【生命保険】相続放棄しても死亡保険金は受け取れる?注意点を解説

生命保険の相続手続き

生命保険の相続手続きには、以下のとおり、誰が「契約者」か「被保険者」か「保険金受取人」かによって異なります。

手続きの内容【1】死亡保険金の請求【2】保険契約の承継【3】受取人の変更
契約者故人故人第三者
被保険者故人第三者第三者
保険金受取人第三者故人又は第三者故人

なお、誰が契約者か被保険者か保険金受取人かは、「保険証券」や年に一度、保険会社から送られてくる「契約内容の確認書」、保険会社のサイトなどで確認できます。これらの書類がない場合は一度保険会社に問い合わせてもよいでしょう。

●一般社団法人生命保険協会への生命保険契約照会制度
ご家族が亡くなられた後で「どの生命保険会社の保険に入っていたか分からない」「保険証券が見つからない」などという場合は、一般社団法人生命保険協会が提供している「生命保険契約照会制度」を利用するのが便利です。相続人などが照会請求を行うことで、亡くなった方が加入していた生命保険会社を一括で調査することができます。もっとも、保険契約の内容などについては、判明した生命保険会社に対して直接連絡して確認する必要があります。

【1】死亡保険金の請求手続き

表①の「契約者」「被保険者」が故人、「保険金受取人」が第三者の場合の手続きです。

この場合は死亡保険金を請求することができます。

 ①生命保険会社(または代理店)への連絡

まず、加入している生命保険会社や担当の保険代理店に連絡し、被保険者が亡くなったことを伝えます。 連絡の際には、以下の情報を聞かれることが多いため、手元に保険証券など保険内容がわかるものを用意しておくとスムーズです。

  • 保険証券番号
  • 亡くなった日(死亡日)
  • 死因(病死・事故死など)

必要書類の準備

連絡後、数日から1週間ほどで生命保険会社から請求書類一式が郵送されてきます(※保険代理店経由で保険契約をしていた場合は代理店担当者が自宅まで来てくれることもあります)。案内に従って、主に以下の書類を準備します。

  • 生命保険会社指定の保険金請求書(受取人本人が記入・捺印)
  • 保険証券(紛失している場合はその旨を伝えます)
  • 被保険者の死亡診断書(死体検案書)のコピー
  • 被保険者の住民票の除票
  • 受取人の戸籍謄本(被保険者が亡くなったこと、および受取人との関係を証明するもの)
  • 受取人の印鑑証明書 および 本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)

注意 
保険金額や死因、契約内容によっては、簡易的な書類だけで済む場合もあれば、別途医師の診断書(原本)が必要になる場合もあります。必ず生命保険会社の案内をご確認ください。

➁書類の提出と審査

全ての書類が揃ったら、生命保険会社へ返送します。生命保険会社側で書類の不備がないか、また保険金の支払い要件を満たしているかの審査が行われます。

③死亡保険金の入金確認

書類に不備がなければ、通常、書類が生命保険会社に到着してから5営業日前後で受取人の指定口座に保険金が振り込まれます。入金後には「お支払い手続き完了のお知らせ(※生命保険会社によって名称が異なります)」の通知書が届きますので、金額に間違いがないか確認しましょう。相続税の申告が必要な場合はこの通知書が重要になりますので、なくさないよう保管しておきましょう。

【2】保険契約の承継手続き

次に、表②に該当する「契約者」故人で「被保険者」が第三者の場合の手続きです。

例えば、「夫が契約者、妻が被保険者」として契約しており、夫が亡くなった後もこの保険契約をそのまま残したいというケースなどがこれに当たります。この場合、被保険者が存命のため死亡保険金は支払われず、「保険契約者の地位(生命保険契約に関する権利)」が相続財産として遺産分割の対象となり、保険契約を継続するために「新しい契約者」へ名義を引き継ぐ(承継する)手続きが必要になります。

①新しい契約者の決定と生命保険会社への連絡

まず、相続人同士の話し合い(遺産分割協議など)で、誰が次の契約者になるかを決めます。 新しい契約者が決まったら、生命保険会社や代理店に連絡し、契約者が亡くなったことと名義変更を行いたい旨を伝えます。

➁必要書類の準備

【1】の手続きと同じく、故人が亡くなったことがわかる戸籍謄本や、新契約者の本人確認書類・印鑑証明書などが必要になります。 それに加えて、承継手続き特有の書類として以下を用意します。

  • 生命保険会社指定の名義変更(権利承継)請求書
  • 被保険者の同意書 (新契約者と被保険者が異なる場合、被保険者ご本人の署名・捺印が必要になります)

