預金の相続手続きに期限はある?銀行口座の凍結から解約まで

ご家族が亡くなった後、銀行預金の相続手続きをいつまでにやればいいのか、焦って調べている方も多いのではないでしょうか。

結論から言うと、銀行預金の相続手続き自体に期限は設けられていません。 数年後に相続手続きしたとしても、国に没収される、、などというようなことはありませんのでご安心ください。

もっとも、期限が設けられていないからといって相続手続きを放置してはいけません。相続手続きを放置すると以下のようなリスクやペナルティーを受けるおそれがあります。

相続手続きを放置することによるリスク・ペナルティ

① 10年経過で「休眠預金」になるリスク:最後の取引から10年以上が経過すると「休眠預金」として扱われ、預金保険機構に移管されてしまいます。お金が没収されるわけではありませんが、引き出すための手続きが通常よりも煩雑になります。

② 相続人が増えて話し合いが困難になるリスク:手続きを放置している間に別の相続人が亡くなると、その子供(代襲相続人など)に権利が移ります。関係者がねずみ算式に増え、面識のない親戚同士で遺産分割協議を行わなければならず、合意形成が極めて困難になります。

③ 他の相続人に預金を勝手に引き出されるリスク:銀行側が死亡の事実を把握しておらず口座が凍結されていない場合、キャッシュカードと暗証番号を知っている一部の親族が、勝手に預金を引き出してしまうトラブル(使い込み)に発展する恐れがあります。

④ 相続税の申告漏れで重いペナルティを課されるリスク:預金を含めた遺産総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合、故人の死後10ヶ月以内に申告・納税が必要です。放置して期限を過ぎると、「無申告加算税」や「延滞税」といった重いペナルティが課されます。

⑤ 多額の借金を背負ってしまうリスク(相続放棄の期限切れ):相続放棄の期限は「相続開始を知った時から3ヶ月以内」です。預金の相続手続きを放置したまま3ヶ月が過ぎてしまい、後になって故人に多額の借金があることがわかったとしても、相続放棄ができず自腹で返済しなければなりません。

⑥ 手続きのハードルがさらに上がるリスク:時間が経てば経つほど、他の相続人と疎遠になって遺産分割協議書への署名や印鑑証明書をもらうのが難しくなります。また、古い書類の収集に手間取ったり、金融機関の統廃合で口座の追跡が困難になったりするケースもあります。

「うっかり期限を過ぎてしまった……」という事態を防ぐためにも、預金の相続手続きは全体の流れを把握し、できる限り早めに進めるのがスムーズです。それでは、具体的にどのような手順で進めればよいのか以下で解説していきます。

【全体像】預金を相続するまでの流れ

預金を相続するまでの流れは以下のとおりです。なお、預金を相続するまでの流れは、大きく【遺言書がある場合】と【遺言書がない場合(遺産分割協議を行う場合)】にわかれますが、以下では、ケースとして多い後者の場合の流れについて解説します。

なお、故人がお亡くなりになった後の手続き、預貯金などの遺産以外の手続きについては以下の記事で詳しく解説しています。

【ステップ①】遺言書がないか確認する

まず、故人が遺言書を作っていないかどうかを確かめます

故人が遺言書を作っている場合、遺言書に預貯金を相続する人がすでに指定されているかもしれません。その場合は、基本的に遺言書の内容に従って手続きを進めていく必要があります。遺言書は自筆証書遺言か公正証書遺言のどちらかで作られていることがほとんどです。自筆証書遺言は法務局に保管されている可能性もあります。公正証書遺言は、公証役場に作ったかどうか照会をかけることができます。

【ステップ②】相続人を確定する

遺言書を作っていないことが確認できたら、相続人を確定する作業に進みます。

故人が遺言書を作っていない場合、預貯金は故人の死亡と同時にその相続人の共有財産となります。この共有財産をのちの遺産分割協議によって分け合う必要があります。そのための前提として相続人を確定させておく必要があります。相続人を確定するためには、故人やその相続人の戸籍を市区町村役場から取り寄せ、戸籍を解読していく必要があります。

