死亡退職金とは?受取人の決まり方と相続税の非課税枠を徹底解説


保有資格:R7司法書士試験合格者(2026年中に司法書士事務所を開業予定)、行政書士、ファイナンシャルプランナー(2級・AFP未登録)
取扱予定業務:遺産承継(預貯金、相続登記など)・生前対策(遺言、任意後見、信託など)・民事裁判・離婚
死亡退職金とは
死亡退職金とは、会社などに勤めている方が在職中にお亡くなりになりになったときに、その遺族に対して支払われるお金です。
国家公務員の場合は国家公務員退職手当法に、地方公務員の場合は条例に死亡退職金に関する規定があります。したがって、故人が公務員だった場合はほぼ受け取ることができるといってよいでしょう。
一方、民間の場合、公務員と異なり、死亡退職金の支給根拠は法令ではなく就業規則中の退職金規定となります。勤め先が退職金規定を設けていない場合は、全く支給されないこともありますので注意が必要です。
死亡退職金の受取人
死亡退職金を遺族の誰が受け取ることができるかは、死亡退職金に関する規定がある場合とない場合で異なります。
【1】死亡退職金に関する規定がある場合
まず、死亡退職金に関する規定がある場合はその規定の定めに従います。
たとえば、労働基準法上の遺族補償の順位など、会社独自の規定を設けているケースが多く見られます。この場合、「1.配偶者、2.子、3.父母…」のように順位が決められており、先順位者がいればその人が全額を受け取り、後順位者は一切受け取ることができない(例:配偶者がいる場合、子は受け取れない)のが一般的です。一方、「民法上の法定相続分に応じて支給する」といった規定を設けている会社もあります。
いずれにしても、故人が在職中にお亡くなりになったときは、勤め先に死亡退職金に関する規定があるかどうか、あるとしてどのような規定になっているのか確認することが大切です。
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【2】死亡退職金に関する規定がない場合
次に、死亡退職金に関する規定がない場合は、死亡退職金は相続財産であって遺産分割の対象となるという考え方があります。この考え方に基づくと、遺産分割協議等によって死亡退職金の受取人となることに決まった人が受取人となります。
一方、死亡退職金に関する規定がないからといって、必ずしも死亡退職金が相続財産となるというわけではありません。過去には、ある法人が死亡退職金を理事長の妻に支給する決定をした事案で、当該死亡退職金は相続財産ではないとした判例(最判昭和62年3月3日)があります。もちろん、この場合、死亡退職金の受取人は妻となります。
死亡退職金は相続財産?
(法律上の)相続財産とは、故人がお亡くなりになったときにも持っていた遺産です。死亡退職金が相続財産にあたるかどうかの見極めは非常に重要です。なお、相続財産には法律上の相続財産と税務上の相続財産があり、以下は、法律上の相続財産にあたるか否かについての解説となります。
【1】死亡退職金が相続財産にあたる場合
死亡退職金が法律上の相続財産(遺産分割の対象)にあたる場合とは、主に次のようなケースです。
- 生前に退職しており、退職金の支給額が確定した後に死亡した場合(未支給の退職金)
- 退職金規程等で「退職金は遺産として扱う」など、被相続人の財産に帰属することが明記されている場合
です。
死亡退職金が相続財産にあたる場合は、死亡退職金は原則として遺産分割の対象となり、相続人間での話し合い(遺産分割協議)が必要となります。また、故人に借金があるなどの理由で相続放棄すると、死亡退職金も同時に放棄したことになってしまいます。
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【2】死亡退職金が相続財産にあたらない場合
次に、死亡退職金が相続財産にあたらない場合とは、一般的には、
- 死亡退職金に関する規定で受取人が指定されている場合(※「相続人に支給する」という規定の場合も、受取人固有の財産とみなされます)
- (規定がなくても)特定の人に支給することが慣例となっている場合
死亡退職金が相続財産にあたらない場合は、死亡退職金は受取人の固有の財産ということになります。したがって、遺産分割協議は必要ありません。また、相続放棄しても故人の相続財産を放棄しても死亡退職金は受け取ることができます(ただし、相続放棄をした人が死亡退職金を受け取る場合、後で述べる「500万円×法定相続人の数」の非課税枠を利用することはできず、全額が課税対象となります)。
