未支給年金とは?相続財産になる?請求できる遺族と手続きを解説

ご家族が亡くなった際、「故人が受け取れるはずだった年金はどうなるの?」と疑問に思う方は少なくありません。

年金受給者が亡くなった場合、本来受け取るべきだった未支給の年金を「未支給年金」と呼びます。この未支給年金は、実は「相続財産」には含まれず、遺産分割の対象外となる特別な性質を持っています。そのため、受け取れる遺族の範囲や手続き方法が通常の遺産相続とは異なります。

本記事では、未支給年金の基本から、受け取れる金額の目安、請求できる遺族の条件、そして具体的な手続きの流れまでを専門家がわかりやすく解説します。ご家族のもしもの時に迷わず手続きを進めるための知識として、ぜひ参考にしてください。

未支給年金とは

未支給年金とは、本来であれば故人(年金受給者)が受け取るべきところ、お亡くなりになったために受け取ることができなくなってしまった年金です。

なお、ここでいう年金とは国民年金や厚生年金などの公的年金のことです。個人年金などの私的年金の未支給分は含まれていませんので注意が必要です。

未支給年金はいくら?

年金は偶数月の15日(支給日が祝休日にあたる場合は直前の平日)に、支給月の前月と前々月の支給額の合計が受給者の指定口座に振り込まれます。たとえば、故人の年金額が月額10万円だった場合は、4月の支給日に2月分と3月分の合計20万円を受け取ることができます。

一方、未支給年金は故人がいつお亡くなりになったかで金額がかわります。

【1】偶数月にお亡くなりになった場合

①偶数月の前半にお亡くなりになった場合

たとえば、故人が4月5日にお亡くなりになったという場合は、2月分、3月分、4月分の年金を受け取ることができたのにお亡くなりになったということになります。したがって、未支給年金は30万円(=10万円×3)となります。なお、年金はその月の1日が始まった時点で月の満額を受け取ることができます。月の途中でお亡くなりになったからといて日割り計算はしません。

②偶数月の後半にお亡くなりになった場合

たとえば、故人が4月23日にお亡くなりになったという場合は、2月分と3月分は4月15日に故人の口座に振り込まれています。したがって、未支給年金は4月分のみの10万円となります。なお、2月分と3月分の年金は口座に振り込まれた時点で預貯金となるため、原則として相続財産(遺産分割の対象)となります。一方、あとで解説するとおり、未支給年金は相続財産ではありません。

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【2】奇数月にお亡くなりになった場合

①奇数月の前半にお亡くなりになった場合

たとえば、故人が5月5日にお亡くなりになったという場合は、6月の支給日に受け取ることができるはずであった4月分と5月分の合計20万円が未支給年金となります。

②奇数月の後半にお亡くなりになった場合

たとえば、故人が5月23日にお亡くなりになったという場合も、6月の支給日に受け取ることができるはずであった4月分と5月分の合計20万円が未支給年金となります。

未支給年金は相続財産ではない

相続財産とは、故人がお亡くなりになった時点で故人がもっていた財産です。年金は故人が国等に対して請求できる権利ですから、一見すると、本来故人が受け取ることができた未支給年金も相続財産ではないかとも思えます。

しかし、法律で、未支給年金は残された遺族の固有の権利と定められています。これは年金が年金受給者を含めた家族の生活を保障するためのお金であって、未支給年金は残された遺族のために支給されるべきとの考えに基づくものです。

未支給年金は遺族の固有の権利であることから相続財産ではありません。あとで解説するとおり、未支給年金の受給要件として「故人と生計を同じくしていたこと」が必要とされるのも、年金が残された遺族の生活を保障するためのものであるからです。

また、未支給年金が相続財産ではないということは、未支給年金は遺産分割の対象外ということを意味しています。未支給年金が遺産分割の対象外ということは、未支給年金を遺産分割の議題にあげる必要はないということになります。

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未支給年金を請求できる人

未支給年金を請求できるのは「故人と生計を同じくしていた遺族」です。ここで注意したいのは、「民法上の法定相続人」と「未支給年金を請求できる人」は必ずしも一致しないという点です。たとえ法定相続人であっても、生計を同じくしていなければ請求できません。一方、法定相続人でなくても、生計同一の要件を満たせば受け取れる可能性があります。