③手続きの完了

書類を提出し、生命保険会社での手続きが完了すると、新しい契約者宛てに「契約内容変更完了のお知らせ」や、新しい保険証券が届きます。以後の保険料の引き落とし口座やクレジットカードの変更手続きも、このタイミングで同時に行います。

⚠️ 相続税、相続放棄に関する注意
保険契約を承継した時点では、誰もお金を受け取っていません。しかし、故人が保険料を負担していた場合、契約を引き継いだ権利(=その時点で解約したと仮定した場合の「解約返戻金相当額」)は、本来の相続財産とみなされ、相続税の課税対象となります。また、この契約を承継して継続したり、解約して解約返戻金を受け取ったりする行為が「相続財産の処分(法定単純承認)」とみなされ、後から相続放棄ができなくなる可能性もありますので注意が必要です。

【3】受取人の変更手続き

最後に、表③に該当する、「契約者」と「被保険者」は第三者(存命)で、「保険金受取人」が故人の場合の手続きです。

例えば、「夫が自分を契約者・被保険者として生命保険をかけ、妻を受取人に指定していたが、妻(受取人)が先に亡くなってしまった」というケースがこれに当たります。この場合、保険金が支払われる事態(被保険者の死亡)は起きていないため、生存している契約者(夫)が「新しい保険金受取人」を指定し直す手続きを行います。

①保険会社(または代理店)への連絡

まず、契約者ご本人が生命保険会社または担当代理店に連絡し、受取人が亡くなったため、新しい受取人に変更したい旨を伝えます。新しい受取人は、原則として「契約者の配偶者または2親等以内の血族」など、各生命保険会社の規定の範囲内で指定します。

➁必要書類の準備

生命保険会社から送られてくる書類案内に従って準備します。①や②の手続きに比べると、契約者本人が手続きを行うため比較的シンプルに済むことが多いです。

  • 生命保険会社指定の受取人名義変更請求書(契約者ご本人が記入・捺印)
  • 旧受取人(故人)が亡くなったことがわかる戸籍謄本など(※保険会社によっては省略可能な場合があります)
  • 契約者の本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
  • 被保険者の同意書(※契約者と被保険者が別人の場合のみ必要)

③手続きの完了

書類を提出して不備がなければ、手続きが完了し、新しい受取人の名前が記載された「契約内容変更完了のお知らせ」などの通知書類が届きます。新しい保険証券が再発行される場合と、元の証券と一緒に保管する通知書のみが送られてくる場合があります。


💡 変更手続きをせずに放置するリスク
受取人が亡くなった後、変更手続きをしないまま放置し、その後被保険者(上記の例なら夫)が亡くなってしまった場合、死亡保険金は「旧受取人(妻)の法定相続人全員」が均等な割合で受け取る権利を持つことになります(保険法第46条)。本来であれば「同居して介護をしてくれている長男に全額残したい」などと思っていた場合でも、手続きを忘れていたせいで兄弟間で均等割りになってしまったり、疎遠な親族にまで受け取りの権利が及んでトラブルになるケースがあります。受取人が亡くなった場合は、速やかに変更手続きを行っておくことが、将来のトラブルを防ぐための鉄則です。

死亡保険金を受け取ったら取り分が減る⁉

「死亡保険金を受け取ると、他の遺産をもらえる額(取り分)が減ってしまうのでは?」と心配される方がいます。これに関連する法律上のルールとして「特別受益」という制度があります。

特別受益とは、一部の相続人だけが故人から生前贈与や遺贈を受けた場合、相続人どうしの不公平をなくすために、その利益分を考慮して遺産の取り分を減らす仕組みのことです。

では、死亡保険金は特別受益にあたるのでしょうか?この点、前述のとおり、特定の相続人が受取人に指定されている死亡保険金は相続人自身の「固有の財産」として扱われます。そのため、原則として特別受益にはあたらず、他の遺産の取り分が減ることはありません。

ただし、例外もあります。死亡保険金の額が遺産全体の総額と比べてあまりにも高額で、他の相続人との間に「到底見過ごすことのできないほどの著しい不公平」が生じる場合には、例外的に特別受益に準じて扱われ、取り分が減る可能性があります。

相続放棄と死亡保険金

相続手続きおいては、故人がお亡くなりになったこと、かつ、ご自身が故人の相続人であることを知ってから3か月以内に故人の遺産を相続するか放棄するかを判断しなければなりません。そして、故人に多額の借金がある場合などを理由に「相続放棄」の選択をする方もおられると思います。では、相続放棄すると死亡保険金を請求することはできなくなるのでしょうか?

