清算型遺贈とは?メリット・デメリットと手続きの流れをわかりやすく解説

「遺言書を書いて、自分の財産を特定の人や団体に譲りたい」と考えたとき、預貯金であれば手続きは比較的シンプルですが、自宅などの「不動産」が含まれる場合は注意が必要です。
不動産をそのまま遺贈すると、受け取った側(受遺者)に名義変更の手間や固定資産税、維持管理の負担をかけてしまうおそれがあります。また、NPO法人などの団体へ寄付(遺贈寄付)したい場合でも、管理コストや処分リスクの観点から不動産の現物寄付は受け付けてもらえないことが少なくありません。
そこで有効な解決策となるのが「清算型遺贈」です。この方法を使えば、受け取る側の負担を大幅に減らし、より確実に希望通りの遺贈を実現することができます。
本記事では、清算型遺贈の基本的な仕組みや他の遺贈(特定遺贈・包括遺贈)との違いをはじめ、利用する3つのメリット・デメリット、そして実際の手続きの流れまでをわかりやすく解説します。不動産の遺贈をご検討中の方は、ぜひ参考にしていただければと思います。

保有資格:R7司法書士試験合格者(2026年中に司法書士事務所を開業予定)、行政書士、ファイナンシャルプランナー(2級・AFP未登録)
取扱予定業務:遺産承継(預貯金、相続登記など)・生前対策(遺言、任意後見、信託など)・民事裁判・離婚
清算型遺贈とは?
清算型遺贈とは、不動産や株式などの遺産をそのままの形で引き継ぐのではなく、遺言執行者が遺産をいったん売ってお金にし、そこから借入金などの債務や諸経費、税金などを支払って、残ったお金を指定した受遺者に引き継ぐ遺贈の方法です。
たとえば、「自宅の土地と建物を売却し、その売却代金から葬儀費用や未払いの税金、売却にかかる手数料などを差し引いた残りの現金を、〇〇(個人やNPO法人など)に遺贈する」といったケースがこれに該当します。
一般的な遺贈には「特定遺贈」と「包括遺贈」があります。ここでは、清算型遺贈の理解をより深めていただくべく、特定遺贈・包括遺贈との違いについて解説します。
【1】特定遺贈との違い
特定遺贈は、「〇〇に〇〇の財産を遺贈する」というように、誰にどの財産を引き継ぐのかを指定して遺贈する方法です。通常の特定遺贈では、指定された財産がそのままの形で受遺者に引き継がれます。
遺贈する財産が不動産だった場合、受遺者には所有権移転登記の手続きや、管理の手間・コスト(固定資産税等の支払いや維持管理費)が生じます。これに対し、清算型遺贈では遺言執行者が不動産を売却・現金化してから引き渡すため、受遺者に不動産の名義変更や管理の手間・コストがかからないという違いがあります。
【2】包括遺贈との違い
包括遺贈は、「全財産の3分の1を〇〇に遺贈する」というように、個別の財産を指定するのではなく、全財産のうちの一定割合を指定して遺贈する方法です。
包括遺贈された受遺者は、遺言者の相続人ではなくても「相続人と同一の権利義務」を取得します。そのため、包括遺贈では、預貯金などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も割合に応じて引き継ぐことになります。また、他の相続人とともに遺産分割協議に参加する必要が出てきます。
一方で特定遺贈の形式をとる清算型遺贈の場合であれば、遺言執行者が遺産の換価処分や債務・税金などの支払いを済ませたうえで、受遺者は最終的に残った清算金だけを引き継ぐことができるため、債務を直接承継するリスクや遺産分割協議に直接巻き込まれることがなく、負担が大きく軽減されます。
清算型遺贈を利用するメリット
【1】受遺者の負担を減らせる
まず、受遺者の負担を減らせることです。
不動産をそのままの形で引き継ぐと、名義変更時の専門家報酬や登録免許税のほか、毎年発生する固定資産税、建物の維持管理費など、さまざまな手間やコストが発生します。清算型遺贈であれば、不動産の売却や名義変更手続き、維持管理も遺言執行者が行うため、受遺者に費用や管理の大きな負担をかけずに金銭で財産を引き継ぐことができます。
