相続の残高証明書とは?必要書類から手続きの流れ・注意点まで全解説


保有資格:R7司法書士試験合格者(2026年中に司法書士事務所を開業予定)、行政書士、ファイナンシャルプランナー(2級・AFP未登録)
取扱予定業務:遺産承継(預貯金、相続登記など)・生前対策(遺言、任意後見、信託など)・民事裁判・離婚
残高証明書とは?
残高証明書とは、特定の日における預貯金口座の残高などを証明する書類のことです。相続手続きにおいては、主に相続開始日(被相続人の死亡日)現在の残高証明書を取得し、相続財産の正確な評価額を確定させるために利用されます。
残高証明書の特徴
残高証明書には、以下の特徴・機能があります。
【1】相続財産(遺産)を正確に評価・証明する
相続とは被相続人が相続開始日に持っていた相続財産を引き継ぐことです。したがって、預貯金を引き継ぐためには、相続開始時点の口座残高を知る必要があります。残高証明書を取得することで相続開始時点の口座残高を知ることができます。金融機関から借金をしているときは、その残高も知ることができます。
また、被相続人が定期預金などを持っていた場合は、相続開始時点で解約したと仮定した場合の利息(既経過利息)も相続税の対象になります。この利息も残高証明書に記載してもらうことができます。外貨預金を持っていた場合は、死亡日の換算レート(TTB)を記載してもらうこともできます。
その他、残高証明書は銀行だけでなく証券会社にも発行を申請できます。その際「相続税の申告に使います」と伝えると、保有株式数などに加えて、申告に必要な評価額などを記載してもらえることが多いです。
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【2】全支店の口座を調査できる
金融機関の支店に請求すると、同じ金融機関内にある他の支店の口座についても調べてもらう(全店照会・名寄せ)ことができます。そのため、ご遺族が把握していなかった口座が新たに見つかる可能性があり、口座の把握漏れを防ぐことができます。残高証明書の発行申請は最寄りの金融機関の支店で行うことができます。必ずしも取引のある支店に請求する必要はありません。
【3】単独で発行請求ができる
残高証明書の発行請求は、遺産分割協議の前であっても相続人全員の署名や実印を集めたり、同意を得る必要はなく、法定相続人のうちの1人から単独で行えます。また、 遺言によって特定の預貯金を取得しないことになった相続人であっても、預金契約上の地位を準共有しているとして、残高証明書の開示請求ができると解されています。
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なぜ相続手続きで「残高証明書」が必要なのか?
「相続開始時の口座残高を調べるだけであれば通帳を見れば済むのでは?」と思われる方もおられるかもしれません。しかし、相続手続きを進めるにあたっては通帳のみでは足りません。ここでは、なぜ通帳のみでは足りず、わざわざ金融機関から「残高証明書」を発行してもらう必要があるのかについて解説します。
【1】遺産分割協議での無用なトラブルを防ぐため
相続人全員で誰がどの財産を引き継ぐかを話し合う「遺産分割協議」では、前提として「相続財産が1円単位で正確に確定していること」が求められます。
通帳の残高は、あくまで「最後に記帳した時点」の金額に過ぎません。死亡日直前に引き落とされた公共料金やクレジットカードの代金、あるいは未記帳のままになっている入出金がある場合、手元の通帳と実際の口座残高にズレが生じます。 また、被相続人が複数の口座を使い分けていた場合、一部の通帳が見つからないことも珍しくありません。
残高証明書では「相続開始時点での正確な口座残高」と「すべての保有口座」を知ることができます。相続開始時点の口座残高を客観的に証明できるため、「他にも隠し口座があるのではないか」「使い込みしているのではないか」といった不信感から相続人間のトラブルに発展することを未然に防ぐことができます。
【2】相続税の申告で必須だから
相続財産の総額が基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)を超える場合、相続税の申告が必要になります。この申告において、税務署は「通帳のコピー」を口座残高の証明書類として認めていません。税務署が残高証明書を要求するのには、主に以下の理由があります。
- 既経過利息(きけいかりそく)の計上漏れを防ぐため: 定期預金や定額貯金の場合、死亡日時点ではまだ支払われていない「前回利息支払日から相続開始日までに発生した利息(既経過利息)」も、相続財産として計上しなければなりません。これは通帳を見ただけでは絶対に分からず、金融機関に計算して証明してもらう必要があります。
- 投資信託や外貨預金の正確な評価のため: これらは日々価格(基準価額や為替レート)が変動します。相続税申告では「相続開始日の評価額(またはレート)」で換算する必要があり、これを客観的に証明できるのは金融機関や証券会社が発行する残高証明書のみです。