【ステップ③】法定相続情報一覧図の交付申請をする

相続人を確定するための戸籍が集まったら、「法定相続情報一覧図」の取得を検討しましょう。 預金の相続手続きは、集めた戸籍謄本の束をそのまま銀行に提出することでも進められますが、提出のたびに確認で時間がかかったり、書類の返却を待ってから次の銀行へ行く必要があったりと非常に手間がかかります。 法定相続情報一覧図を無料で複数枚取得しておけば、複数の銀行手続きを同時並行で進めることができるため、口座が複数ある方には取得を強くおすすめします。

法定相続情報一覧図とは、故人の相続人である人を家系図のようにまとめた書面で、「この書面は提出された戸籍等に基づいて正確に記載されています」という法務局の登記官のお墨付きがついたものです。平成29年5月29日から始まった制度で、それまでは預貯金の相続のため、戸籍の束を銀行等に提出する必要がありましたが、制度が始まってからはこの書面だけで代用できるようになりました。一度申請すれば、無料で何通も取得できるため、預貯金口座がいくつもある場合は申請しておくことをおすすめします。

【ステップ④】故人の預貯金口座を探す

ご遺族の中には故人の通帳やキャッシュカードを把握しておらず、どの銀行等に故人の預貯金口座があるかわからない、という方もおられるでしょう。そのような場合には以下の2つの方法で故人の預貯金口座を探すことが考えられます。なお、故人の通帳やキャッシュカードをお持ちで、故人の銀行等の口座を把握されている方は【ステップ⑤】にお進みください。

近場の銀行等に照会する

1つ目に、故人の生活圏にある銀行等に預貯金口座がないか照会をかける方法です。ゆうちょ銀行のほか、地場で強い地方銀行などは開設している可能性がありますので、照会してみる価値はあると思います。なお、銀行等に照会を行うと、故人が亡くなったことが銀行等に伝わります。銀行等は故人が亡くなったことを知ると、故人の口座を凍結しますので注意が必要です。

相続時預貯金口座照会制度を利用する

2つ目に、相続時預貯金口座照会制度を利用する方法です。マイナンバーカードと紐付いている口座を一括して調べることができる制度で、令和7年(2025年)4月1日から始まっています。この制度ができるまでは、照会をかけた銀行等からしか回答を得ることができませんでしたが、この制度では、任意の銀行等で手続きすることで、全国の銀行等にある故人の口座を調べることができます。もっとも、生前に故人がマイナンバーと銀行等の口座とを紐付けていることが前提です。また、制度を利用した時点で口座を凍結されてしまう可能性がある点は1つ目の方法と同じです。

💡ネット銀行(デジタル遺産)の見落としに注意!
近年増えている「ネット銀行」は、紙の通帳やキャッシュカードが発行されないことも多く、遺族が口座の存在に気づかないケースが多発しています。ネット銀行の口座を探す際は、以下のポイントを確認してみてください。

  • スマホ・パソコンの確認: ネット銀行のアプリがインストールされていないか確認する。
  • メール履歴の検索: 故人のメールボックスで「銀行」「口座」「振込」「キャンペーン」などのキーワードで検索し、金融機関からのメールがないか探す。
  • 郵便物の確認: ネット銀行であっても、重要なお知らせやローン関連の案内がハガキや封書で届いている場合があります。

どうしても見つからない場合や不安な場合は、前述の「相続時預貯金口座照会制度」を活用するのも有効な手段です。

【ステップ⑤】銀行へ連絡して「口座凍結」を行う

故人の通帳をお持ちの場合は通帳にかかれてある銀行等の電話番号に電話をかけ、口座の名義人が亡くなったことを伝えます。また、電話の際に、今後の手続きの流れを確認し、金融機関所定の「相続手続依頼書(相続届)」などの必要書類を取り寄せます。

この時点で銀行等に口座の名義人が亡くなったことが伝わりますから、口座を凍結措置がとられます。その口座が公共料金などの引き落とし口座になっている場合は、あらかじめ以下の方法をとっておくことが考えられます。

  • 故人と同居している人がいる場合は、その人の口座に変更する
  • 故人が一人暮らしだった場合は、その不動産を取得する予定がある人の口座に変更する

Q:遺産分割前でも引き出せる「預貯金の仮払い制度」とは?

