遺言執行者とは?どんなときに必要か?やること・できないことを解説

遺言書を作成する際、「遺言執行者」という言葉を聞いたことはありませんか?
遺言書は「作成したら終わり」ではありません。ご自身が亡くなった後、その遺言書に書かれた想いを実際の形にする(預貯金の解約や名義変更などの手続きを行う)手続きが発生します。
このときに重要な役割を担うのが「遺言執行者」です。実は、せっかく遺言書を残しても、この「誰が手続きを進めるのか」を明確にしていなかったために、残されたご家族の手間が増えてしまったり、親族間での思わぬトラブルに発展してしまうケースはしくありません。
しかし、「そもそも自分の遺言書に遺言執行者は必要なのか?」「家族に任せるべきか、専門家に依頼すべきか?」「専門家に頼むと費用はどれくらいかかるのか?」と疑問に思う方も多いでしょう。
そこで、この記事では、遺言執行者の基本的な役割や「必ず指定すべきケース」、具体的な職務内容(やること・できないこと)から、誰を選ぶべきかの基準や気になる費用の仕組みまでを徹底解説します。大切なご家族への想いをトラブルなく確実にかたちにするため、今後の遺言書づくりの参考にしていただけると幸いです。

保有資格:R7司法書士試験合格者(2026年中に司法書士事務所を開業予定)、行政書士、ファイナンシャルプランナー(2級・AFP未登録)
取扱予定業務:遺産承継(預貯金、相続登記など)・生前対策(遺言、任意後見、信託など)・民事裁判・離婚
遺言執行者とは
遺言執行者とは、遺言者が遺言書に記した内容を、遺言者が亡くなった後に実現(執行)するための責任者のことです。
遺言の効力は遺言者の死亡と同時に発生します。しかし、だからといって自動的に預貯金が解約されたり、不動産の名義が変わったりするわけではありません。預貯金を解約したり、不動産の名義を変更するには手続きが必要です。その手続きを行うのが遺言執行者です。
もちろん、遺言執行者がいなくても、残された家族(相続人)で手続きすることはできます。しかし、この場合、相続人の一人で手続きすることはできず、他の相続人の協力も必要になります。全員が協力的であれば問題ありませんが、不仲で非協力的な場合はなかなか手続きを進めることができません。
これに対し、遺言執行者がいれば、遺言者執行者が一人で預貯金の解約などの手続きを進めることができます。相続人同士で話し合ったり(遺産分割協議)、印鑑等をもらう手間や負担を省くことができ、迅速に手続きを進めることができます。遺言執行者は、「争いなくスムーズに財産を引き継いでほしい」という遺言者の想いを実現してくれる重要な存在と言えます。
遺言執行者は本当に必要か?
遺言執行者は、どんな遺言書にも必ず指定しなければならないわけではありません。しかし、遺言の内容によっては「遺言執行者がいなければ手続きできない場合(必須の場合)」や、「指定しておいた方が手続きがスムーズに進む場合」があります。それぞれ具体的に見ていきましょう。
【1】遺言執行者が必ず必要となる場合
以下の内容を遺言内容とする場合は、遺言の中で遺言執行者を必ず定めておく必要があります。
- 子どもの認知:婚姻関係にない相手との間に生まれた子どもを、自分の子として認知すること
- 相続人の廃除・その取消し:生前に著しい虐待を受けたなどの理由で、特定の法定相続人から相続権を奪うこと、またはそれを撤回すること
これらの事項は、遺言者が亡くなった後、速やかに市区町村役場へ届出を行わなければなりません。そして法律上、この届出ができるのは「遺言執行者のみ」と規定されています。
もし遺言書にこれらの記載があるにもかかわらず遺言執行者が指定されていなかった場合は、相続発生後に、残された相続人や財産を受け取る人などの「利害関係人」が、家庭裁判所へ申し立てて遺言執行者を選任してもらわなければなりません。
余計な手間と時間がかかってしまうため、これらの内容を遺言に残す場合は、遺言執行者もセットで指定しておく必要があります。
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【2】遺言執行者を指定していた方がいい場合
また、【1】のように必須ではないものの、遺言執行者を指定していた方が遺言者が亡くなった後の手続きが円滑に進む場合があります。
