。単に財産を残すだけでなく、「社会をより良くするために使ってほしい」という願いを死後に実現できるのが大きな魅力です。
【2】相続税の非課税措置を受けられる場合がある
次に、寄付した財産に対して相続税の非課税措置を受けられる場合がある点です。
通常、一定額以上の財産を相続すると相続税が発生しますが、国や地方自治体、特定の公益法人や認定NPO法人などへ遺贈寄付をした場合、その寄付した財産分は相続税の課税対象から除外される特例があります。ご自身の想いを社会に役立てつつ、結果として残されたご家族の相続税の負担を軽減できる可能性があります。
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【3】身寄りのない方の財産の行き先を決められる
次に、身寄りのない方(おひとりさま)が、ご自身の財産の最後の行き先を明確に決められる点です。
法定相続人がおらず、遺言書も残されていない場合、その財産は最終的に国庫(国の財産)に帰属します。「ただ国に回収されるくらいなら、お世話になった地域や応援したい団体に使ってほしい」と考える方にとって、遺贈寄付はご自身の意思を最後まで貫くための非常に有効な手段となります。
遺贈寄付のデメリット(注意点)
遺贈寄付にはメリットがある一方で、以下のデメリットもあります。
【1】相続人の遺留分を侵害してしまう可能性がある
まず、遺言書の内容によっては、残された相続人の「遺留分」を侵害してしまい、トラブルになる可能性がある点です。
遺留分とは、配偶者や子どもなどの相続人に法律で最低限保障された相続割合のことです。たとえば「全財産を特定の団体に寄付する」といった内容にしてしまうと、遺留分を侵害された相続人が寄付先に対して「自分たちの最低限の取り分だけでもお金を返して」という遺留分侵害額請求をする可能性があります。遺贈寄付するにしても、相続人の遺留分にも十分配慮しておく必要があります。
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【2】現金以外の寄付は断られることがある
次に、不動産や株式といった「現金以外」の財産は、寄付先から受け取りを断られるケースが多い点です。
多くの団体や自治体では、現金化する際の手間や、不動産の維持・管理コスト(固定資産税など)がかかることを理由に、現預金以外の寄付を原則不可としています。不動産などの寄付を考えている場合は、事前に寄付先へ受け入れ可能か確認するか、遺言で「不動産を売却・換金して現金にしてから寄付する(清算型遺贈)」という指定をしておくなどの対策が必要です。
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【3】遺言書の作成費用や手間がかかる
次に、遺贈寄付を確実に実行するためには、法的に有効な遺言書を作成する費用や手間がかかる点です。
自分で書く「自筆証書遺言」は費用を抑えられますが、形式不備などで無効になる可能性があります。そのため、そのリスクを避けるには公証役場で公正証書遺言を作成するのが一般的です。もっとも、公正証書遺言を作成する場合、公証人に支払う手数料や必要書類を集める手間がかかります。また、弁護士や司法書士などの専門家にサポートを依頼すれば報酬も発生することを頭に入れておく必要があります。
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遺贈寄付の主な寄付先
【1】自治体(都道府県・市区町村)
まず、生まれ故郷や長年住んでお世話になった都道府県・市区町村などの自治体へ寄付する方法です。
いわば「ふるさと納税の遺贈版」のようなイメージで、過疎化が進む地域の振興や、思い入れのある街の公共サービス拡充などに役立ててもらうことができます。ただし、自治体によっては使い道を細かく指定できないケースや、不動産の受け取りを不可としているケースもあるため、事前の相談が不可欠です。
【2】公益法人・認定NPO法人・NGO
次に、特定の社会課題に取り組む公益法人や認定NPO法人、NGOなどの民間団体へ寄付する方法です。
医療支援、子ども食堂などの貧困対策、動物愛護、環境保護など、ご自身が強い関心を持つ分野で活動している団体をピンポイントで直接支援できるのが大きな特徴です。なお、寄付先が一定の要件を満たす公益法人や認定NPO法人などであれば、その寄付した財産には相続税がかからないという特例を受けられます。
【3】大学・学校法人
次に、ご自身の母校や、特定の研究を行っている大学・学校法人などへ寄付する方法です。
寄付金は、未来を担う学生のための奨学金や、難病治療などの最先端の研究資金、キャンパスの施設整備などに活用されます。「教育や研究を通じて社会に貢献したい」「自分の人生を豊かにしてくれた母校に恩返しをしたい」と考える方に多く選ばれる寄付先となっています。
