相続放棄申述受理証明書の取得方法・書き方!本人以外の手続きもわかりやすく解説

相続放棄申述受理証明書とは?

相続放棄申述受理証明書とは、家庭裁判所が申述人(相続放棄を申述した(申し立てた)人)による相続放棄の申述を受理したことを証明する、家庭裁判所が発行する証明書です。

相続放棄の手続きは「①家庭裁判所に対する相続放棄の申述→②家庭裁判所からの照会・回答→③裁判所の申述の受理(=相続放棄成立)→④裁判所による相続放棄申述受理通知書の発行」という流れで進みます。

相続放棄申述受理証明書が発行される状態であるということは上の③の段階、すなわち、相続放棄が成立したということでもあります。したがって、相続放棄申述受理証明書は、相続放棄が成立したことを証明する証明書といってもよいでしょう。

相続放棄申述受理通知書との違い

先ほど、相続放棄の手続きの流れの箇所で、④において家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」という書類が発行されるという説明をしました。相続放棄申述受理証明書と言葉は非常に似ていますが、以下のとおり、いくつか違いがあります。

発行される目的とタイミング

相続放棄申述受理通知書は、家庭裁判所で相続放棄の申述が受理されたことを申述人に通知するために、一度だけ申述人宛に郵送される書類です。受理された後、自動的に郵送されてきます。

一方、相続放棄申述受理証明書は、相続放棄が成立した事実を第三者に対して公的に証明するための書類です。こちらは自動的に郵送されるわけではなく、裁判所に申請してはじめて発行されます。

再発行の可否と取得できる人

相続放棄申述通知書はあくまで1回限りの通知であるため、万が一紛失してしまっても再発行されません。また、通知されるのは相続放棄の申述をした申述人です。

一方、相続放棄申述受理証明書は、1通150円の手数料(収入印紙)を納めれば、何度でも取得が可能です。また、申述人だけでなく、一定の条件を満たしている利害関係人でも取得できます。

各種手続きでの利用の可否

不動産の相続登記(名義変更)や、金融機関での預貯金の手続き、被相続人の借金の債権者に対して「相続放棄をした」と主張する場合など、第三者に対して相続放棄の事実を証明する必要があるときは、原則として相続放棄申述受理証明書の提出が必要です。

相続放棄申述受理通知書は申述人宛の通知書に過ぎないため、法務局での相続登記手続きなどには使用できない点に注意が必要です(※一部の金融機関の手続きでは通知書のコピーで認められるケースもあります)。

【相続放棄申述受理「通知書」と「証明書」の比較表】

比較項目相続放棄申述受理通知書相続放棄申述受理証明書
主な目的申述人への手続き完了の通知のため第三者へ相続放棄の事実を公的に証明するため
発行のタイミング相続放棄申述の受理後、裁判所から一度だけ自動で郵送申請者が交付申請を行った時に都度発行
再発行の可否不可可能(何度でも発行できる)
取得できる人申述人のみ申述人、および利害関係人(他の相続人や債権者など)
発行にかかる費用無料1通につき 150円(収入印紙)
公的な手続きでの利用原則不可(※一部金融機関等は例外あり)可能(相続登記や債権者への提示などに必須)