①相続人以外の人に財産を遺贈したい場合
まず、遺言によって、法定相続人以外の人(お世話になった知人や息子の妻、慈善団体など)に財産を譲る「遺贈」を行うケースです。
遺言執行者がいない場合、財産をもらう人(受贈者)は相続人全員と共同で名義変更等の手続きをする必要があります。しかし、この場合、感情的なわだかまりから、受贈者が相続人から協力を得られないことが往々にしてあります。遺言執行者を指定しておけば、受遺者と遺言執行者だけでスムーズに手続きを完了させることができます。
②相続人同士が疎遠・または不仲な場合
次に、相続人同士が不仲であったり、前妻の子と後妻の子など普段全く交流がない関係性がある場合です。
遺言執行者がいないと、預貯金の解約などで相続人全員の署名や実印・印鑑証明書が必要となり、書類等をそろえるために連絡を取ることが精神的な負担になったり、協力を得られず手続きが進まなくなる可能性があります。遺言執行者がいれば、他の相続人の関与なしに一人で手続きを進められるため、相続人の負担を減らすことができます。
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③複数の金融機関に預貯金や有価証券がある場合
次に、複数の銀行口座や証券会社の口座を持っている場合です。
金融機関での名義変更や解約手続きは、窓口が平日の日中のみであったり、各機関で求められる書類が異なったりと非常に手間がかかります。遺言執行者がいないと、金融機関ごとに専用の請求用紙に相続人全員の署名・実印での捺印をもらって回る必要があったり、書類を使い回すために順番待ちをして数ヶ月の時間がかかったりします。遺言執行者を指定しておけば、こうした負担を大幅に減らすことができます。
遺言執行者には誰を選ぶべきか?
遺言執行者は、未成年者や破産者でなければ基本的に誰を指定しても構いません。一般的には、配偶者や子どもなどの「家族・親族」を選ぶケースと、行政書士・司法書士などの「専門家」に依頼するケースの大きく2つのパターンに分かれます。それぞれの注意点やメリット・デメリット(注意点)を見ていきましょう。
【1】家族・親族を選ぶ場合の注意点
遺言執行者は、未成年者や破産者でなければ、配偶者や子どもなどの家族・親族(相続人)を指定することもできます。専門家に依頼する報酬を節約できるという点ではメリットです。
しかし、専門家以外の人を遺言執行者に選ぶ場合には「手続きの負担」と「親族間トラブルのリスク」に十分注意する必要があります。
あとで解説するように、遺言執行者の職務は、相続財産の調査や財産目録の作成、各金融機関での解約手続きなど多岐にわたります。これらは専門的な知識が求められる場面も多く、平日の日中に役所や関係機関へ何度も足を運ばなければならないため、仕事や家事のある人にとっては大きな負担となります。
また、遺言の内容が特定の相続人に有利なものであった場合、遺言執行者となった人が他の相続人から不満や疑いの目を向けられ、矢面に立たされるケースも少なくありません。手続きを支障なく進めることができるかどうかや、遺言執行者として指定する人の負担を考慮した上で、慎重に検討することが大切です。
【2】専門家に依頼するメリット・デメリット
身近に適当な人が見つからない場合や身近な人に頼むことを避けた方がいい場合は行政書士・司法書士などの専門家に遺言執行者への就任を依頼する方法もあります。
専門家に遺言執行者への就任を依頼するメリットは、相続トラブル起こさずに、迅速かつ確実に手続きを進めてくれることです。
専門家は手続きの経験が豊富なため、面倒な財産調査や各金融機関での解約手続きなども滞りなく完了させることができます。また、利害関係のない第三者として中立的な立場で職務を行うため、家族間の対立を引き起こすことはなく、「財産を隠しているのではないか」といった疑念を持たれることもありません。残された家族に精神的な負担をかけずに済むのは大きなメリットです。
一方、デメリットは費用がかかることです。以下では専門家に遺言執行者への就任を依頼した場合にかかる費用や費用の払い方について解説します。
遺言執行者を専門家に依頼した場合にかかる費用は?
