株の相続で迷わない!名義変更の手続きの流れと押さえるべきポイント

株等を相続するまでの流れ

株などの有価証券(公社債、投資信託なども含む)を相続するまでの流れは以下のとおりです。

【ステップ1】相続人を調査し確定させる
【ステップ2】故人の株等を把握する
【ステップ3】株等を評価する
【ステップ4】株等の分け方について話し合う
【ステップ5】相続人の証券口座に株等を移す

なお、相続全体の手続きについては以下の記事で詳しく解説しています。

【ステップ1】相続人を調査し確定させる

まず、遺言書がない場合は、相続人となる人を調査し、確定させる必要があります。【ステップ4】で遺産の分け方に関する話し合いを行いますが、その話し合いには相続人全員が関与していなければならないからです。相続人を確定させるには、まずは故人や相続人の戸籍を集めていく必要があります。

【ステップ2】故人の株等を把握する

相続人の調査と並行して遺産の調査も進めます。ここでは遺産の中でも有価証券の調査方法について解説します。

証券会社等を把握する

故人が取引をしていた証券会社等がわからない場合は、証券会社等から「取引残高報告書」が送られてきていないか確認しましょう。見当たらない場合はインターネットで取引をしている可能性があります。故人のパソコンやスマートフォン、メールなどに手がかりがないか確認しましょう。

それでも手がかりがない場合は、株式会社証券保管振替機構(通称「ほふり」)に対して、故人の登録済加入者情報の開示請求を行うことが考えられます。故人が取引をしていた場合は、取引をしていた証券会社等の口座を確認できます。ただし、保有銘柄や株数については、別途各証券会社等に対して照会する必要があります。

残高証明書を請求する

故人が取引をしていた証券会社等がわかったら、その証券会社等に対して「残高証明書」の発行を依頼します。この残高証明書は、あくまで故人がお亡くなりになった時点での口座内に保有していた株等を証明するものでなければなりません。

故人が株券を現物で保有していた場合などは、株式名義書換代行機関となっている信託銀行等(株主名簿管理人)に残高証明書の発行を依頼します。株主名簿管理人である信託銀行等は、故人が株主になっていた会社のHPや配当時に送られてくる配当金計算書で確認できます。

【ステップ3】株等を評価する

証券会社等に残高証明書を発行してもらったら、残高証明書や添付されている参考資料をもとに株等を評価します。評価方法は株、公社債、投資信託、それぞれで異なります。また、同じ株でも上場株式と非上場株式では異なります。ここでは比較的取り扱いの多い上場株式と投資信託の評価方法について解説します。

上場株式の評価方法

上場株式の評価額は「1株あたりの株価×株数」で算出します。株価は日々変動するものであるため、「1株あたりの株価」は、以下の①から④までの最も低い物を使ってよいことになっています。

①から④はご自分で調べることもできますが、証券会社等が作る資料を見た方が楽です。残高証明書の発行を依頼する際、資料をもらえるのか念のため確認しておくとよいでしょう。

①課税時期(※)の最終価格 ※相続開始日(死亡日)
②課税時期の属する月の、毎日の最終価格の月平均額
③課税時期の属する月の前月の、毎日の最終価格の月平均額
④課税時期の属する月の前々月の、毎日の最終価格の月平均額

なお、評価額そのものを計算してくれる証券会社等もあります。残高証明書の発行を依頼する際、評価額も書いた証明書を発行してくれるのか併せて確認しておくとよいでしょう。

投資信託の評価方法

投資信託の評価方法は、「日々決算型の投資信託」「上場している投資信託(上場投資信託(EFT)、上場不動産投資信託(REIT))」、「上場していない投資信託(一般投資信託)」によって異なります。

「上場している投資信託」は中途換金できないため、金融商品取引所で売買して換金します。そのため、その評価方法は上場株式と同じです。一方、「上場していない投資信託」の評価額は以下の方法で算出します。

上場していない投資信託の評価額

=①「1口あたりの基準価額×口数」-②「源泉徴収される所得税に相当する額」-③「信託財産留保額及び解約手数料」

基準価額とは投資信託の時価です。①は残高証明書で、②は残高証明書のほか解約後に証券会社等から送られてくる取引残高報告書、③は残高証明書のほか目論見書などで確認することができます。

【ステップ4】株等の分け方について話し合う

相続人の調査を経て相続人を確定させ、さらに有価証券も含めた遺産の調査を経て遺産を確定させたら、いよいよ話し合いです。まずは、どうやって分けるかを決める必要があります。

【分け方①】株等を売却してお金を分け合う

一つ目の方法としては、株等を売却して得たお金を相続人同士で分け合う方法です。もっとも、故人名義の証券口座に入れたままでは売却できないため、いったん特定の相続人の証券口座に株等を移し、その相続人が売却等の手続きをとる必要があります。この方法をとる場合でも遺産分割協議書にその旨を明記しておいた方がよいでしょう。

【分け方②】特定の相続人が株等を引き継ぐ

二つ目の方法としては、特定の相続人が株等を相続する方法です。【分け方①】と異なり、特定の相続人が株等を相続して終わりです。株等の処分は相続した相続人に委ねられます。もっとも、この方法によると、たとえば株価が遺産分割協議時に比べて大きく変動した場合、相続人間で不公平が生まれてしまう可能性があります。よって、特に拘りがない場合は【分け方①】の方法によった方が無難といえます。

