【見本あり】遺言書の正しい訂正方法!書き直しとの判断基準も解説

自筆証書遺言を作成している途中で書き間違いに気づいたり、作成後に内容を変更したくなったりした場合、「どのように訂正すればいいのだろう?」と悩む方は多いのではないでしょうか。
結論から言うと、遺言書を訂正する際、修正テープや修正液を使うのは絶対にNGです。遺言書の訂正方法は民法という法律でルールが定められています。間違った手順で訂正してしまうと、その訂正が無効になるばかりか、最悪の場合はせっかく書いた遺言書全体が無効となってしまうおそれがあります。
本記事では、自筆証書遺言の正しい訂正方法(加筆・削除・訂正)について、実際の書き方がひと目でわかる「見本(図解)」付きでわかりやすく解説します。二重線の引き方から押印、欄外への付記や署名のルールまで、失敗しないためのポイントを網羅しました。
さらに、やりがちなNGな修正例や、「この程度の間違いなら訂正で済ませるべきか、それとも一から新しく書き直すべきか」という判断基準についても詳しくお伝えします。ご家族へ確実に想いを残し、将来の相続トラブルを防ぐためにも、自己流で訂正して後で後悔する前にぜひ本記事を参考にしてみてください。

保有資格:R7司法書士試験合格者(2026年中に司法書士事務所を開業予定)、行政書士、ファイナンシャルプランナー(2級・AFP未登録)
取扱予定業務:遺産承継(預貯金、相続登記など)・生前対策(遺言、任意後見、信託など)・民事裁判・離婚
遺言書の正しい訂正方法
それでは、まず、遺言書の正しい訂正方法について解説します。遺言書の訂正方法は法律で定められています。万が一間違った方法で訂正してしまうと、訂正が無効になるだけでなく、遺言書全体が無効になってしまう可能性があるため注意が必要です。
【ステップ1】訂正箇所を指示する
訂正箇所の指示方法は、「加筆」、「削除」、「訂正」によって異なります。
- 加筆:原文の加筆する箇所に「 { 」の印をつけ、加筆する内容を書き、内容の下(横)に押印(※)する
- 削除:原文の削除する部分を二重線で消し、その箇所に押印(※)する
- 訂正:原文の訂正する部分を二重線で消し、変更する文章・文言を書き入れて押印(※)する
※遺言書の署名横に押印した印鑑と同じ印鑑で押印します
※訂正に用いる数字は漢数字でも算用数字でもかまいません
【ステップ2】訂正した旨を付記する
訂正した旨の一文を付記する方法には「①訂正箇所の近くの欄外に付記する方法」と「②遺言書の署名後欄に付記する方法」とがあります。詳しくは、あとの「【見本付き】遺言書の訂正方法」で解説します。
①の方法による場合は「この行一字加入 山田太郎」(加筆の場合)と書きます。②の方法による場合は「付記 この遺言書中○行目、全文を削除する 山田太郎」(削除の場合)などと書きます。
【見本付き】遺言書の訂正方法

それでは、ここからは、遺言書のサンプルを使いながら、上のステップで解説した遺言書の訂正方法についてより詳しく解説していきます。
【ケース1】加筆する場合

加筆する場合は、「{ 」を文字の間に入れその横に押印します【ステップ1】。ここでは、欄外に「この行2字加入 山田太郎」と、訂正した旨を付記しています【ステップ2の①】。
【ケース2】削除する場合

削除する場合は、削除する部分を二重線で消し、その箇所に押印します【ステップ1】。ここでは、目立たせるため二重線は赤で引いていますが、実際は本文を書いたペンと同じペンで引いてください。付記は欄外に「この行全文削除 山田太郎」と書いています。
【ケース3】訂正する場合

訂正する場合は、本文の訂正する部分を二重線で消し、変更する文章・文言を書き入れて押印します【ステップ1】。訂正に関する付記は、解説の便宜上、署名欄の後に入れています。
【ケース4】付記を挿入する場合