専門家に遺言執行者を依頼する場合、気になるのが「どのくらいの費用がかかるのか」ということではないでしょうか?費用は依頼する専門家の種類(行政書士や弁護士などの「士業」か「信託銀行」か)によって大きく変わります。それぞれの費用相場や特徴を順に見ていきましょう。
【1】士業
遺言執行者の就任を依頼する専門家(士業)としては、行政書士、司法書士、税理士、弁護士が多いです。それぞれの費用の目安、特徴などについて表にまとめましたので参考にしてください。
| 士業 | 費用の目安(最低報酬の相場) | 主な特徴・どんな人に向いているか |
| 行政書士 | 20万円〜30万円程度 (または遺産額の0.5〜2%) | 費用を抑えつつ、預貯金の解約や車・株式などの各種名義変更・書類手続きをスムーズに進めたい方 |
| 司法書士 | 25万円〜30万円程度 (または遺産額の0.5〜2%) | 遺産の中に土地や建物などの「不動産」が含まれており、相続登記まで一括で完了させたい方 |
| 税理士 | 30万円〜50万円程度 (または遺産額の0.5〜2%) | 基礎控除を超える大規模な遺産があり、相続税の申告や節税対策とセットで進めたい方 |
| 弁護士 | 30万円〜50万円程度 (または遺産額の1〜3%) | 相続人間で意見が対立している、または遺留分侵害額請求などの法律上の問題・トラブルが予想される方 |
【2】信託銀行
遺言執行業務は、士業だけでなく信託銀行に依頼することもできます。預貯金の解約や各種手続きを一括で任せられる点が魅力ですが、最大のネックは「費用の高さ」です。
信託銀行の最低報酬は100万〜150万円程度と士業の数倍高く設定されています。高額になる理由は、組織として遺言を長期間安全に管理・執行する体制が整っている点や、全体の統括窓口としてのコストが含まれているためです。
さらに、不動産登記は司法書士、税務は税理士へと実務の多くが外部へ再委託されるため、信託銀行への報酬とは別に専門家への費用も発生します。資金に余裕があり、大手ならではの安心感を最重視したい方向けの選択肢と言えます。
専門家への費用の払い方・工面の仕方
専門家に遺言執行者を依頼したいと考えていても、「生前にまとまった費用を支払わなければならないのか」「残された家族が高額な費用を立替払いすることになるのではないか」と不安に感じる方も少なくありません。しかし、遺言執行にかかる費用は「生前払い」ではなく「亡くなった後に遺産の中から清算する」のが基本ルールです。あらかじめ仕組みと工面方法を知っておけば、生前の負担なく安心して専門家に任せることができます。
①費用は「相続財産(遺産)」から清算できる
法律上、遺言執行にかかる費用は相続財産の中から負担すると定められています。相続財産とは要するに遺産のことで、費用は遺産の中から払えばよいということになります。遺言者が生前に払う必要も、残されたご家族が立て替える必要もありません。
遺言者が亡くなった後、遺言執行者が被相続人の預貯金口座を解約する手続きを行い、回収した遺産の中から自身の報酬や実費を精算した上で、残りの財産を相続人へ分配するという流れとなります。遺産の中から精算されるという仕組み自体は、専門家が遺言執行者になる場合も専門家以外の方が遺言執行者になる場合も同様です。
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②遺言書で「費用支払い用の口座」を指定しておく
精算手続きをよりスムーズにするための有効な対策が、遺言書の中で「遺言執行費用を支払うための預貯金口座」をあらかじめ指定しておくことです。
「本遺言の執行にかかる一切の費用は、〇〇銀行の預金から支払う」といった条項を記載しておき、その口座に必要な資金を残しておきます。こうすることで、他の相続財産(不動産や他の預貯金)の分配に影響を与えることなく費用処理を完了させることができます。
③生命保険を活用して費用の原資を準備する
預貯金の凍結や精算までの時間を心配される場合は生命保険を活用するのもおすすめです。
生命保険金は、被相続人が亡くなった後に受取人が指定の手続きをすれば数日〜1週間程度で迅速に支払われます。また、受取人固有の財産となるため、他の相続人の同意なしで即座に活用できます。あらかじめ専門家への報酬や実費分を見越した金額の保険に加入しておき、受取人を遺言執行者や特定の親族に指定しておくことで、資金面の心配を解消することができます。
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遺言執行者を指定する方法
