相続時の「寄与分」はどう決まる?具体的な計算方法と必要資料まとめ

寄与分とは?

相続人の中に、被相続人の財産の増加や維持に対して特別の寄与(貢献)をした人がいるときは、相続分の計算において、本来の相続分にその寄与に相当する額を加算します。この「寄与に相当する額」のことを寄与分といいます。

たとえば、父・母・子(長男・次男)の4人家族で、父は農業を営んでいましたが、高齢でそろそろ跡継ぎをと考えていました。家族の話し合いの結果、長男が仕事を辞めて実家に帰り親の農業を手伝うことになり、その後、長年にわたり、農業を手伝うことになりました。

そうしたところ、父が亡くなりました。この場合、各相続人の相続分は寄与分を考慮しなければ母が2/4、長男が1/4、次男も1/4です。しかし、長男が長年にわたり父の財産の増加・維持に貢献してきたにもかかわらず、次男と同じ相続分とするのは不公平にも思えます。

そこで、長男が長年にわたり父が営む農業に従事してきたことを考慮し、長男の1/4の相続分に一定の額を加算しようというのが寄与分という制度です。このように、寄与分は、相続人(長男)の特別の寄与を考慮し、相続人間の実質的な公平を図るための制度といえます。

特別受益・特別寄与との違い

寄与分と似た制度として特別受益、特別寄与がありますので、ここで簡単に解説します。

【1】特別受益

特別受益とは、相続人が、被相続人の死後、遺言により受けた贈与、あるいは生前に被相続人から婚姻・養子縁組・生計の資本として受けた贈与のことです。特別受益についても加味しなければ相続人間に不公平が生じるため、特別受益を受けた相続人については特別受益にあたる価額を差し引く計算をします。

【2】特別寄与

特別寄与とは、相続人以外の親族(息子の妻など)が、被相続人に対して特別の寄与をしたときに、相続人に対して、その寄与に応じた額の金銭の支払いを請求することができる制度です。寄与分は相続人のみが主張できるのに対して、特別寄与は相続人以外の人が相続人に対して金銭を請求する点が大きな違いです。

なお、特別寄与料の請求には期限があり、「特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6ヶ月以内」、または「相続開始の時から1年以内」に行う必要がありますので注意が必要です。

寄与分を受けるための条件

寄与分が認められるには、①相続人であること、②被相続人の財産の維持・増加について貢献したこと、③特別の寄与をしたこと、④無償性があること、⑤一定期間以上の継続性があること、が必要と考えられています。

①相続人であること

まず、寄与分を受けるには相続人であることが必要です。寄与分は相続分を修正する制度のため、相続分がある相続人であることが前提とされているからです。したがって、内縁の妻、被相続人の子の配偶者、相続欠格者、廃除された人は、たとえ特別の寄与をしていたとしても寄与分を受けることはできません。

②被相続人の財産の増加・維持について貢献したこと

次に、③の特別の寄与によって、被相続人の財産を増加させることに貢献したこと、あるいは、被相続人の財産の減少を防いだ(維持した)といえることが必要です。特別の寄与をした場合でも、そのことが被相続人の財産の増加・維持につながっていない場合は寄与分を受けることができません。

③特別の寄与をしたこと

次に、被相続人の財産の増加・維持について特別の寄与をしたことが必要です。あくまで「特別の」寄与である必要があります。したがって、夫婦間の協力扶助義務や、親族間の扶養義務の範囲内とされる「週末に実家に通って身の回りの世話をした」程度の寄与では、特別な寄与をしたとはいえません。

④無償性があること

次に、特別の寄与に対して、被相続人から給与や報酬などの対価を受け取っていないことが必要です。すでに対価を受け取っている場合にまで寄与分を認めてしまうと、さらに相続人間の不公平を生んでしまうためです。仮に対価を受け取っている場合でも、対価が通常の給与水準と比べて極端に低いものである必要があります。

⑤一定期間以上の継続性があること

最後に、特別の寄与は数日や数週間といった一時的なものでなく、相当期間にわたった継続的なものである必要があります。一時的な貢献では、被相続人の財産の増加・維持に貢献したとはいえませんし、特別の寄与ともいえないからです。どの程度の期間が必要となるかは寄与の種類などによって異なります。

寄与分を受けやすい5つの類型

寄与分を受けるための条件を満たしやすい類型としては、以下の5つをあげることができます。

  • 療養看護型
  • 家事従事型
  • 金銭等出資型
  • 扶養型
  • 財産管理型

【1】療養看護型

療養看護型は、病気や高齢で要介護状態となった被相続人を、長期間にわたって無償で介護した、というようなケースです。介護によってヘルパー代や施設費用などの諸費用を浮かせ、被相続人の財産の維持に貢献したと評価されます。期間については、週3日以上、1年以上が必要と言われています。

【2】家事従事型

家事従事型は、被相続人が営む農業、漁業、飲食店などの自営業などを、長期間にわたって無償または極めて低賃金で手伝い、被相続人の財産の維持・増加に貢献したというケースです。実務上は10年以上の従事期間があることが望ましいと言われています。