【3】紛失・盗難・Web通帳(ペーパーレス化)への対応
近年増えているのが、「紙の通帳がそもそも存在しない(Web通帳・ネット銀行)」というケースです。 被相続人がスマートフォンやパソコンで残高を管理していた場合、本人の死後はパスワードが分からず、ログインして残高を確認することすら不可能になることが多々あります。
また、紙の通帳であっても紛失や盗難に遭っている可能性もあります。このような場合、金融機関に死亡の事実を伝えて口座を凍結した上で、被相続人の相続人として残高証明書を発行してもらう以外に、口座残高を把握する手段はありません。
残高証明書の取得に必要な書類一覧
金融機関によって多少の違いはありますが、原則として以下の書類が必要になります。二度手間を防ぐため、事前にしっかり確認しましょう。
【基本の必要書類リスト】
| 必要書類 | 詳細・注意点 |
| 1. 残高証明書発行依頼書 | 各金融機関の窓口に備え付けられている、またはHPからダウンロードできる専用の申請用紙です。 |
| 2. 被相続人の戸籍謄本 | 死亡の事実が確認できるもの。※相続税申告や名義変更まで見据える場合は、「出生から死亡まで連続した戸籍謄本」を準備しておくのがベストです。 |
| 3. 請求する相続人の戸籍謄本 | 被相続人との関係(相続人であること)を証明するために必要です。 |
| 4. 請求する相続人の印鑑証明書 | 発行から3ヶ月(金融機関によっては6ヶ月)以内のもの。 |
| 5. 請求する相続人の実印 | 依頼書に押印するために持参します。 |
| 6. 請求する相続人の本人確認書類 | 運転免許証、マイナンバーカードなど(顔写真付きがスムーズです)。 |
| 7. 通帳・キャッシュカード | 口座番号を特定するために持参します。紛失している場合は窓口でその旨を伝えて名寄せ(口座の検索)を依頼します。 |
💡法定相続情報一覧図の活用
法務局で「法定相続情報一覧図」を作成しておけば、上記「2」「3」の分厚い戸籍の束の代わりに、この一覧図の写し1枚を提出するだけで済みます。複数の銀行に手続きを行う場合は非常に便利です。
残高証明書の請求から発行までの流れ
残高証明書の請求から発行までの一般的な流れは以下のとおりです。なお、実際の流れは各金融機関によって異なります。具体的な手続きについては【ステップ2】の連絡の段階で、金融機関の担当に確認しながら進めていくとよいでしょう。
【ステップ1】事前準備
残高証明書の請求のためには金融機関に口座名義人の死亡を伝えなければなりません。しかし、金融機関に被相続人が死亡したことを伝えると、その時点で口座が凍結され、その口座での取引ができなくなります。そのため、その口座が公共料金などの引落し口座に指定されているときは、支払い方法の変更(別の相続人の口座への変更や、請求書払いへの切り替えなど)を行っておく必要があります。
口座凍結によって引き落としができなくなると、滞納扱いとなって延滞遅延金が発生したり、電気や水道などのインフラが止まってしまったりする恐れがあるため注意が必要です。もし何が引き落とされているか正確に把握できていない場合は、金融機関へ死亡の連絡を入れる前に通帳を最新の状態まで記帳し、過去数ヶ月分の取引履歴から契約先(電力会社、水道局、クレジットカード会社、携帯電話会社など)を洗い出して速やかに連絡しましょう。
また、同時に残高証明書の請求に必要な書類を集めます。必要書類については解説したとおりです。
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【ステップ2】金融機関への事前連絡・予約
取引のあった金融機関(最寄りの支店や相続専用センターなど)へ電話をし、口座名義人が死亡したことと、残高証明書を取得したい旨を伝えます。現在、多くの金融機関の窓口は事前予約制となっているため、訪問する場合は必ず予約を取ります。また、店舗に出向かず郵送で手続きができる金融機関も増えているため、合わせて確認するとスムーズです。
【ステップ3】請求手続き
予約した日時に窓口へ行くか郵送にて、金融機関所定の「残高証明書発行依頼書」等に記入・実印を押印し、必要書類を提出(提示)します。この際、以下のポイントを漏らさず請求するようにしましょう。
- 基準日の指定: 相続税申告等に使うため、基準日を「相続開始日(死亡日)」に指定します。
- 全店照会(名寄せ)の依頼: 把握していない他の支店に口座がないか、全店を対象に調査してもらいます。
- 経過利息の計算: 定期預金がある場合は、死亡日時点の「経過利息計算書」もあわせて依頼します。
残高証明書の発行を請求するには、金融機関所定の発行手数料を支払う必要があります。あらかじめ料金を確認しておきましょう。郵送で請求する場合の支払い方法(「定額小為替」、「口座引落し」、「銀行振込み」など)も金融機関によって異なります。
相続人の一人から請求できる?
