【ひな形付】遺産分割協議証明書とは?正しい書き方と協議書との違い

「実家を相続することになったけれど、相続人の一人が北海道、もう一人が沖縄に住んでいてサインと印鑑を集めるのに時間がかかりそう……」

「相続人が5人もいて、1枚の書類を郵送で順番に回していたら、いつ手続きが終わるか分からない」

遺言書がない相続手続きでは、相続人全員が遺産分割協議に参加し、協議の内容について合意したを証明する「遺産分割協議書」を作成することが一般的です。しかし、相続人が遠方に散らばっている場合や人数が多い場合、1枚の書面を郵送で持ち回りするのは多大な時間と紛失のリスクが伴います。

そのような場面で非常に便利なのが「遺産分割協議証明書」です。

本記事では、遺産分割協議証明書の基本概要から、遺産分割協議書との違い、具体的な書き方(ひな形付き)、実務上のメリット・デメリット、そして手続き時の注意点まで、詳しく・わかりやすく解説します。

遺産分割協議証明書とは?

遺産分割協議証明書とは、「私はこの遺産分割協議の内容に間違いなく合意しました」という意味で相続人各自が個別に署名・押印する形式の書面です。遺産分割協議書」との最大の違いは、「署名・押印を相続人全員が1枚の紙に行うか、それとも相続人各自が個別の紙に行うか」という点にあります。

【1】遺産分割協議書と遺産分割協議証明書の違い一覧

比較項目遺産分割協議書遺産分割協議証明書
署名・押印相続人全員が1つの書面に連名で行う相続人各自が個別の書面に行う
作成部数基本、相続人の数分(全員が署名押印したもの)相続人の数分(各自が個別に署名押印したもの)
作成場面相続人同士が近くに住んでいる場合、緊密に連絡がとれる場合 など相続人が遠方に住んでいる場合、相続人の数が多い場合 など

【2】効力は「遺産分割協議書」と同じ

「相続人各自が個別にサインした書類で、本当に法務局や金融機関が受け付けてくれるの?」と不安に思う方もいるかもしれません。

しかし、ご安心ください。相続人各自が署名した『遺産分割協議証明書』であっても、全員分をワンセットにまとめることで、通常の遺産分割協議書とまったく同じ効力を持ちます。実際の法務局(相続登記)や金融機関(預貯金の解約)での窓口にも、この全員分のセット(+印鑑証明書)をまとめて提出することで手続きを進めることができます。

遺産分割協議証明書のメリット

遺産分割協議証明書を作るか遺産分割協議書を作るかを判断するために、遺産分割協議証明書のメリットを抑えておきましょう。

【1】手間・時間を省ける

一つ目に、遺産分割協議から書面を完成させるまでの手間や時間を省くことができることです。

遺産分割協議書の場合、相続人一堂に集まってもらうか、Aさん→Bさん→Cさんと協議書を順に回送して署名をもらう必要があり、手間や時間がかかります。一方、遺産分割協議証明書であれば、協議は電話やオンラインで済ませることができます。あとは、代表相続人から相続人全員に証明書を送り、各相続人から直接返送してもらうことで、時間短縮を図ることができます。

【2】書き損じ・紛失によるリスクを避けられる

二つ目に、書き損じや紛失のリスクを避けることができることです。

遺産分割協議書を回送する場合、相続人の誰かが住所・氏名を書き間違えたり、実印を押し損じたり、最悪の場合、郵便事故で紛失する可能性があります。そうすると、協議書を一から作り直さなければなりません。一方、遺産分割協議証明書であれば、書き間違えた相続人の分だけを再送して直してもらえば済むため、他の相続人に迷惑をかけずに済みます。

【3】プライバシーに配慮できる

三つ目に、相続人間のプライバシーに配慮できることです。

遺産分割協議書を順番に回送する場合、他の相続人の住所や実印の印影といった個人情報が全員の目に触れてしまいます。疎遠な親族がいる場合、自身の個人情報を見られることに強い抵抗を感じる方も少なくありません。一方、遺産分割協議証明書であれば、各自が個別の用紙に署名・押印するため、他の相続人の情報が目に入りにくくプライバシーが守られます。結果として心理的ハードルが下がり、手続きへの協力をスムーズに得やすくなります。

遺産分割協議証明書のデメリット

遺産分割協議証明書には以下のデメリットもあります。

【1】書類の管理は持ち運びが大変

相続登記などの手続きでは、相続人全員の遺産分割協議証明書と印鑑証明書をセットにして提出する必要があります。 相続人の数が多ければ多いほど書類の数が多くなり、管理や持ち運びが大変になります。

【2】一部の提出先で難色を示される

遺産分割協議の書面といえば「遺産分割協議書」が一般的であるため、中には頑なに遺産分割協議書の提出を要求してくる金融機関があります。 手続きをスムーズに進めるには、遺産分割協議証明書でも受け付けてくれるかどうか、あらかじめ提出先に確認しておく必要があります。

遺産分割協議証明書or遺産分割協議書?