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死亡退職金を受け取ると取り分が減る⁉
死亡退職金を受け取ると、他の遺産の取り分が減ってしまうのではないかと心配される方がいますが、結論から言うと原則として取り分は減りません。
これには「特別受益」という制度が関係しています。特別受益とは、一部の相続人が生前贈与などで特別に受けた利益のことです。不公平を防ぐため、この利益を遺産に足し戻して計算し、その人の取り分から差し引く仕組みがあります。
しかし、会社の規定等で受取人が決まっている死亡退職金は受取人の「固有の財産」とみなされます。そのため原則として特別受益にはあたらず、他の遺産(預貯金や不動産など)の遺産分割において取り分が減らされることはありません。
ただし例外もあります。死亡退職金が遺産総額に対して極めて高額であり、他の相続人との間に「著しい不公平」が生じると認められる特別な事情がある場合です。このようなケースでは例外的に特別受益に準ずるものとして扱われ、結果的に取り分が減る可能性があります。不公平かどうかは、金額や遺族の生活状況などを総合的に考慮して判断されます。
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死亡退職金は相続税の課税対象
このように、法律上は、死亡退職金が相続財産にあたるかあたらないかについては結論がわかれます。一方、税務上は相続財産です。正確には、死亡退職金はみなし相続財産にあたります。
みなし相続財産とは、本来の相続財産(法律上の相続財産)ではないものの、実質的にみると故人の相続財産と同視できる財産です。死亡退職金がみなし相続財産ということは相続税の課税対象となる可能性があります。
相続税の課税対象となる死亡退職金は「故人が死亡後3年以内に支給が確定した死亡退職金」です。3年を超えて支給された退職金は一時所得として所得税の課税対象となります。
もっとも、死亡退職金や生命保険金には以下のとおり非課税限度額が定められています。
非課税限度額=500万円×法定相続人の数
※ここでの『法定相続人の数』には、相続放棄をした人も人数に含めて計算します。
※死亡退職金の非課税枠と、生命保険金の非課税枠は「別枠」です。もし故人が生命保険にも加入していた場合、死亡退職金と死亡保険金のそれぞれで「500万円×法定相続人の数」の非課税枠を利用することができます。
たとえば、死亡退職金の額が1,500万円で法定相続人の数が4人の場合、死亡退職金より非課税限度額(2000万円=500万円×4)が大きいため、死亡退職金は非課税となります(相続税の課税価格には算入しません)。
一方、死亡退職金の額が非課税限度額より大きい場合は、各相続人が受け取った死亡退職金の額に応じて非課税限度額を振り分けます。各相続人の非課税限度額は、以下の計算式で振り分けます。
各相続人の非課税金額 = 非課税限度額 ×(その相続人が受け取った退職金額 ÷ すべての相続人が受け取った退職金の総額)
※注意:ここでの「すべての相続人が受け取った退職金の総額」には、相続放棄をした人が受け取った退職金額は含めずに計算します。
そして、受け取った死亡退職金から振り分けた限度額を差し引いて出た額が相続税の課税対象となります(相続税の課税価格に算入します)。
もっとも、死亡退職金が非課税限度額より大きい場合でも、トータルの課税価格が相続税の基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)の範囲内に収まる場合は相続税は課されません。
死亡退職金と弔慰金の違い
会社から死亡退職金とは別に「弔慰金」や「花輪代」が支給されることがあります。弔慰金は原則として相続税の対象外(非課税)です。ただし、一定額(業務上の死亡は給与の36ヶ月分、業務外は給与の6ヶ月分)を超える部分は、実質的に死亡退職金として扱われ、相続税の課税対象となるため注意が必要です。

保有資格:R7司法書士試験合格者(2026年中に司法書士事務所を開業予定)、行政書士、ファイナンシャルプランナー(2級・AFP未登録)
取扱予定業務:遺産承継(預貯金、相続登記など)・生前対策(遺言、任意後見、信託など)・民事裁判・離婚