「残高証明書の特徴」の箇所でも述べたように、残高証明書は相続人の一人からでも請求することができます。請求するにあたって、他の相続人から同意を得る必要はありません。なお、残高証明書の発行請求は相続財産の「処分」ではないため、残高証明書の発行を請求しても単純承認したことにはなりません。熟慮期間(3か月)が経過していない限り、相続放棄することができます。
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【ステップ4】残高証明書が発行される
窓口で請求した書類はいったん受付され、通常は1週間程度で請求者の自宅等へ郵送で届きます。ただし、一部の信用金庫などの金融機関では、請求当日(訪問時)にその場で即日発行してくれるところもあります。一方、郵送で請求した場合、書類一式が金融機関の相続センター等に到着してから手元に届くまでに、おおよそ1週間〜2週間程度かかります。
郵送での請求は窓口へ行く手間が省ける反面、もし書類に不備があった場合、確認の電話が入ったり書類が返送されたりして、さらに時間がかかってしまいます。スムーズに取得するためにも、発送前に記入漏れや添付書類の不足がないか入念にチェックしましょう。お急ぎの場合は、事前に金融機関へ「どのくらいの日数で発行されるか」の目安を確認しておくことをおすすめします。
残高証明書と一緒に「取引履歴」の請求を
残高証明書が被相続人の死亡日時点の残高を示す「点の情報」であるのに対し、取引履歴(取引推移表)は過去の入出金などお金の流れを時系列で把握できる「線の情報」です。
請求のメリット
取引履歴を請求する最大のメリットは、正確な相続財産調査や相続トラブルの防止ができる点です。
たとえば、「同居の親族が勝手に預金を引き出していないか」「特定の相続人への生前贈与(特別受益)はないか」といった疑問を客観的な証拠で確認できます。また、取引履歴に残る引き落としや入金記録から、他の把握していなかった財産(証券口座、生命保険、不動産収入)や借金(クレジットカード、消費者金融)が見つかることもあります。
さらに、相続税申告において税務調査の対象となりやすい「名義預金」や「直前の現金引き出し」の対策としても非常に重要です。
請求の方法・注意点
請求方法については、残高証明書と同様に相続人の一人から単独で各金融機関の窓口や郵送にて手続きが可能です。他の相続人の同意は必要ありません。必要なときは残高証明書と合わせて請求するとよいでしょう。
ただし、請求にあたってはいくつか注意点があります。まず、発行手数料が高額になりやすい点です。残高証明書が1通あたりの定額であるのに対し、取引履歴は「1ヶ月あたり〇〇円」といった従量制であることが多く、長期間遡るほど費用がかさみます。また、調べる期間は一般的に「過去3〜5年分(税務申告などを見据えるなら7〜10年分)」を指定しますが、データ量が膨大になるため即日発行はできず、手元に届くまでに2週間から1ヶ月程度の時間がかかることがあります。余裕を持ったスケジュールで手続きを進めましょう。

保有資格:R7司法書士試験合格者(2026年中に司法書士事務所を開業予定)、行政書士、ファイナンシャルプランナー(2級・AFP未登録)
取扱予定業務:遺産承継(預貯金、相続登記など)・生前対策(遺言、任意後見、信託など)・民事裁判・離婚