【2】複数人への公平な分配がしやすい
次に、相続人間の公平な分配がしやすいことです。
たとえば、一つの不動産(土地や建物)を複数の相続人や受遺者で分けるにしても現物で物理的に分けることは難しく、かといって共有名義にしてしまうと将来的なトラブルの原因にもなってしまいます。清算型遺贈で不動産をあらかじめ売却・現金化しておけば、指定した割合に沿って1円単位できっちりと分けることができ、受け取る側同士で不公平感が残りにくくなります。
💡不動産の共有名義はトラブルのもと
不動産を複数人で分ける際、とりあえず「共有名義」にしておくケースがよく見られます。しかし、共有名義の不動産は、将来売却や建替えなどの変更行為をしようとした際に「共有者全員の同意」が必要になります。誰か一人でも反対したり、認知症などで意思確認ができなくなったりすると、一切身動きが取れなくなってしまいます。 さらに年月が経ち、共有者の一人が亡くなると、その持ち分がさらに別の相続人たちへ細かく枝分かれ(数次相続)していき、顔も知らない人同士で不動産を共有する事態にもなりかねません。清算型遺贈であらかじめ現金化してきっちり分けておけば、こうした将来のトラブルの種(管理不全となる「負動産」)を残さずに済みます。
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【3】法人(NPOや団体など)への寄付がスムーズ
次に、法人(NPOや団体など)への寄付がスムーズに行えることです。
社会貢献のために自分の財産を寄付したいと考えても、多くのNPO法人や大学、公益団体などは、管理コストや処分・売却のリスクがかかる不動産など現物での寄付を原則として受け付けていません。しかし、清算型遺贈によって遺言執行者が財産を売却・現金化してから寄付する形をとれば、団体側も受け入れが容易になり、確実に遺贈寄付を実現することができます。
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清算型遺贈の注意点・デメリット
清算型遺贈は上のようなメリットがある一方で、税務面や手続きの面でいくつか気を付けるべき点が存在します。ここでは、事前に知っておくべき3つのデメリット・注意点について解説します。
【1】譲渡所得税が発生する可能性がある
まず、譲渡所得税が発生する可能性があることです。
不動産や株式などを売却して利益(譲渡益)が出た場合、その利益に対して譲渡所得税(所得税・住民税)がかかります。清算型遺贈では、遺言執行者が財産を第三者に売却して現金化するため、通常の不動産売却と同様に、実際の売却益に対して税金が課されます。
この譲渡所得税は、亡くなった方(被相続人)または相続人の所得として申告・納税手続きを行う必要があります。税金は売却代金の中から支払われるため、受遺者が最終的に受け取るのは、これらの税金や諸経費がすべて差し引かれたあとの「清算金」となります。
【2】遺言執行者の負担が大きい
次に、遺言執行者の負担が大きいことと、それに伴う費用が発生することです。
清算型遺贈を実現するには、不動産の売買契約から引き渡し、未払い金や税金の清算、そして最終的な現金の分配まで、多岐にわたる煩雑な手続きを遺言執行者が担わなければなりません。手続きが数ヶ月〜1年以上と長期化することも多いため、親族を指定するよりも、弁護士や司法書士などの専門家を遺言執行者に指定しておくのが安心です。
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【3】確実に売却ができるとは限らない
次に、対象の財産(特に不動産)が確実に売却ができるとは限らないことです。
遺言で指定した財産が、立地条件の悪い土地や老朽化した空き家などの場合、買い手がなかなか見つからず手続きが滞ってしまうリスクがあります。長期間売却できないと、清算や受遺者への現金の引き渡しができず、遺言の内容を最後まで実現できなくなるおそれがあります。そのため、生前のうちに不動産会社へ査定・売却の実現性を確認しておくほか、「売却できない場合の予備的指定(価格を下げて再売り出しする、または現物で相続させる等)」を遺言書に盛り込んでおく対策が有効です。