遺言執行者を指定・選任するには、次の3つの方法があります。生前に遺言書で決めておく方法(直接指定・第三者への委託)と、相続発生後に家庭裁判所へ申し立てて選任してもらう方法です。それぞれの具体的な内容を見ていきましょう。
【1】遺言書の中で直接指定する
まず、以下のように、遺言書の中で直接指定しておく方法があります。
第〇条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として〇〇〇〇(昭和〇年〇月〇日生)を指定する。
第〇条 前記〇〇〇〇が死亡した場合、または遺言執行者に就職しなかった場合は、遺言者は、この遺言の遺言執行者として△△△△(平成〇年〇月〇日生)を指定する。
氏名だけでなく、住所や生年月日なども記載し、指定した人が誰かわかるによう特定しておくことがポイントです。「4」は、指定した人が亡くなった場合や、何らかの都合で遺言執行者になることを断った場合の予備的な遺言執行者の指定に関する条項です。
💡遺言執行者を頼む人から承諾を得ておきましょう
法律上は、相手の事前の同意がなくても、遺言書で遺言執行者に指定することは可能です。しかし、遺言執行者に指定された人には就任を拒否することができます。もし事前の相談なしに指定し、いざ遺言者が亡くなったときに「そんな話は聞いていない」「手続きが負担だからやりたくない」と辞退されてしまうと、遺言執行者が不在となってしまいます。その結果、残されたご家族がわざわざ家庭裁判所へ選任の申し立てを行わなければならず、かえって手間と時間がかかってしまいます。
指定する相手が家族・親族であっても、行政書士などの専門家であっても、遺言書を作成する段階で必ず「遺言執行者をお願いしたい」と伝え、了承を得てから記載するようにしましょう。
【2】遺言書で第三者に指定を委託する
次に、遺言書の中で直接指定するのではなく、以下のように、遺言者が亡くなったあとに第三者に遺言執行者を決めてもらう方法もあります。
第〇条 遺言者は、本遺言の遺言執行者の指定を、次の者に委託する。なお、同人が自ら遺言執行者に就任することを妨げない。
住所 東京都〇〇区〇〇一丁目〇番〇号
氏名 〇〇 〇〇(昭和〇年〇月〇日生)
2 前項の指定の委託を受けた者は、遺言者の相続開始後、遅滞なく遺言執行者を指定(または自ら就任)し、その旨を相続人に通知しなければならない。
3 第1項の指定の委託を受けた者が死亡し、又はその他の事由により指定の委託を遂行することができないときは、遺言者は、本遺言の遺言執行者として次の者を指定する。
住所(又は主たる事務所の所在地)
福岡県福岡市〇〇区〇〇二丁目〇番〇号
氏名(又は資格・氏名・法人名)
行政書士 〇〇 〇〇(昭和〇年〇月〇日生)
遺言書を作成する時点では誰が適任か決めきれない場合には、信頼できる第三者に遺言執行者の指定を任せることができます。
第1項では指定を委託しつつ、その第三者自身が遺言執行者になることも認めています。第2項は、相続開始後に速やかに選定手続きを進め、相続人へ通知する義務を明記したものです。
さらに重要なのが第3項です。委託された第三者が既に亡くなっていたり、将来いざという時に「やはり負担だからやりたくない」と辞退したりするケースに備え、あらかじめ「予備の遺言執行者」を指定しています。
【3】家庭裁判所に選任を申し立てる
次に、遺言書で遺言執行者の指定がされていなかった場合や、指定されていた人が既に亡くなっていたり、就任を辞退したりした場合にとられる方法です。
相続人や受遺者などの「利害関係人」が家庭裁判所へ申し立てを行い、裁判所に適任者を選任してもらいます。ただし、裁判所への申し立ては書類集めなどに手間と時間がかかるため、できる限り生前のうちに【1】の方法で指定しておくのがもっとも安心です。
【参照】遺言執行者の選任 | 裁判所
遺言執行者がやること
遺言執行者に就任すると、遺言の内容を実現するために様々な手続きを行っていくことになります。就任の通知から財産の調査、各金融機関等での名義変更、そして業務完了の報告に至るまでの具体的な流れを順番に見ていきましょう。
【1】相続人と面談し、必要書類を預かる
まず、遺言者がお亡くなりになった後、速やかに相続人や受遺者の方々と面談を行い、今後の流れや報酬の精算などについて説明します。その際、今後の手続きをスムーズに進めるため、以下の書類を預かっておくとよいでしょう。
- 公正証書遺言書の正本 ※遺言者が自筆証書遺言書保管制度を利用していたときは、指定を受けた遺言執行者が「遺言書情報証明書」の交付を受けることができます。
- 被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本
- 受遺者の戸籍謄本、住民票
- 預貯金の通帳、届出印、キャッシュカード