外及び【ケース3】の付記は上のとおりです。もちろん、【ケース1】・【ケース2】の付記をこちらにまとめて書くこともできます。
NG!な遺言書の訂正方法
このように、遺言書の訂正方法には、法律で厳しいルールが定められており、自己流での訂正は厳禁です。ここでは、訂正箇所や遺言書自体が無効になってしまうおそれがある「絶対にやってはいけないNGな訂正方法」について解説します。
【NG1】修正テープ・修正液を使う
まず、遺言書の文字を間違えた際、修正テープや修正液を使って訂正することです。
法律のルールでは、訂正した箇所は「元の文字が読める状態」でなければならないとされています。修正テープなどで元の文字を完全に隠してしまうと、法律のルールに違反し、訂正が無効(場合によっては遺言書全体が無効)になってしまいます。
【NG2】押印の押し忘れ・署名漏れ
次に、間違えた箇所に二重線を引いて訂正するだけで終わらせてしまうことです。
遺言書は「訂正箇所への押印」と「欄外への付記および署名」の両方が揃ってはじめて訂正したことになります。特に忘れがちなのが、欄外に書いた付記の横(または末尾)への「署名(自署)」です。訂正印を押していても、付記への署名が漏れているだけで無効となってしまうため十分に注意しましょう。
【NG3】元の文字の黒塗り・塗りつぶし
次に、間違えた文字をペンでぐちゃぐちゃと真っ黒に塗りつぶして消してしまうことです。
前述のとおり、遺言書の訂正は「元の文字が判読できること」が前提となります。塗りつぶしによって元の文字が解読できない状態になると、第三者による改ざんが疑われる原因にもなり、正しい訂正として認められません。文字を消す際は、必ず元の文字が見えるように「二重線」を引きましょう。
訂正?書き直し?どっちがいい?
遺言書に間違いを見つけたり内容を変更したくなったりしたとき、「このまま訂正すべきか、一から新しく書き直すべきか」と、判断に迷う方は多いでしょう。ここでは、それぞれ、どういう基準で選べばいいのか、その判断基準について解説します。
【1】軽微な変更なら「訂正」、大幅な変更なら「書き直し」
遺言書の内容を変更したい場合、どちらを選ぶべきかは「変更の規模」で判断します。
数文字程度の単なる誤字脱字の修正であれば、すでに解説したルールに則って「訂正」を行っても問題ありません。
しかし、財産を譲る相手を変えたい、金額を大きく変更したいといった「内容そのものの変更」や、訂正箇所が複数に及ぶ場合は、一から全文を「書き直す」ことを強くおすすめします。
なぜなら、遺言書の訂正は少しでもルールを間違えると無効になるリスクが高いからです。また、訂正印や二重線だらけの遺言書は見た目が煩雑になり、死後に相続人同士で「本当に本人が訂正したのか」と偽造や改ざんを疑われる原因にもなりかねません。確実性を重視するなら、全文の書き直しが最も安全です。
【2】新たな遺言書で一から全文を「書き直す」際の注意点