【1】故人と生計を同じくしてた

「故人と生計を同じくしていた」とは、以下のいずれかのケースに該当する場合をいいます。

  • 死亡日において遺族が故人と住民票上同一世帯に属していたとき
  • 死亡日において遺族が故人と住民票上世帯を異にしていたが、住所が住民票上同一であったとき
  • 死亡日において遺族と故人の住所が住民票上異なっていたが、次のいずれかに該当するとき
    (遺族が配偶者または子の場合)
    ●起居を共にし、かつ、消費生活上の家計を一つにしていたと認められるとき
    ●単身赴任、就学または病気療養等のやむを得ない事情により住所が住民票上異なっていたが、次のような事実が認められ、その事情が消滅したときは、起居を共にし、消費生活上の家計を一にしたと認められるとき
     ・遺族から故人に対して、または故人から遺族に対して、生活費、療養費等の経済的援助が行われていたこと
     ・故人との間に定期的に音信、訪問があったこと
    (遺族が父母、孫、祖父母、兄弟姉妹またはその他の3親等内の親族の場合)
    ●起居を共にし、かつ、消費生活上の家計を一つにしていたと認められるとき
    ●遺族から故人に対して、または故人から遺族に対して、生活費、療養費等について生計の基盤となる経済的援助が行われていたと認められるとき

【2】遺族

故人と生計を同じくしていた「遺族」とは以下の人を指します。

①配偶者
②子
③父母
④孫
⑤祖父母
⑥兄弟姉妹
⑦上記以外の3親等の親族

①~⑦は受け取ることができる順番を意味しています。先順位の遺族が未支給年金を請求できるときは後順位の遺族は未支給年金を請求することができません。たとえば、①配偶者が未支給年金を請求できる場合は、②以降の遺族は請求できません。同じ順位の人が2人以上いる場合は、1人が行った請求は全員のために全額請求したもの、1人に対して支給された年金は全員に対して支給されたものとみなされます。

未支給年金の請求方法

未支給年金の請求方法は以下のとおりです。

【1】請求先

未支給年金の請求先は年金の種類によって異なります。

  • 厚生年金→最寄りの年金事務所または街角の年金相談センター
  • 国民年金→市区町村役場の年金窓口

【2】必要書類

請求にあたって基本的な必要書類は以下のとおりです。個々の状況により必要書類は変わりますので、あらかじめ請求先に確認しておくと安心です。

書類の種類用途取得方法
未支給【年金・保険給付】請求書未支給年金の請求を行うための基本となる申請書年金事務所、市区町村役場の窓口、または日本年金機構のホームページからダウンロード
故人の年金手帳、年金証書または基礎年金番号通知書故人の基礎年金番号や年金の受給状況を確認するため故人の遺品や保管書類の中から探して用意する
預金通帳または貯金通帳(未支給年金の振込み先となる口座)指定した口座が間違いなく請求者本人のものであるか確認するため請求者(遺族)本人が普段利用している手持ちの通帳を用意する
戸籍謄本など(故人と請求者との身分関係を証明できる書類)故人と請求者(遺族)の法的な親族関係(続柄)を証明するため本籍地の市区町村役場窓口、郵送、またはマイナンバーカードを利用したコンビニ交付などで取得
住民票(世帯全員・本籍地・続柄記載のあるもの)故人と請求者が同居していたことなどを証明するため住民登録のある市区町村役場窓口、郵送、またはコンビニ交付などで取得
故人の住民票除票(※世帯全員の住民票で故人が確認できない場合)故人の死亡の事実および最後の住所地を証明するため故人の最後の住所地だった市区町村役場の窓口や郵送で取得
生計同一関係の書類(※遺族と故人の世帯・住所が異なる場合)別居していても、生活費の援助等により生計を同じくしていた事実を証明するため年金事務所等で専用の「生計同一関係に関する申立書」を入手し作成(場合によっては民生委員などの第三者の証明が必要)
身分証明書(運転免許証など窓口に行く方のもの)窓口で手続きを行っている人物の本人確認を行うため手続きに行く本人が持参する(運転免許証、マイナンバーカードなど)