【3】金銭等出資型

金銭出資型は、被相続人が土地を購入する、あるいは建物のリフォームをするにあたり、その資金の大部分(9割以上)を相続人が出資していたというようなケースです。なお、被相続人が経営していた会社への資金援助は寄与にはあたりません。寄与の対象が被相続人ではなく会社(法人)の財産だからです。

【4】扶養型

扶養型は、長年にわたり、無償で看護や介護に従事していたというケースです。なお、被相続人の隣家に住んでいた相続人が、平成元年から平成14年までの間は被相続人の日常的な世話を、平成14年に被相続人の認知症が顕著になって以降は介護を献身的に行ってきたという事案で、平成14年以降のみ寄与を認めたという裁判例(大阪家庭裁判所 平成19年2月8日審判)があります。

【5】財産管理型

財産管理型は、たとえば、被相続人が管理していたアパートのクレーム対応、軽微な修繕の対応、賃料回収などを相続人が代わりに行ったというようなケースです。管理会社に払うべき委託費用の支払いを免れて、被相続人の財産の維持に貢献したと評価できるためです。

寄与分の決め方

寄与分をいくらにするかは、まずは相続人の話し合いで決めます。しかし、寄与分が認められると他の相続人の相続分は減ることから、寄与分を認めたくないという相続人が出てくることも想定されます。そこで、話し合いで寄与分を主張したい場合は、他の相続人が寄与分を認めざるをえないような説得力のある資料をあらかじめ集めておくことが必要です。その上で、寄与分の主張が通りそうな場合は自分で金額を計算し、話し合いの場で提示していくことになります。

【1】資料を集める

まずは、相続人で話し合いをする前に、寄与分を主張する際に使う資料を集めて整理しておきます。以下、それぞれの型に応じた資料を紹介しますので参考にしてください。

  • 療養看護型
資料証明の対象
被相続人の診断書・カルテなどの医療記録介護の必要性
要介護認定通知書介護の負担の程度
介護日誌介護への専従性、継続性
介護サービス等の連絡ノート、ヘルパーの利用記録公的サービスの利用頻度等
医療機関・介護施設発行の領収書同上
  • 家事従事型
資料証明の対象
寄与者の確定申告書、給与明細書、源泉徴収票無償性、対価の廉価性
被相続人の確定申告書、家業の税務申告書、会計帳簿専従性、家業への関与の程度
勤務実態のわかる記録(タイムカード、業務日報、業務メール、日記など)家業への貢献度、継続性
  • 金銭等出資型
証拠証明の対象
寄与者の通帳、振込通知書、振込明細書お金の出所、出所先
被相続人の通帳、家計簿寄与者からのお金の授受、支払先
不動産の売買契約書、登記簿、増改築の明細書寄与したお金が被相続人の財産の維持・増加に寄与したこと
  • 扶養型
証拠証明の対象
寄与者・被相続人の通帳仕送りの事実
家計簿寄与したお金で被相続人の財産が維持されていたこと
被相続人の診断書被相続人だけでは生活できなかったこと
  • 財産管理型
証拠証明の対象
賃貸借契約書、立退き交渉記録、固定資産税等の領収書寄与者が所有者の事務を代行していたこと
通帳不動産の管理に伴う入出金の記録

⚠資料がすべて揃わなくても諦めない
昔のことで領収書などの客観的な証拠が完璧に揃わない場合でも、当時のメモ、日記、親族の証言の積み重ねなどが評価されるケースもあります。

【2】寄与分の金額を計算する

資料を集め寄与分の主張ができると判断できたら、次は、寄与分の金額を計算します。法律で定められた計算式があるわけではありませんが、家庭裁判所の調停や審判では、以下で紹介する計算式が目安として用いられています。そこで、まずはこの計算式に沿って寄与分の金額を計算してみるとよいでしょう。

①療養看護型

療養看護型では、介護ヘルパーに依頼した場合の費用をベースに計算するのが一般的です。介護報酬相当額(日当)は、概ね5,000円~8,000円(ケースによっては10,000円)です。親族間の助け合い(扶養義務)の範囲とみなされる分は一定割合(裁量割合)として割り引いて計算します。

寄与分の額=介護報酬相当額(日当)×介護日数×裁量割合(0.5~0.8程度)

②家事従事型

家事従事型では、家業を無償、あるいは極めて低い賃金で手伝っていた場合、本来なら支払われていたはずの賃金をベースにします。被相続人と同居しており、被相続人に生活費を負担してもらっていた場合は、その生活費分(裁量割合)が差し引かれるのが一般的です。

寄与分の額=賃金センサス(統計上の平均賃金)などに基づく年収×従事年数×裁量割合

③金銭等出資型

金銭等出資型では、被相続人へ援助した金額そのものがベースとなります。ただし、不動産の購入資金などを出した場合は、購入時の金額ではなく「相続開始時の不動産評価額」を基準に計算することが多くなります。