新たな遺言書で一から書き直す場合は以下の点に注意しましょう。
①撤回する遺言書を特定する
「令和○年○月○日付で作成した」「自筆証書遺言」というように、日付と遺言の方式で撤回する遺言書を特定しましょう。また、全部撤回すること(一部撤回ではないこと)を明らかにするため、「全部撤回する。」と明記しておきます。
②自筆証書遺言の作成ルールに従う
新たに作る遺言書も自筆証書遺言の作成ルールに従って作らなければなりません。ルールに反すると新しい遺言書自体が無効となり、以前に作った遺言書が撤回されず生きたままになるため注意が必要です。
③遺言書の方式が異なっても撤回できる
遺言書の方式が異なっても撤回できます。たとえば、以前に作った遺言書が公正証書遺言の場合でも、自筆証書遺言で撤回できます。公正証書遺言で撤回しなければならないという決まりはありません。その逆も同じです。
💡公正証書遺言を自筆証書遺言で撤回する場合の注意点
公正証書遺言を自筆証書遺言で撤回する場合、公証役場での手続きや連絡は不要です。ただし、公証役場には「過去の公正証書遺言のデータ」がそのまま残り続けます。もしご本人の死後に新しい自筆証書遺言が発見されなかった場合、相続人が古い公正証書遺言に基づいて手続きを進めてしまい、トラブルとなる可能性があります。これを防ぐため、公正証書遺言を自筆証書遺言で撤回する場合は以下の対策をしておくのが安全です。
- 発見漏れを確実に防ぐため、新しい自筆証書遺言を法務局の「遺言書保管制度」に預ける。
- 「新しく書き直した遺言書があること」を、信頼できる家族や遺言執行者に伝えておく。
なお、公正証書遺言の原本は公証役場に保管されているため、手元にある公正証書遺言の正本・謄本を破棄しても、公正証書遺言は撤回したことにはなりません。
④古い自筆証書遺言はどうする?
以前、作った遺言書が自筆証書遺言の場合はシュレッダーにかけるなどして確実に破棄しましょう。確かに、新しい遺言書に「前の遺言を撤回する」旨を明記していれば、古い遺言書は無効となります。しかし、死後に複数の遺言書が見つかると相続人が混乱してしまい、無用なトラブルを招く可能性があります。そうした事態を防ぐためにも、古い遺言書は破棄しておくことが安全です。
💡古い遺言書を自筆証書遺言書保管制度で預けている場合
この場合は、遺言書を預けた法務局に対して、古い遺言書の保管の撤回をした旨を申し出て手続きを予約します。そして、予約当日、実際に法務局に出向いて古い遺言書を回収する必要があります。新しい遺言書を法務局に預けたい場合は、保管の撤回と(新たな)保管の予約とを同時に行っておけば、法務局に何度も足を運ぶ必要がなくなります。
自筆証書遺言書保管制度を利用している場合の訂正方法
自筆証書遺言書保管制度を利用して遺言書を預けている場合、遺言書を法務局に預けたまま訂正することはできません。訂正方法は、預けている遺言書を「訂正」するか「書き直す」かで若干異なります。まずは「訂正?書き直し?どっちがいい?」で解説した基準を参考に、どちらの方法で変更するのか決めておきましょう。
【1】預けた遺言書を「訂正」する場合
まず、遺言書を預けた法務局(遺言書保管所)に手続きの予約をとります。そして、予約した日時に法務局に出向いて保管の撤回申請を行い、遺言書を回収します。
その後、回収した遺言書に対し、すでに解説したルールに沿って訂正を行います。訂正が完了したら、その遺言書を再度法務局へ持ち込み、改めて「保管の申請」を行います。この際、新規の申請扱いとなるため、再度保管手数料(3,900円)がかかります。
※自筆証書遺言の訂正ルールは非常に厳格で、書き方を誤ると遺言自体が無効になるおそれがあります。手元の遺言書を訂正するよりも、次に解説する【2】の「一から書き直す」方法をとる方が確実で安心です。
【2】預けた遺言書を破棄し、一から全文を「書き直す」場合
遺言書の内容を一から新しく「書き直す」場合も、まずは、法務局に手続きの予約をとります。しかし、【1】のように一度遺言書を手元に戻してから再度保管申請をするのは二度手間になってしまいます。
そこで、【2】の場合は、法務局に行く前に、あらかじめ新しい遺言書を作成しておき、「古い遺言書の保管の撤回申請」と「新しい遺言書の保管申請」を同時に予約します。こうすることで撤回と保管申請の二つの手続きを一回で済ますことができます。なお、新しい保管申請には再度3,900円の手数料がかかります。
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公正証書遺言書を作成している場合の訂正方法
公正証書遺言を作成している場合、手元にある正本や謄本を訂正しても遺言書を訂正したことにはなりません。なぜなら、正本や謄本は単なる写しにすぎず、遺言書の原本は公証役場で保管されているからです。では、公正証書遺言を訂正したい場合、どのような手続きをとればいいのでしょうか?以下、公正証書遺言の一部を訂正する場合と古い遺言書を撤回し、一から全文を書き直す場合の方法について解説します。
【1】遺言書の一部を訂正したい場合
公正証書遺言の特定の箇所だけ(例:特定の財産の受取人だけ、遺言執行者だけ)を変更したい場合でも、元の遺言書には手を付けず、新しい遺言書(公正証書遺言または自筆証書遺言)を別途作成します(※自筆証書遺言で訂正することも可能です)。
新しい遺言書の中に「令和〇年〇月〇日作成の公正証書遺言の第〇条を以下の通り変更する」と記載することで、一部のみを訂正することができます。 ただし、一部だけの訂正は死後に「古い遺言書」と「新しい遺言書」をセットで読み解く必要があり、残された家族の手続きが複雑になりやすいため、あまりおすすめできません。
【2】古い遺言書を撤回し、一から全文を「書き直す」場合
この場合の方法は「【2】新たな遺言書で一から全文を「書き直す」際の注意点」でも解説しています。【1】の方法よりも費用はかかりますが、安全でおすすめな方法です。
新しく「公正証書遺言」を作り直すか、あるいはご自身で「自筆証書遺言」を作成し、その中で「令和〇年〇月〇日作成の公正証書遺言をすべて撤回する」と明記します。
なお、自筆証書遺言で公正証書遺言を撤回・書き直すことも法律上可能ですが、自筆証書遺言に不備があって万が一無効になった場合、古い公正証書遺言が効力を持ち続けてしまうリスクがあります。また、公証役場には古い公正証書遺言の原本が残るため、死後の混乱を防ぐ意味でも、新しく「公正証書遺言」を作り直すのが最も確実で安全です。
自筆証書遺言で書き直す場合は、古い公正証書遺言だけが発見されて執行されるトラブルを防ぐため、新しい遺言書を法務局の「遺言書保管制度」に預けておくことを強く推奨します。
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