遺贈寄付の流れ
遺贈寄付をご自身の希望通りに、かつ後のトラブルなく実現するためには、正しい手順で準備を進めることが大切です。ここでは、遺贈寄付を検討し始めてから実際に寄付が実行されるまでの具体的な手順を、6つのステップに分けて解説します。
【1】専門家に相談する
まず、専門家に相談します。
遺贈寄付には法的な知識や手続きが必要になるため、弁護士や司法書士などの専門家、または希望する寄付先団体へ事前に相談し、制度の仕組みやご自身の希望が実現可能かを確認しておく必要があります。
【2】相続人・財産を把握する
次に、相続人と財産の状況を正確に把握します。
ご自身の相続人が誰になるのか、預貯金や不動産、有価証券などの財産がどれだけあるのかをリストアップし、遺留分の侵害など後に起こりうるトラブルを防ぐための現状確認を行います。
【3】財産の配分・寄付先を決める
次に、財産の配分と具体的な寄付先を決めます。
遺贈寄付を行う際、まずは残されるご家族(相続人)の生活や遺留分に配慮し、誰に・どの財産を・どれくらい残すのかという「相続人への財産の配分」をしっかりと検討することが大切です。
ご家族へ残す財産の配分を決めた上で、遺贈に回す寄付額や財産の種類を決定し、希望する寄付先の団体や自治体がその財産(不動産などの現金以外の財産でも受入可能か等)を受け入れてくれるかをあらかじめ確認・打診します。
【4】遺言執行者を決める
次に、遺言執行者を決めます。
遺言執行者とは、ご自身が亡くなった後に遺言の内容に従って遺贈手続きや名義変更などを進めてくれる人のことです。遺贈寄付を確実に実行するため、弁護士や司法書士など信頼できる専門家に依頼し、あらかじめ内諾を得た上で遺言書で指定しておくのが一般的です。
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【5】遺言書を作成する
次に、遺言書を作成します。
ご自身の意思を法的に有効な形で残すための最も重要なステップです。ご自身で作成する自筆証書遺言は形式の不備等で無効になるリスクや紛失・改ざんのリスクがありますので、公証役場で公証人に作成してもらう「公正証書遺言」を利用することを強くおすすめします。
【6】遺贈寄付を実行する
遺言者がお亡くなりになった後、遺言執行者によって遺贈寄付が実行されます。
【4】で指定しておいた遺言執行者が、遺言書の内容に従って必要に応じて財産の現金化(換価処分・清算型遺贈)や名義変更などを行い、指定した寄付先へ財産を引き渡すことで全ての手続きが完了します。」
遺贈寄付の注意点
最後に、遺贈寄付の注意点について触れておきます。
【1】ご家族(相続人)へ事前に想いを伝えておくこと
まず、残されるご家族に「なぜ寄付をしたいのか」というご自身の想いを事前に伝えておくことです。
ご自身がお亡くなりになった後に突然の遺言書で寄付の事実を知ると、ご家族が戸惑ったり、不満を抱いたりして遺留分を巡るトラブルに発展する可能性があります。遺留分への配慮はもちろんですが、生前に十分な話し合いの場を持ち、ご家族の理解を得ておくことが円満に遺贈寄付を実現するための鍵ともいえます。
【2】寄付先の団体や自治体へ事前に受け入れの確認を行うこと
次に、希望する寄付先に対して、事前に受け入れの可否や条件をしっかりと確認しておくことです。
団体や自治体によっては、特定の財産(不動産や未上場株式などの現金化しにくい財産)の受入を辞退・拒否していたり、寄付金の使い道(使途指定)に細かなルールが設けられていたりします。相続発生後に受け入れを拒否され、寄付が実行されない事態を防ぐため、事前のすり合わせ・協議が不可欠です。なお、不動産などを寄付したい場合は、売却して現金化してから寄付する「清算型遺贈」を遺言書で指定しておく方法も有効です。
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【3】財産状況や気持ちの変化に合わせて遺言書を定期的に見直すこと
次に、作成した遺言書を定期的に見直すことです。
遺言書を作成してから年月が経つと、ご自身の財産状況(種類や金額)が変化したり、応援したい団体や支援内容が変わったりすることがあります。また、指定した寄付先の団体が活動を終了して解散してしまうリスクや、組織改編・名称変更が起こる可能性もゼロではありません。数年に一度やライフスタイルの変化に合わせて内容を見直し、現状に即した内容にアップデート(遺言書の書き直しや撤回等)しておくことをおすすめします。
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取扱予定業務:遺産承継(預貯金、相続登記など)・生前対策(遺言、任意後見、信託など)・民事裁判・離婚