寄与分の額=「援助した金額」または「現在の財産評価額×出資割合」

扶養型

扶養型では、実際に仕送りした金額や、負担した生活費・医療費などの合計額から、親族としての一般的な扶養義務の範囲とされる額を差し引いて計算します。

寄与分の額=負担した金額(仕送りの額など)の合計ー通常の扶養義務に基づく負担額

④財産管理型

財産管理型では、アパート管理などを代行していた場合、本来なら管理会社や専門家(第三者)に支払うはずだった報酬・手数料が目安となります。

寄与分の額=第三者に委託した場合の管理報酬・手数料の相当額

【3】相続する額を計算する

寄与分の金額を計算したら、次は、以下の手順で各相続人が実際に相続する額を計算します。ここでは、「X(被相続人)・Y(Xの配偶者)・A(長男)・B(次男)の4人家族で、Xに4,000万円の相続財産があり、Bに800万円の寄与分がある」というケースの相続額について計算してみたいと思います。

【手順①】みなし相続財産を算出する

まず、みなし相続分を算出します。みなし相続財産とは、被相続人の相続財産の価額(4,000万円)から寄与分の額(800万円)を控除して算出した額です。したがって、今回のみなし相続財産は、3,200万円(=4,000万円ー800万円)となります。

【手順②】具体的な相続分を算出する

次に、具体的な相続分を算出します。具体的な相続分は、みなし相続財産に法定相続分または指定相続分(遺言によって指定された相続分)をかけて算出します。今回は指定相続分ではなく、法定相続分に従います。法定相続分は、Yは4分の2、Aは4分の1、Bは4分の1です。したがって、具体的な相続分は以下のとおりとなります。

Y=1,600万円=3,200万円×2/4
A= 800万円=3,200万円×1/4
B= 800万円=3,200万円×1/4

【手順③】寄与分の金額を加える

最後に、寄与者については、【手順②】の具体的な相続分に寄与分の金額を加えます。今回は、Bが寄与者ですので、Bの具体的な相続分(800万円)に寄与分の金額(800万円)を加えます。すると、最終的な相続額はYが1,600万円、Aが800万円、Bが1,600万円となります。

なお、Bの寄与分が認められない場合の相続額はYが2,000万円(=4,000万円×2/4)、Aが1,000万円(=4,000万円×1/4)、Bが1,000万円(=4,000万円×1/4)です。寄与分が認められる場合は、AとBの相続額が減っていることがおわかりいただけると思います。

【4】話し合いで金額を提示する

資料を揃え、具体的な相続額を計算できたら、いよいよ他の相続人との話し合い(遺産分割協議)の場で金額を提示します。寄与分が認められると他の相続人の取り分が減るため、切り出し方ひとつで話し合いがこじれてしまうことも少なくありません。円満に話し合いを進め、ご自身の主張を受け入れてもらうため、以下の3つのポイントを押さえておきましょう。

①感情論ではなく「客観的な事実」として伝える

「私が一番苦労した」「夜も眠れずに介護した」といった感情的な主張は、他の相続人の反発を招きがちです。 「これだけの期間、これだけの介護をして、これだけの費用を節約できた」という事実を、事前に用意した「資料」と「計算式」をセットにして冷静に提示しましょう。数字の根拠があることで、相手も「それなら仕方ないか」と納得しやすくなります。

②他の相続人への配慮と感謝を忘れない

寄与分を主張する際は、「自分だけが頑張った」という態度を出さないことが大切です。 たとえば、「みんなも遠方から気にかけてくれて感謝している。その上で、私が実家でつきっきりで対応した分の負担について、このように考慮してもらえるとありがたい」といったように、他の相続人を尊重する言葉を添えるだけで、相手の受け止め方は大きく変わります。

③譲歩の余地を残しておく

話し合いの前にあなたが計算して出した相続額は、あくまで裁判所の基準に沿った目安でしかありません。 話し合いをスムーズにまとめるためには、提示した金額に固執しすぎず、相手の意見や事情も聞きながら「少し譲歩する(端数をカットする、裁量割合を少し下げるなど)」柔軟な姿勢を持っておくと、最終的な合意に至りやすくなります。

【5】話し合いがまとまらない場合は?

もし、相続人間の話し合いでどうしても合意が得られない場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立て、調停委員を交えて話し合いを続けることになります。調停でも合意に至らない場合は「遺産分割審判」の手続きに自動的に移行します。

調停や審判では相続人以外の第三者も関与するため、その第三者を説得するだけの材料(資料)が協議と比べてより重要となってきます。その意味でも、これまで解説した資料の収集と寄与分の計算をあらかじめ行っておくことは、ご自身の主張を通すための非常に大きな強みとなります。

【注意】遺産分割における期限(10年ルール)について

令和5年(2023年)4月1日の民法改正により、相続開始から10年を経過した後に遺産分割を行う場合、原則として寄与分や特別受益の主張ができなくなりました。 法定相続分での画一的な分割となってしまうため、寄与分をしっかりと主張したい場合は、早めに遺産分割協議を進める(または家庭裁判所へ申し立てる)ことが非常に重要です。

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