相続欠格とは?5つの欠格事由と相続人廃除との違いをわかりやすく解説


保有資格:R7司法書士試験合格者(2026年中に司法書士事務所を開業予定)、行政書士、ファイナンシャルプランナー(2級・AFP未登録)
取扱予定業務:遺産承継(預貯金、相続登記など)・生前対策(遺言、任意後見、信託など)・民事裁判・離婚
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相続欠格とは?
相続欠格とは、本来であれば相続人となることができる人が法律に定める事由(欠格事由)に該当した場合に、法律上当然に相続人となる資格を失わせる制度です。
あとで解説するとおり、欠格事由には違法に被相続人の相続財産を得る行為が規定されています。相続欠格は被相続人の意思を保護し、違法な行為をした人を相続手続きから排除して、相続手続きの秩序を守るための制度といえます。
法律が定める5つの相続欠格事由
民法には、これをやったら相続人となる資格を失わせますよ、という事由(欠格事由)を5つを規定しています。
①故意に被相続人や先順位・同順位の相続人を殺害したなど
一つ目に、故意に被相続人や、先順位(自分より上の順位)または同順位の相続人を死亡するに至らせ、または至らせようとしたために、刑に処せられた場合です。
殺人既遂はもちろん、殺人未遂、あるいは殺人予備の場合でも欠格事由にあたる可能性があります。もっとも、「故意」によって死亡するに至らせたこと(または至らせようとしたこと)が必要なため、傷害致死や過失致死など故意がない場合は欠格事由にはあたりません。
先順位とは、たとえば、被相続人(A)、その配偶者(B)、AとBの間の子(C)、Aの母(D)の家族構成の場合の、D(直系尊属)に対するC(直系卑属)がこれにあたります。この場合、CはDより先順位であるため、DがCを故意に死亡させた場合はDはAの相続人ではなくなります。
刑に処せられたとは、刑事裁判で有罪判決を受け、その判決が確定したという意味です。実刑判決を受けた場合はもちろん、執行猶予付き判決を受けた場合でも刑に処せられたことになります。もっとも、執行猶予期間が経過すると刑の言い渡しの効力が失われるため、経過した時点からは刑に処せられたことではなくなります。
②被相続人が殺害されたことを知りながら告発・告訴しなかった
二つ目に、被相続人が殺害されたことを知りつつ、捜査機関(警察・検察)に告発・告訴しなかった場合です。
告発と告訴は厳密には意味が異なりますが、ここでは両者とも「捜査機関に申告すること」ととらえておけばよいです。もっとも、以下のいずれかの場合は欠格事由にはあたりません。
- 告発・告訴すべき人に是非の弁別がないとき
- 殺害者が自分の配偶者または直系血族であったとき
幼児など是非の弁別ができない人には告発・告訴が期待できないからです。また、殺害者が自分の配偶者や直系血族の場合は、身内をかくまう心情から告発・告訴が期待できないからです。
③詐欺または強迫によって、被相続人が遺言すること、または遺言の撤回・取消し・変更を妨げた
三つ目に、被相続人を騙したり、脅したりして、被相続人が遺言をする(遺言書を作る)こと、または書いた遺言書の内容を撤回したり、取り消したり、変更したりすることを妨げた場合です。
④ 詐欺や強迫によって、被相続人に遺言させた、または遺言を撤回・取消し、変更させた
四つ目は、被相続人を騙したり脅したりして、相続人に有利な遺言書を書かせたり、すでにした遺言を相続人の都合よく撤回、取消し、変更させた場合です。③は被相続人の行動を妨げた、④は自分に有利なように被相続人に働きかけた、という点で異なります。
⑤ 被相続人の遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した
五つ目に、被相続人が書いた遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した場合です。
偽造とは、被相続人以外の人があたかも被相続人名義の遺言書を作ることです。変造とは、被相続人が作成した遺言書の内容を書き換えることです。破棄とは、遺言書の物理的な形を損ねたり、破り捨てたりして遺言の効力を失わせることです。隠匿とは、遺言の内容が実行されないよう遺言書を隠すなどすることです。
なお、相続欠格は、違法な行為によって相続財産を得ようとする相続人への民事上の制裁という趣旨があります。したがって、⑤の相続欠格にあたるには偽造・変造・破棄・隠匿をする故意だけでなく、当該相続において不当に利益を得る故意がなければならないとされています。
したがって、たとえば、遺言書を今ある場所から別の場所に移動させる行為は形式的・外形的には隠匿にあたる行為ですが、不当に利益を得る目的が認められない場合は⑤の欠格事由にあたらない可能性もあります。
相続欠格の効果
相続欠格事由に該当した場合は、法律上当然に、その相続について相続人となることができなくなります。もっとも、「その相続について」とあるように、欠格事由は相続ごとに個別に判断されるため、別の相続では相続人となることができる可能性があります。
相続人でなくなることから、相続人であることを前提とした遺留分も受けることができなくなります。また、前述のとおり、相続欠格は民事上の制裁として相続人となることをできなくする制度であるため、被相続人から遺贈を受けることもできません。
なお、相続欠格は代襲原因の一つです。したがって、欠格者が被相続人の子または兄弟姉妹であるときに、欠格者に子がいる場合は、その子が被相続人の相続人(代襲相続人)となります。相続放棄が代襲原因ではないことと混合しないよう注意が必要です。