本人(申述人)が相続放棄申述受理証明書を必要とするケース

相続放棄した本人(申述人)自身が相続放棄申述受理証明書を必要とするのは、主に以下のようなケースです。

  • 被相続人(故人)の借金の督促を受けたとき
    被相続人に借金や未払い金があり、金融機関や貸金業者などの債権者からあなた宛てに支払いを求められた場合です。「自分は相続放棄をしたので、一切の支払い義務はありません」と主張するために、証明書の提示を求められることがあります。なお、中には相続放棄申述受理通知書を相続放棄申述受理証明書の代わりとして認めてくれる債権者もいます。
  • 他の相続人が相続手続きを行うとき
    自分が相続放棄をしたことで、銀行口座の解約手続きを進めたりするケースです。金融機関の窓口で「この人は相続放棄をしたので相続人ではありません」と証明するために、手続きを進める他の相続人から「証明書を取って渡してほしい」と頼まれることがあります。なお、相続登記においては、相続放棄申述受理通知書の提出でもよいとする扱いとされています。
  • 役所から未納税金の督促を受けたとき
    被相続人が住民税や固定資産税、国民健康保険料などを滞納して亡くなった場合、役所から法定相続人に対して支払い(納税)の通知が届くことがあります。この場合も、役所に対して相続放棄をした事実を証明し支払いを免れるため、相続放棄申述受理証明書の提出を求められることがあります。

以上のほか、相続放棄申述受理通知書を紛失した場合、誰かに渡して手元にない場合は相続放棄申述受理証明書の取得が必要となります。前述のとおり、相続放棄申述受理通知書は一度しか発行されず、再発行もされないためです。

本人以外が相続放棄申述受理証明書を必要とするケース

一方、相続放棄した本人ではなく、「本人以外の第三者(本人以外の相続人や債権者など)」が相続放棄申述受理証明書を必要とするのは、主に以下のようなケースです。

  • 他の相続人が遺産の手続きを進めるとき
    複数の相続人がいる中で、誰か一人が相続放棄をした場合、残りの相続人で遺産分割協議を行ったり、預貯金の解約を行ったりします。この際、金融機関に対して「この人は相続放棄をしたので、残りのメンバーで手続きを進めます」と証明するために必要となります。本人が証明書を取ってくれない、あるいは疎遠で連絡が取れない場合に、他の相続人が自ら取得に動くことになります。
  • 次順位の相続人が、自分が相続人になったか確認・手続きを進めるとき
    相続放棄によって、相続権は次順位の相続人に移ります(例:被相続人の子どもが全員相続放棄した場合、被相続人の親や(親などの直系尊属がいない場合は)兄弟姉妹に移る)。新たに相続人となった人が、「先順位の相続人が本当に全員相続放棄したのか」ということを確認したり、自分自身の手続き(相続放棄や遺産分割など)を進めたりする際に必要になります。
  • 被相続人の債権者が、債権回収の手続きをするケース
    被相続人に借金があった場合、金融機関や貸金業者などの債権者は「誰に借金を請求すべきか」を確定させなければなりません。法定相続人から「相続放棄をした」と主張された際、債権者がその事実を確認するため、あるいは次順位の相続人へ請求を切り替えるために、自ら利害関係人として相続放棄申述受理証明書を取得することがあります。

相続放棄申述受理証明書の取得方法

相続放棄申述受理証明書を取得するには、相続放棄の申述が受理された裁判所(被相続人の最後の住所地を管轄する裁判所)に対して発行の申請をする必要があります。全国のどこの裁判所でも発行してもらえるわけではないため注意が必要です。

本人が取得する場合

本人が相続放棄申述受理証明書を取得する場合に必要なものは以下のとおりです。なお、申請方法申請書などを裁判所の窓口に持って行く方法郵送の方法があります。本人以外が取得する場合も同じです。

必要なもの注意点など
相続放棄申述受理証明書の交付申請書裁判所の窓口またはホームページから入手可能です。「事件番号」や「受理年月日」の記入が必要になります。
収入印紙(1通につき150円分)証明書の発行手数料です。必要な通数分を申請書に貼り付けます。※印紙への割印は絶対にしない。
本人確認書類運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなどの公的な身分証明書です。郵送申請の場合は、裏表のコピーを同封します。
印鑑(認印で可)申請書への押印に使用します。シャチハタ等のスタンプ印は不可とされることが多いため、朱肉を使う印鑑をご用意ください。
相続放棄申述受理通知書提出義務はありませんが、事件番号や受理年月日がすぐ確認できるため、持参(郵送時はコピーを同封)すると手続きがスムーズに進みます。
(郵送申請の場合)返信用封筒と切手郵送での交付を希望する場合に必要です。返信先(原則として申述人の住民票上の住所)と氏名を記入し、必要料金分の切手を貼ったものを同封します。