銀行に口座名義人の連絡をすると口座が凍結されてしまいますが、「葬儀費用や当面の生活費が足りなくて困る」という事態を防ぐために、「預貯金の仮払い」という制度が用意されています。通常、凍結された預金は相続人全員の手続き(遺産分割協議など)が終わるまで引き出せませんが、この制度を利用すれば、他の相続人の同意がなくても、単独で一定額のお金を引き出すことができます。

遺産分割協議(ステップ⑧)が長引きそうな場合や、急ぎで現金が必要な場合は、残高証明書の請求(ステップ⑥)の際にあわせて銀行の担当者に相談してみることをおすすめします。

【ステップ⑥】残高証明書を請求する

銀行等に口座名義人が亡くなったことを伝えたら、担当から今後の手続きや提出書類などの案内を受けます。案内を受けたら、案内に従って残高証明書の取得を請求します

残高証明書は必ず相続開始時(故人が亡くなったとき)のものを請求します。残高証明書は相続人の一人からでも請求できます。残高証明書の請求により、銀行等は故人名義の取引をすべて調査してくれるため、口座の把握漏れを防ぐことができます。窓口で請求した場合はその場、郵送で請求した場合でも1週間前後で受け取ることができるはずです。

【ステップ⑦】相続するか否かを決める

預貯金などのプラスの財産のほか、借金などのマイナスの財産をすべて把握できたら故人の遺産を相続するか否かを決めます

この判断は、故人の死亡をしり、かつ、故人の相続人であることを知った日から3か月以内に行わなければいけません。相続する場合は【ステップ⑧】に進みますが、相続放棄する場合は家庭裁判所に対して申述する手続きをとらなければいけません。相続人が複数いる場合でも、各相続人の判断で相続するかしないか決めることができます。

【ステップ⑧】遺産分割協議をする

相続人と相続する遺産を確定できたら、相続人で遺産の分け方について話し合います。なお、相続放棄した人は相続人ではないため、遺産分割協議に参加させる必要はありません。

遺産の分け方は相続人が話し合って自由に決めることができます。口座が複数ある場合は、たとえば、以下のような分け方が考えられます。いずれの方法をとるにせよ、話がまとまったら話し合いの内容をまとめた遺産分割協議書を作ります。遺産分割協議書は【ステップ⑨】の手続きで必要です。

なお、相続人の中に音信不通や行方不明の方がいて話し合いができない場合は、そのままでは遺産分割協議を進めることができません。このようなケースでは、家庭裁判所で「不在者財産管理人」を選任してもらう手続きが必要になります。

①各相続人が各口座を相続する
②一人の相続人がすべての口座を相続する(他の相続人は他の遺産を相続する)
③一人の相続人が相続し、各相続人にお金を振り分ける

【ステップ⑨】銀行に「必要書類」を提出し、名義変更・解約(払い戻し)を行う

最後に、遺産分割協議で故人の預貯金を引き継ぐことになった人が手続きをとります

引継ぎの方法としては、口座を「解約(払い戻し)」するか「名義変更」するかのいずれかになります。いずれにしても銀行等に必要書類(遺産分割協議書など)を提出する必要があります。必要書類は銀行等や相続人の状況、引継ぎの方法などによって異なるため、あらかじめ担当によく確認しておくことが大切です。預貯金の種類によっては解約すると低い利息しか受け取れない可能性もあるため、解約か名義変更かも慎重に判断する必要があります。

(必要書類・例)

  • 相続人の範囲を示す書類(以下のいずれか)
    ・相続関係説明図(故人や相続人の戸籍を添付したもの)
    ・法定相続情報一覧図
  • 遺産分割協議書(相続人全員の署名・実印での押印がなされたもの)
  • 相続人全員の印鑑登録証明書
  • 故人の通帳、キャッシュカード
  • 相続届

⚠️ 金融機関ごとの独自ルールや「書類の有効期限」に注意!

上記で紹介した必要書類はあくまで一般的な例で、手続きを行う金融機関(銀行・信託銀行・ゆうちょ銀行など)によって、独自のルール(印鑑登録証明書は発行から3か月以内のもの、など)が設けられているケースがあるため注意が必要です。手続きを行う前に金融機関のホームページを確認するか、直接窓口で確認しておくとよいでしょう。

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