- 登記簿謄本(登記事項証明書)、固定資産税評価証明書、権利証(登記識別情報)
- 被相続人の財産を記載したメモ等
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【2】相続人の調査をする
次に、遺言者の相続人を調査して確定します。遺言執行者は相続人全員に対する就任通知や作成した「財産目録」の交付義務を負っているからです。
相続人の調査は、相続人から受け取った被相続人の戸籍などを解読して調査する必要があります。それでも足りないときは、役所から必要な戸籍取り寄せて調査する必要があります。遺言執行者には戸籍等を取り寄せる権限が認められています。
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【3】相続人に対して就任の通知をする
次に、【2】の調査で相続人を確定させた後、相続人の全員、および受遺者に対して、遺言執行者に就任した旨を書面で通知します。
遺言執行者が就任すると、相続人は遺言執行を妨げる行為ができなくなりますが、通知をしないと誤って執行を妨げる行為をしてしまう可能性があります。また、遺言執行者がいない場合、相続人は遺贈の履行義務を負いますが、遺言執行者がいる場合はこの義務を負いません。このように、相続人にとって、遺言執行者がいるかどうか、就任したかどうかは重大な関心事となることから就任の通知が必要とされています。
相続人に就寝したことを確実に通知するため、通知は書面で行います。書面には遺言書のコピー(写し)などを同封して郵送するのが一般的です。相手が未成年者の場合は法定代理人(通常は親)、成年被後見人の場合は成年後見人、行方不明者の場合は不在者財産管理人に対して通知します。
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【4】相続財産を調査し、財産目録を作成する
次に、遺言書に記載されている財産が現在どこにどれだけ残っているのかを調査し、その結果をまとめた「財産目録」を作成します。
具体的には、金融機関に残高証明書の請求を行って預貯金の額を確認したり、法務局で登記事項証明書を取得して不動産の状況を調べたりします(戸籍などと同様に、主取得する権限があります)。場合によっては現地調査を行うこともあります。完成した財産目録はすべての相続人や受遺者に交付しなければなりません。
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【5】各種相続手続きを実行する
次に、完成した財産目録や遺言書の内容に従って、実際の相続手続きを行います。
主な手続きとしては、各銀行の窓口での預貯金口座の解約・払い戻し手続きや指定口座への送金、法務局での不動産の名義変更に関する登記、証券会社での株式の移管手続きなどが挙げられます。また、遺言の中に「子どもの認知」や「相続人の廃除」といった身分に関する事項が含まれている場合は、速やかに市区町村役場へ届出を行うのも遺言執行者が行わなければならない仕事です。
【6】職務完了の報告をし、費用を精算する
次に、遺言書に記された財産の引き渡しや名義変更などのすべての手続きが完了したら「業務完了報告書」を作成し、相続人や受遺者に送付して完了の報告をします。
その際、手続きの過程でかかった戸籍謄本の取得費用や郵送料といった実費、および専門家の報酬などを記載した計算書・領収書を添付します。報告書では回収した遺産の中からこれらの費用が適正に精算されたことを明らかにしておきます。また、預かっていた書類も報告書とともに返却します。
遺言執行者ができないこと
遺言執行者は各種の手続きを一人で進めることができる権限をもっていますが、決して相続に関する「すべての手続き」を代行できるわけではありません。その権限はあくまで「遺言書の内容を実現すること」に制限されています。具体的にどのようなことができないのか見ていきましょう。
【1】遺言書に記載されていない財産の処分
一つ目に、遺言書に書かれていない財産の処分です。
遺言執行者ができることは、あくまで「遺言書に書かれている内容を実現すること」に限ります。そのため、遺言書に書かれていない財産が後から見つかった場合、遺言執行者が自分の判断で勝手に誰に分けるかを決めたり、売却して処分したりすることはできません。遺言書から漏れてしまった財産については、原則として遺言者の相続人全員で「遺産分割協議」を行って分け方を決める必要があります。相続人の代わりに協議に参加したり、分割の指示を出す権限は遺言執行者にはありません。
💡補足:トラブルを防ぐためのポイント