交付申請書の書き方については後ほど詳しく解説します。

本人以外が取得する場合

本人以外が取得する場合に必要なものは以下のとおりです。本人が取得する場合と基本的には同じですが、交付申請書を作るにあたってあらかじめ照会手続きを行っておく必要があること、「利害関係を証明する書類」「(場合によっては)被相続人の住民票の除票」が追加で必要になることが異なります。

必要なもの注意点など
相続放棄申述受理証明書の交付申請書窓口やHPで入手可能です。記入には「事件番号」等が必要なため、事前に裁判所へ「照会手続き」を行って確認しておく必要があります。
収入印紙(1通につき150円分)証明書の発行手数料です。必要な通数分を申請書に貼り付けます。※印紙への割印は絶対にしない。
本人確認書類運転免許証、マイナンバーカードなどの公的な身分証明書。郵送申請の場合は、裏表のコピーを同封します。
印鑑(認印で可)申請書への押印に使用します。シャチハタ等のスタンプ印は不可とされることが多いため、朱肉を使う印鑑をご用意ください。
利害関係を証明する書類
(戸籍謄本、契約書など)
申請者が利害関係人であることを客観的に証明する書類です。他の相続人の場合は「関係性がわかる戸籍謄本」、債権者の場合は「金銭消費貸借契約書のコピー」や「訴状」などが必要になります。
被相続人の住民票の除票
(または戸籍の附票)
被相続人(亡くなった方)の死亡の事実と、最後の住所地(管轄裁判所が正しいか)を確認するために提出を求められるケースがあります。
(郵送申請の場合)返信用封筒と切手郵送での交付を希望する場合に必要です。返信先(申請者の住所)と氏名を記入し、必要料金分の切手を貼ったものを同封します。

照会手続きについては後ほど詳しく解説します。

相続放棄申述受理証明書の交付申請書の書き方

相続放棄申述受理証明書の交付申請書は、各家庭裁判所の窓口やネット上から入手できます。申請書には概ね以下の項目を記入します。

記入項目書き方・注意点
事件番号と受理年月日「令和〇年(家)第〇〇号」「令和〇年〇月〇日受理」と記入します。
※ここが空欄や間違いだと発行されません。不明な場合は事前に裁判所へ「照会手続き」を行う必要があります。
被相続人の氏名誰の相続に関する放棄なのかを特定するために記入します。
申述人(相続放棄をした人)の氏名誰が相続放棄をしたのかを記入します。
申請者の住所・氏名・連絡先証明書の交付を申請する人の情報を記入し、氏名の横に押印(朱肉を使う認印)します。
本人が申請する場合:申述人と同じ内容になります。
本人以外が申請する場合:申請者自身(他の相続人や債権者など)の情報を記入します。日中連絡が取れる電話番号も必須です。
必要な通数「〇通」と記入し、通数 × 150円分の収入印紙を所定の枠内に貼り付けます。
※印紙には絶対に割印をしないでください。
使用目的(提出先)「〇〇銀行での預貯金解約手続きのため」「債権者への提示のため」など、何に使うのかを簡潔に記載します。

申請書を書く前に行う照会手続きとは?

これまでの解説でも触れたとおり、相続放棄申述受理証明書の交付を申請するためには、申請書に「事件番号」と「受理年月日」を正確に記入する必要があります。しかし、本人以外が取得しようとする場合、これらの情報が分からないことがほとんどです。そのような場合に、相続放棄申述受理証明書の取得に先立って家庭裁判所に対して行うのが「照会手続き」です。正式には「相続放棄・限定承認の申述の有無についての照会」と呼びます。

本人以外が相続放棄申述受理証明書を取得する場合は、まずこの「照会手続き」を行って裁判所から回答をもらい、「事件番号」と「受理年月日」を把握します。その後、その情報を元に「相続放棄申述受理証明書の交付申請書」を作成し、改めて相続放棄申述受理証明書の発行を申請する、という2段階の手順を踏むことになります。