💡相続欠格の証明方法
あとで解説する「廃除」とは異なり、相続欠格となったことは戸籍には記載されません。そのため、不動産の名義変更や預貯金の解約手続きを行う際、他の相続人が「あの人は相続欠格者だから」と口頭で主張しても手続きは進みません。 実務上は、欠格事由を証明する「確定判決書の謄本」や、欠格者本人が作成し実印を押印した「相続欠格証明書(印鑑証明書付)」を提出して証明する必要があります。
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相続欠格に似た「廃除」とは?
相続欠格に似た制度として、廃除という制度があります。廃除とは、被相続人の意思に基づき、家庭裁判所が当該相続人の相続人としての資格を失わせる制度です。以下、廃除の要件や方法、効果について解説します。
要件
まず、廃除の対象となるのは遺留分を有する相続人です。被相続人の兄弟姉妹には遺留分がないため、兄弟姉妹以外の相続人が廃除の対象となります。次に、廃除できる場合(廃除事由)としては以下の3つが規定されています。
- 相続人が被相続人に対して虐待をしたこと
- 相続人が被相続人に対して重大な侮辱を加えたこと
- 相続人にその他の著しい非行があったこと
方法
相続人を廃除するには家庭裁判所の審判が必要です。家庭裁判所の審判を求めるには、家庭裁判所に対して廃除の請求をしなければなりません。廃除の請求の方法には生前廃除の方法と遺言廃除の方法があります。
生前廃除は、被相続人が生前に、特定人の相続人の廃除を家庭裁判所に請求する方法です。被相続人以外の人がこの請求をすることはできません。
遺言廃除は、被相続人が遺言書で廃除の意思表示を示しておき、被相続人の死後に、遺言執行者が家庭裁判所に対して廃除の請求をする方法です。なお、この手続きを行うためには遺言執行者の存在が必須です。遺言書で遺言執行者を指定していない場合は、家庭裁判所に申し立てて遺言執行者を選任してもらう必要があります。
効果
廃除された相続人は、当該被相続人の相続人となることができなくなります。また、相続人であることを前提とした遺留分も受けることができません。廃除は代襲原因の一つですので、廃除された相続人が被相続人の子または兄弟姉妹であるときに、その相続人に子がいればその子が代襲相続することになります。
なお、被相続人は、生前はいつでも、廃除の取消しを家庭裁判所に請求することができます。また、被相続人は、遺言によっても廃除の取消しを請求できます。遺言で廃除請求された場合は、遺言執行者が廃除の手続きを進めることになります。
【相続欠格と廃除の違い】
| 相続欠格 | 相続人廃除 | |
| 効果 | 相続人ではなくなる | 相続人ではなくなる |
| 対象行為 | 一定の欠格事由に該当する行為 | 虐待、重大な侮辱、著しい非行など |
| 手続き | 不要 | 生前に家裁に請求or遺言で指定 |
| 対象者 | 相続人 | 遺留分を有する相続人 |
| 取り消しの可否 | 原則として不可 | 可能 |
| 戸籍への記載 | 記載されない | 記載される |

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