【1】相続放棄すると死亡保険金は請求できない?

まず、結論から申し上げると、原則として相続放棄をしても死亡保険金を請求することはできます

相続放棄をすると、預貯金などのプラスの財産のほか、借金などのマイナスの財産もすべて引き継がないことになります。これらはすべて故人が亡くなったときの故人の遺産であったことが前提となります。

しかし、あくまで生命保険契約に基づいて「指定された受取人が、保険会社から直接受け取る権利(固有の財産)」として扱われます。つまり、死亡保険金は故人の遺産ではないということです。

そのため、死亡保険金はそもそも相続放棄の対象ではなく、相続放棄をしたとしても死亡保険金を請求することができるというわけです。

【2】相続放棄をすると請求できない保険金・給付金

このように、相続放棄しても原則としては死亡保険金を請求できますが、例外もあります。以下のケースでは、相続放棄をすると保険金・給付金を請求することができません。以下のケースの保険金や給付金は「故人の遺産」と考えられるためです。

  • 保険金の受取人が「故人本人」になっている (受取人が指定されていない場合も含む)
  • 医療保険などの「入院給付金」や「手術給付金」
  • 生命保険を解約した際の「解約返戻金」

なお、「故人の遺産」である保険金を受け取り葬儀費用などに使ってしまうと、もはや相続放棄できなくなるため注意が必要です。法律上、遺産を消費した=「すべての財産を相続することに同意した(法定単純承認)」とみなされてしまうためです。

相続放棄を少しでも検討している場合は、保険会社に連絡する前に、必ず「請求しようとしているお金が、誰の固有財産になるのか」を慎重に確認する必要があります。

●死亡保険金を受け取った後、相続放棄できる?
一方、死亡保険金を受け取った場合は、あとからでも相続放棄することはできます。死亡保険金は「故人の遺産」ではなく「受取人の固有の財産」であって、死亡保険金を受け取っても故人の遺産を処分したことにはならないからです。

相続放棄をすると相続税の「非課税枠」が使えない

最後に、生命保険と相続放棄の関係において最も理解が難しい相続税の「非課税枠」について解説します。

先ほどから「死亡保険金は遺産ではない(だから相続放棄しても受け取ることができる)」と繰り返し述べてきましたが、それはあくまで、民法という法律上のルールの話です。一方で、相続税上(税法上)は、ルールが異なりますので注意が必要です。

【1】相続税上は死亡保険金も「遺産」とみなされる

まず、相続税上、死亡保険金は「みなし相続財産」にあたり、相続税の課税対象となります。みなし相続財産とは、本来の遺産(民法上の遺産(相続財産))ではないものの、実質的にみると故人の遺産と同じような遺産のことです。

死亡保険金の原資は故人のお金(保険料)です。その死亡保険金を故人が死亡したことで受け取るということは、結局は、故人の遺産を受け取ったのと同じとみることができます。そのため、死亡保険金はみなし相続財産として相続税の課税対象とされています。

もっとも、死亡保険金は遺族の今後の生活を支える大切なお金です。そのため、受け取った全額に税金がかかるわけではなく、以下の「非課税枠」が用意されています。

生命保険の非課税枠 = 500万円 × 法定相続人の数

例えば、法定相続人が「妻と子ども2人(計3人)」なら、500万円 × 3人 = 1,500万円までの死亡保険金には税金がかからないということになります。

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【2】相続放棄をすると、この「非課税枠」が自分には使えなくなる!

しかし、ここからが本題です。相続放棄をした人は、法律上「最初から相続人ではなかった」という扱いになります。 そのため、死亡保険金を受け取ること自体はできても、上記の「非課税枠」を自分に適用することはできなくなります。具体例で確認してみましょう。

【具体例で比較】
例えば、親が亡くなり、相続人である長男と次男のうち、長男が死亡保険金の受取人として1,000万円け取ったとします。
このケースで長男も次男も相続放棄しなかった場合は、1,000万円(=500万円 × 2人)の非課税枠が使えます。長男が受け取った1,000万円の死亡保険金は相続税の課税対象外となります。
一方、長男が相続放棄した場合、長男は非課税枠を使うことができません。そのため、受け取った1,000万円がそのまま全額、相続税の課税対象となります。

なお、非課税枠の計算式の「法定相続人の数」には、相続放棄をした人の人数もカウントしてよいことになっていますという特別なルールがあります。そのため、 上のケースで、次男が相続放棄したとしても、長男が受け取った死亡保険金の非課税枠は「500万円×2人=1,000万円」ということになります。