照会手続きで分かること

指定した被相続人について、「特定の相続人が相続放棄の申述をしているかどうか」、そして受理されている場合は、その「事件番号」と「受理年月日」を裁判所から回答してもらえます。

照会手続きができる人

  • 相続人(自分自身が相続人になったか確認したい次順位の相続人や、共同相続人など)
  • 利害関係人(被相続人に対してお金を貸していた債権者など)

    ※被相続人の生前には照会できません。

照会手続きに必要なもの

家庭裁判所によって多少運用が異なりますが、一般的には以下の書類等を提出して行います。郵送での手続きも可能です。

必要なもの詳細・注意点
照会申請書裁判所の窓口やホームページで入手可能です。
被相続人の住民票の除票
(または戸籍の附票)
被相続人の死亡の事実と、最後の住所地(管轄裁判所)を確認するために必要です。
利害関係を証明する書類【他の相続人の場合】
被相続人との関係性がわかる戸籍謄本など
【債権者の場合】
金銭消費貸借契約書のコピー、請求書など
照会者の本人確認書類運転免許証やマイナンバーカードなどの公的身分証明書のコピーです。
返信用封筒と切手郵送で裁判所からの回答を受け取る場合に必要です。

費用と申請先

項目詳細
費用照会手続き自体は無料です(証明書発行時の150円の収入印紙は不要)。
※役所での戸籍謄本等の取得費用や、往復の郵送代は自己負担となります。
申請先被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

相続放棄申述受理証明書Q&A

最後に、相続放棄申述受理証明書に関してよくある疑問について回答します。

Q. 証明書に有効期限はありますか?

A. 証明書自体に有効期限はありませんが、提出先によって「発行から〇ヶ月以内」と指定されることがあります。

法律上、一度受理された相続放棄が取り消されることは原則としてないため、証明書自体の効力が失われることはありません。しかし、金融機関での預貯金解約などの手続きで使用する場合、提出先が「発行から3ヶ月以内(または6ヶ月以内)のもの」と独自のルールを定めていることがあります。取得後は手元に長期間保管せず、速やかに提出先へ提出するようにしましょう。

Q. 取得までにどのくらいの日数がかかりますか?

A. 窓口申請なら即日、郵送申請なら1週間〜10日程度が目安です。

家庭裁判所の窓口へ直接赴いて申請した場合、混雑状況にもよりますが、書類に不備がなければ通常はその日のうちに発行してもらえます。遠方の裁判所へ郵送で申請する場合は、往復の郵送期間や裁判所での処理手順を含めて、1週間〜10日ほど余裕を見ておくと安心です。

Q. インターネット(オンライン)で交付申請できますか?

A. 現在、オンラインでの交付申請には対応していません。

相続放棄申述受理証明書の交付申請は、家庭裁判所の窓口へ直接出向くか、郵送で申請するかのどちらかになります。裁判所のホームページから申請書のフォーマット(PDFやWordなど)をダウンロードして印刷することは可能ですが、データのままオンラインで申請を完結させることはできません。

Q. いつから証明書の取得が可能になりますか?

A. 家庭裁判所で相続放棄が正式に受理された日以降から取得可能です。

相続放棄の申述書を裁判所に提出したその日にすぐ取得できるわけではありません。裁判所での審査を経て、申述人あてに「相続放棄申述受理通知書」が届いていれば、すでに受理の手続きは完了しているため、いつでも証明書の交付申請が可能です。

Q. 古い相続放棄の証明書でも取得できますか?

A. 原則として、受理から30年以内であれば取得可能です。

家庭裁判所における相続放棄に関する記録(事件記録)の保存期間は、原則として「受理された日から30年」と定められています。そのため、数十年前の古い相続放棄であっても、30年以内であれば照会手続きや証明書の取得が可能です。ただし、30年を過ぎると記録が廃棄されてしまい、証明書が発行できなくなる可能性があるため注意が必要です。