前述のとおり、遺産分割協議証明書、遺産分割協議書、どちらを作っても効力は同じです。「必ずこちらにしなければならない」という決まりもなく、ご事情に合わせて、より負担なくスムーズに手続きが進む方を選ぶとよいでしょう。 実務上は以下のようなケースでおすすめしています。

【遺産分割協議証明書】をおすすめするケース

  • 相続人が遠方に住んでいる
  • 相続人の人数が多い(目安として4名以上)
  • 面識のない相続人や、疎遠な親族がいる
  • 少しでも早く相続手続きを完了させたい

遺産分割協議証明書の最大の強みは「同時並行で手続きを進められる」ことにあります。代表相続人から全員へ一斉に遺産分割協議証明書を送り、各相続人から直接返送してもらうだけで済むため、書面の持ち回りによる時間ロスや、紛失リスクの減らすことができます。

【遺産分割協議書】をおすすめするケース

  • 相続人が近くに住んでおり、一堂に集まることができる
  • 相続人の人数が少ない(2〜3名程度)
  • 相続人間の仲が良く、書類のやり取りにストレスがない
  • 法務局や金融機関に提出する書類を少なくしたい

同居しているご家族のみで相続する場合や、法事などで全員がすぐに集まれる状況であれば、遺産分割協議書を作るのがおすすめです。書類が1つにまとまるため、金融機関等の窓口へ提出する際にかさばらず、管理しやすいというメリットがあります。

迷ったときの判断基準

迷ったときは、

  • 遠方や多人数、疎遠な関係が含まれる→遺産分割協議証明書
  • すぐに集まれる、少人数      →遺産分割協議書

という基準で考えてみるとよいでしょう。

遺産分割協議証明書を作るまでの手順

遺産分割協議証明書を作るまでの手順は遺産分割協議書を作るまでの手順と基本的には同じです。

すなわち、まずは、遺言書がないことを確認した上で、相続人や遺産(相続財産)を調査し確定します。その後、相続人で遺産の分け方について話し合います(遺産分割協議をします)。話し合いがまとまったら遺産分割協議証明書の作成にとりかかります。

遺産分割協議証明書のひな形

ここでは、以下の遺産分割協議が成立した場合の遺産分割協議証明書のひな形をお示しします。まずは、遺産分割協議証明書がどういうものかイメージをつかんでいただければと思います。

【設例】
故   人:山田太郎(父) 
相 続 人:子8名(山田一郎(長男)ほか7名)
遺   産:父名義の土地、建物
協議の結果:遺産は長男が相続する。

遺産分割協議証明書

(本     籍)〇〇県〇〇市〇〇町一丁目〇番地
(住     所)〇〇県〇〇市〇〇町一丁目〇番〇号
(登記簿上の住所)〇〇県〇〇市〇〇町一丁目〇番〇号
(被 相 続 人)山田太郎
         昭和○○年○月○日出生
         令和○年○月○日死亡

上記の被相続人 山田太郎 の死亡により開始した相続につき、共同相続人全員による遺産分割協議の結果、次のとおり合意したことを証明する。

第1条 相続財産中、次の不動産は 山田一郎 が相続する。
不動産の表示
(土地)所  在:〇〇県〇〇市〇〇町一丁目
    地  番:〇〇番〇
    地  目:宅地
    地  積:〇〇〇.〇〇平方メートル
(建物)所  在:〇〇県〇〇市〇〇町一丁目〇〇番地〇
    家屋番号:〇〇番〇
    種  類:居宅
    構  造:木造かわらぶき2階建
    床 面 積 :1階 〇〇.〇〇平方メートル
       2階 〇〇.〇〇平方メートル

第2条 本協議書に記載のない財産、及び後日新たに判明した財産については、相続人 山田一郎 が相続する。

上記のとおり遺産分割協議が成立したことを証明するため、本証明書に署名捺印する。

令和〇年〇月〇日

(住所)東京都千代田区〇〇町〇丁目〇番地

(氏名)山田一郎   ㊞

遺産分割協議証明書のダウンロード

上の内容の遺産分割協議証明書の書式はこちらからダウンロードできます。

遺産分割協議証明書の書き方

遺産分割協議証明書の書き方も、遺産分割協議書の書き方と基本的には同じです。遺産分割協議書の書き方については「こちら」の記事で詳しく解説しています。ここでは、遺産分割協議証明書の書き方で特に注意していただきたい事項について解説します。少しの不備でも提出先から修正・再提出を求められることがありますので注意が必要です。

導入文章

上記の被相続人 山田太郎 の死亡により開始した相続につき、共同相続人全員による遺産分割協議の結果、次のとおり合意したことを証明する。

遺産分割協議「証明書」のため、文章は「~証明する。」で締めます。

締め、日付、住所、氏名・押印

上記のとおり遺産分割協議が成立したことを証明するため、本証明書に署名捺印する。

令和〇年〇月〇日

(住所)東京都千代田区〇〇町〇丁目〇番地

(氏名)山田一郎  ㊞

日付は、各相続人が遺産分割協議証明書に署名・押印する日を書きます。

住所・氏名は印鑑登録証明書を手元に置き、そこに記載されているとおりに書いてください。「1丁目1番地1号」を「1-1-1」と省略してはいけません。

日付・住所・氏名は基本自筆で書いてもらいます。どうしても自筆できない相続人がいるときは、あらかじめ提出先に対応法などを確認しておくことをおすすめします。

印鑑は実印を押します。

遺産分割協議書と異なり、相続人の連名とならないことに注意が必要です。

💡書類が2枚以上になる場合
遺産の記載が多く、遺産分割協議証明書が複数枚にわたる場合は、用紙のつなぎ目(ホッチキス留めの場合は見開き部分、製本テープの場合はテープと紙の境目)に、署名欄に押したものと同じ実印で「契印(割印)」を押す必要があります。これを忘れると手続きができなくなるため注意しましょう。

遺産分割協議証明書の送り方

遺産分割協議証明書の文案を作ったら、日付以降の箇所は空欄にして各相続人に送ります。

送る前に、あらかじめ相続人に「遺産分割協議証明書を送ること」及び「印鑑登録証明書を取得して印鑑登録証明書もあわせて返送して欲しい」ということを伝えておきましょう。

封筒には「遺産分割協議証明書」のほか「切手を貼った返信用封筒」を同封します。遺産分割協議証明書にはどこに何を書き、実印を押せばよいのかわかるよう付箋を貼っておくと相手の負担が減り、スムーズに返送してもらえるでしょう。