清算型遺贈の手続きの流れ
清算型遺贈を実現するための具体的な手続きは、遺言書の作成から始まり、財産の現金化を経て、受遺者への引き渡しで完了します。ここでは、一連の流れを6つのステップに分けて解説します。
【1】清算型遺贈を行う旨を記載した遺言書の作成
まず、清算型遺贈を行う旨を記載した遺言書を作成します。書き方(条項例)は「【文例付】遺贈とは?相続や死因贈与との違いと遺言書の書き方を解説」の記事で解説しています。
手続きをスムーズに進めるためには、「どの財産を売却(換価)するか」「経費や税金を差し引いた残額を誰に(どんな割合で)渡すか」を遺言書に明確に記載し、あわせて手続きを代行する「遺言執行者」を必ず指定しておく必要があります。
【2】遺言の効力発生~遺言執行者の就任
遺言者がお亡くなりになると遺言の効力が発生します。遺言の効力が発生したら、遺言書で指定されていた人が就任を承諾することで、正式に遺言執行者に就任します。
遺言執行者は就任後、相続人や受遺者に対して「遺言執行者に就任したこと」や「遺言書の内容(遺言書の写し)」を通知し、財産目録を作成・送付した上で手続きを進めていきます。
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【3】遺産である不動産の名義変更
遺言執行者は、遺産である不動産、有価証券(株式、投資信託、国債など)、自動車などの名義変更や売却準備を行います。
亡くなった遺言者の名義のままでは、遺産を直接売却して現金化することができません。そのため、たとえば不動産であれば前提として相続人名義への名義変更(相続登記)を行うなど、各財産に応じた名義変更や口座移管の手続きが必要になります。
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【4】財産の換価手続き(売却)
不動産については、遺言執行者が不動産会社と媒介契約を結び、査定や買い手探しを進めます。買い手と売買契約を締結した後、【3】の前提となる相続登記と買主への所有権移転登記を連件(同時)で申請し、売却代金の受領と引き換えに物件を引き渡します。
自動車についても、事前に中古車買取業者などに査定を依頼して買取先を決定し、名義変更手続きと同時に車両の引き渡しおよび売却代金の受け取りを行います。
有価証券については、遺言者の証券口座のまま売却することができないため、まずは遺言執行者の専用口座等へ株式などを移管(名義変更)し、その手続きが完了した後に市場で売却して現金化します。
【5】債務や諸経費、税金の清算
【4】で財産が無事に現金化されたら、その売却代金の中から債務や諸経費、税金の清算を行います。
具体的には、遺言者の借入金や未払金、葬儀費用のほか、売却にかかった仲介手数料や各種専門家(司法書士や税理士、遺言執行者)への報酬、利益が出た場合の譲渡所得税などを支払います(必要に応じて準確定申告等も行います)。これらの支払いをすべて終えることで、最終的に受遺者に渡すべき「純粋な現金の残額(清算金)」が確定します。
【6】受遺者への現金の引き渡し
【5】での清算が終わり、渡すべき金額が確定したら、手元に残った現金を遺言書で指定された受遺者(個人やNPO法人など)の指定口座へ振り込みます。
現金の引き渡しが完了した後、遺言執行者が相続人や受遺者などの関係者全員へ「業務完了の報告(収支計算書や振込明細などの提出)」を行い、一連の手続きがすべて完了します。」

保有資格:R7司法書士試験合格者(2026年中に司法書士事務所を開業予定)、行政書士、ファイナンシャルプランナー(2級・AFP未登録)
取扱予定業務:遺産承継(預貯金、相続登記など)・生前対策(遺言、任意後見、信託など)・民事裁判・離婚