【3】請求した後の流れ

未支給年金を請求したからといってすぐに未支給年金が支給されるわけではりません。請求した後、支給の決定が出た場合は年金事務所等から「未支給【年金・保険給付】決定通知書」が発せられますが、この通知が届くまでに3か月から4か月はかかります。また、通知が届いてから指定の口座に振り込まれるまでにさらに50日ほどかかる予定です。

【4】年金受給の停止手続きも忘れずに

故人が年金を受け取っていた場合は、年金受給を停止する手続き(年金受給権者死亡届の提出)が必要です。故人が亡くなったから、未支給年金を請求したからといって、勝手に支給が止まるわけではありません。支給を停めるには故人の遺族が代わりに手続きする必要があります。手続きが遅れてしまったために過分に支給された年金は後で返還しなければなりません。未支給年金の手続きとあわせて行っておきましょう。

【補足】故人の準確定申告が必要になる場合も
故人が生前に公的年金を一定額以上受け取っていた場合や、年金以外の所得があった場合、相続人は故人に代わって死亡日から4か月以内に確定申告(準確定申告)を行わなければならないケースがあります。未支給年金の手続きと併せて、準確定申告の要否も確認しておくと安心です。

未支給年金Q&A

最後に、未支給年金に関してよくある疑問にお答えします。

Q.相続放棄しても未支給年金を受け取ることはできますか?

A.受け取ることはできます。

未支給年金は相続財産ではなく(請求する遺族の固有の財産であって)、相続放棄の対象とはならないからです。

Q.未支給年金に相続税はかかりますか?

A.かかりません。

未支給年金は税法上の相続財産でもないからです。ただし、未支給年金は一時所得として扱われますから、未支給年金の額やその他の一時所得の内容によっては、確定申告して所得税を納めなければならないかもしれません。なお、一時所得には最高50万円の特別控除があります。そのため、受け取った未支給年金(およびその他の一時所得)の合計が50万円以下であれば、原則として税金はかからず確定申告も不要です。年金の繰り下げ受給などで高額な未支給年金を受け取った場合は注意しましょう。

Q. 未支給年金の請求に期限(時効)はありますか?

A. あります。

5年で時効になります。 未支給年金を受け取る権利は、本来の年金支払日の翌月の初日から起算して5年で時効を迎えます。期限を過ぎると受け取れなくなるため、早めの手続きをおすすめします。

Q. 「未支給年金」と「遺族年金」は違うものですか?

A. 違う制度ですが、同時に手続きが可能です。

未支給年金は「故人が受け取るはずだった年金」であるのに対し、遺族年金は「残された遺族の生活を保障するための年金」です。要件を満たしていれば両方受け取ることができ、年金事務所で同時に手続きを行うのが一般的です。

Q. 死亡後に故人の口座に年金が振り込まれました。引き出してもいいですか?

A. 「亡くなった月の翌月以降」の年金は引き出さず、そのまま保管(または返還)してください。

年金は亡くなった「月」の分まで支給されます。ここまでの年金は未支給年金として受け取る権利があります。一方、「死亡月の翌月以降」の分には受け取る権利がありません。 後日、年金事務所から「(「誤って振り込んだ年金を返してください」という)返納通知書」が届くため、原則として返還手続きが必要です。ただし、すでに口座が凍結されている場合は、年金機構と銀行の間で直接戻す手続きが行われることもあります。念のため、手続きを行う年金事務所や金融機関に事前に確認のうえ指示に従いましょう。

Q. 請求できる遺族が誰もいない場合はどうなりますか?

A. 誰にも支給されず、国庫(国の金庫)に入ります。

未支給年金は請求できる「遺族の固有の財産」です。そのため、要件を満たす「生計を同じくしていた3親等内の親族」が一人もいない場合は、たとえ別居している実の子どもであっても代わりに受け取ることはできません。請求権者が誰もいないため、最終的に未支給年金を受け取る権利は消滅してしまいます。