【分け方③】特定の相続人が株を引き継ぎ、他の相続人に代償金を払う(代償分割)

三つ目の方法としては、特定の相続人が株等をそのまま相続する代わりに、他の相続人に対して自分のお金(現金)を支払って精算する方法です。これを「代償分割(だいしょうぶんかつ)」と呼びます。

【分け方②】のように株等は手元に残したい(売却したくない)ものの、他に預貯金などの遺産が少なく、そのままでは相続人間に不公平が生じてしまうようなケースでよく利用されます。

ただし、この方法をとるためには、株を引き継ぐ相続人に「他の相続人へ支払うための十分な自己資金(現金)」があることが前提となります。また、後々のトラブルを防ぐため、遺産分割協議書には「誰が、誰に、いつまでに、いくらの代償金を支払うのか」を明確に記載しておく必要があります。

【ステップ5】相続人の証券口座に株等を移す

話し合いにより株等の分け方を決めたら、以下の手順で手続きを進めます。

①株等を相続する相続人名義の証券口座を開設する
(※原則として、故人が取引していたのと同じ証券会社に、相続人名義の口座を開設する必要があります(口座開設後に、別の証券会社へ移管することは可能です)。)
②証券口座に株等を相続するための書類を郵送する
③相続人の口座に株等が移される
(ここまで【分け方①・②】共通。以降【分け方①】のみ)
④相続人が証券会社に株等の売却を指示する
⑤株式の売却益が相続人の指定口座に振り込まれる
⑥遺産分割協議の内容に基づき、相続人が各相続人の口座にお金を振り込む

株等を引き継ぐ相続人が証券口座をもっていない場合は相続人名義の証券口座を開設する必要があります(①)。相続人が故人の口座を引き継ぐことはできないため注意が必要です。

口座を開設したら株等を移すための依頼書や遺産分割協議書、印鑑証明書などの必要書類を証券会社に送ります(②)。不備がなければ依頼書で指定した証券口座に株等が移されます(③)。

【分け方②】ではここで終わりですが、【分け方①】では、さらに④から⑥の手続きが必要です。ただ、株等の売却は電話やネットなどでもできますので、それほど難しい手続きではありません。

株の相続に関する注意点

最後に、株(上場株式)の相続で注意していただきたい点について解説します。

単元未満株の見落とし

単元未満株とは、1単元(100株などの銘柄ごとに定められている最低売買単位の株数)に満たない株式のことです。株を長年保有していると株の分割や合併などにより単元未満株が生じることが多いです。単元未満株は残高証明書には記載されておらず見落としがちです。

「配当金計算書」や「配当金支払通知書」、「株主総会招集通知書に同封されている議決権行使書」には単元未満株も含めた株数が記載されています。これらの書類がないか確認してみましょう。見つからない場合は、株式名簿管理人である預託銀行等に単元未満株の有無を照会します。

単元未満株は通常の株と同じく相続人の証券口座に移すこともできますが、相続人から会社に対して単元未満株を買い取ってもらうよう請求することもできます。

未受領配当金の見落とし

単元未満株のほか見落としがちなのが未受領配当金です。未受領配当金とは、配当金を受け取ることができる権利を取得したものの、故人がまだ受け取っていない配当金です。未受領配当金も遺産分割の対象です。

故人が配当金の受け取り方法として口座振込みにしていた場合は見落とす可能性は低いですが、金融機関の窓口で配当金領収証により現金で受け取る方法を選んでいたときは見落とす可能性があります。

未受領配当金は当該株式の株式名簿管理人である預託銀行等に照会を行うことなどで調査が可能です。多くの企業で配当金を受け取ることができる期限(除斥期間:3年~5年)を設けていますので注意が必要です。

相続税の申告には期限がある

最後に、相続税の申告期限にも注意が必要です。相続税の申告期限は故人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。

遺産分割協議や株等を相続人の証券口座に移すこと自体には期限はありませんが、その前提としての株等の評価は相続税の申告のために行うものです。

故人がお亡くなりになり、落ち着いてきたらはやめに遺産調査に取りかかり、遺産があれば評価をした上で相続税の申告が必要かどうか見極める必要があります。

NISA口座の非課税枠は相続できない

故人がNISA口座(非課税口座)で保有していた株でも、非課税の恩恵(非課税枠)をそのまま相続人が引き継ぐことはできません。NISAはあくまで口座名義人本人に付与された制度であるため、相続が発生した時点で非課税の取り扱いは終了し、相続人の一般口座や特定口座(課税口座)へ移管される点にご注意ください。

ただし移管される際、株式の「取得単価」は故人が購入したときの価格ではなく、「故人が亡くなった日の終値(時価)」にリセットされます。つまり、故人の生前にどれだけ株価が値上がりして利益が出ていたとしても、死亡日までの値上がり益に対しては所得税(譲渡益税)はかかりません。

相続人の課税口座へ移管された後に株式を売却した場合は、「故人が亡くなった日の時価」からさらに値上がりした部分のみが課税対象となります。NISA口座内の株を移管するには、通常の相続手続きに加えて証券会社所定の書類(非課税口座内上場株式等移管依頼書など)が必要になることが多いため、はやめに証券会社へ確認しておくと安心です。

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