このような事態を防ぐため、遺言書を作成する際は、財産の記載漏れや、遺言作成後に増えた財産が見つかった場合に備えて、「本遺言に記載のないその他一切の財産は、〇〇に相続させる」といった包括的な条項を必ず入れておくことが大切です。この一文があるだけで、後から見つかった財産についても遺言執行者がスムーズに手続きを進めることができます。
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【2】各相続人の相続税の申告や納付手続き
二つ目に、相続税の申告や納付の手続きを代行することです。
遺言執行者は預貯金の解約や不動産の名義変更などを単独で行うことができますが、各相続人の「相続税の申告や納付」を代行することはできません。相続税の申告・納税は、遺産を受け取った相続人や受遺者自身が、それぞれの責任において税務署へ行うべき義務とされているからです。もちろん、遺言執行者が精査・作成した財産目録を申告時の計算資料として活用することはできますが、申告手続きそのものは相続人自身(または相続人が個別に依頼した税理士)が行う必要があります。「遺言執行者に任せれば税金の手続きもすべて終わる」わけではない点に注意が必要です。
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【3】遺留分侵害額請求への対応
三つ目に、相続人の一人から遺留分侵害額請求を受けたときにそれに対応することです。
もし遺言の内容が特定の人物に偏っており、納得できない相続人が「遺留分侵害額請求」を起こした場合でも、遺言執行者はその交渉や裁判の対応を代行することはできません。この請求は、あくまで「遺産を多くもらいすぎた人(受遺者等)」と「遺留分を侵害された相続人」という当事者間の個人的な問題として扱われるからです。遺言執行者は、あくまで遺言内容を淡々と実行する中立な立場にあるため、どちらか一方の味方をしてトラブルに介入する権限はありません。
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遺言執行者の任務が終わるとき
遺言執行者の任務は、遺言書の内容をすべて実行し、費用を精算した時点で終了するのが原則です。しかし、それ以外にも病気などで途中で辞任する場合や、裁判所に解任される場合などがあります。ここでは、遺言執行者の任務が終了する3つのケースについて見ていきましょう。
【1】辞任
まず、遺言執行者は、一度就任を承諾すると自己都合で勝手に辞めることはできません。ただし、重い病気や長期の海外転勤、高齢による体力の衰えなど、職務を続けることが客観的に困難な「正当な事由」がある場合に限り、家庭裁判所の許可を得て辞任することが認められています。辞任によって遺言執行者が不在となり、引き続き遺言の執行が必要な場合は、相続人などの利害関係人が家庭裁判所へ新たな遺言執行者の選任を申し立てることになります。
【2】解任
次に、遺言執行者がいつまでも財産目録を作成しない、一部の相続人にだけ有利な取り計らいをするなど「任務を怠ったとき」や、その他の「正当な事由」がある場合、相続人などの利害関係人は家庭裁判所に対して遺言執行者を解任にするよう申し立てることができます。裁判所が解任を妥当と判断すれば、その遺言執行者は任務から外されます。遺言執行者の業務に重大な問題があり、到底任せておけない場合の救済措置と言えます。
【3】執行事務の終了
遺言書に記載された内容がすべて実現され、遺言執行者としての執行事務が終わったときに任務は終了します。具体的には、預貯金の解約や不動産の名義変更などがすべて終わり、相続人全員に対して「業務完了報告書」を提出して費用の精算が済んだ時点です。なお、執行事務の終了以外にも、以下の場合は遺言執行者の事務は当然に終了します。
- 遺言執行者自身が死亡した場合
- 破産手続開始の決定を受けた場合
- 認知症などで後見開始の審判を受けた場合
これらによって執行事務が終わる前に遺言執行者がいなくなってしまった場合の対応は、遺言書で予備的な遺言執行者を指定されていた場合と指定されていない場合とで異なります、前者の場合は、新たな遺言執行者が就任に承諾すれば、その遺言執行者が残りの手続きを引き継ぎます。一方、後者の場合は、相続人などの利害関係人が家庭裁判所へ「新たな遺言執行者の選任」を申し立て、裁判所に選ばれた遺言執行者が残りの手続きを進めることになります。

保有資格:R7司法書士試験合格者(2026年中に司法書士事務所を開業予定)、行政書士、ファイナンシャルプランナー(2級・AFP未登録)
取扱予定業務:遺産承継(預貯金、相続登記など)・生前対策(遺言、任意後見、信託など)・民事裁判・離婚


