相続放棄照会書で失敗しない書き方!不受理を避ける回答例と注意点

相続放棄照会書とは?

相続放棄照会書とは、家庭裁判所に対して相続放棄の申述を行った後、裁判所から申述人(手続きをした本人)宛てに郵送される質問書です。通常、申述後、約1〜2週間した後に郵送されてきます。なお、裁判所が申述書の記載等から照会の必要がないと判断したときは、郵送されてこないこともあります。

相続放棄とは、本来、相続人が相続するはずであった被相続人の相続財産を相続しないという相続人の重大な処分行為です。そのため、申述を受けた裁判所としても、相続放棄が申述人の意思に基づくものであるかなどを慎重に確認する必要があります。そのために用いられる書類がこの相続放棄照会書です。

相続放棄照会書の内容と回答例・失敗例

相続放棄照会書に書かれてある内容(照会事項)と、それに対する照会の趣旨、回答例、失敗例は表のとおりです。なお、照会事項の内容や形式は申述先の裁判所や裁判所に提出した申述書の内容(個別の事情)によって異なります。

照会事項照会の趣旨回答例失敗例
相続放棄はご自身の意思ですか?他の親族や債権者から強要され、無理やり相続放棄していないかの確認。はい/自分の意思です。兄に言われて仕方なく手続きしている。
②被相続人の死亡をいつ知りましたか?熟慮期間(3ヶ月)の起算点となる最重要項目。〇年〇月〇日(⚠申述書と一致させること)申述書と違う日付を書く/3ヶ月以上前の日付を理由なく書く。
③自分が相続人になったことを、いつ知りましたか?先順位者の放棄などで、死亡日と自分が相続人になったと知った日が異なる場合の起算点の確認。〇年〇月〇日(⚠申述書と完全に一致させる)申述書の記載と矛盾する日付を、曖昧な記憶で適当に書く。
④相続放棄をする理由は何ですか?相続放棄の動機・背景の確認。債務超過のため/生前疎遠であり生活状況を全く知らないため。遺産より借金の方が多いと聞いたからです。
(※聞いた時期によっては3ヶ月の起算点を疑われます)
⑤遺産を処分、消費、または受け取りましたか?民法が定める「法定単純承認(遺産に手をつける行為)」に該当していないかの確認。いいえ。一切手を付けていません。はい。預金を引き出して自分の生活費にしました。/はい。遺品を売却しました。
⑥生前の財産・債務の状況を知っていましたか?本人が被相続人の財産状況を把握できる立場(同居や財産管理など)にあったかどうかの確認。いいえ、全く知りませんでした。
(※事実の場合)
(詳細を知らないのに適当に)はい、知っていました。
借金の存在をいつ、どのように知りましたか?
※3ヶ月経過後
3ヶ月経過後の申立てで、起算点の繰り下げが認められる事実関係・経緯の確認。令和〇年〇月〇日、〇〇社からの督促状が届いて初めて知った。(具体的な日付やきっかけを書かない/曖昧に書く)
⑧なぜ3ヶ月以内に放棄しなかったのですか?
※3ヶ月経過後
遺産が全くないと信じており、かつそう信じるのが当然といえる特別な事情の有無の確認。生前全く交流がなく、財産も借金も一切ないと信じていたため。単純に手続きを忘れていたため。/面倒だったため。

💡回答のポイント

その1~申述書のコピーと見比べる:裁判所に提出した「相続放棄申述書」の控えを手元に置き、日付や理由に矛盾が生じないように書き写すのが鉄則です。
その2~余計なことは書かない:聞かれていない事情や、曖昧な記憶に基づく情報は書かないようにしましょう。迷った場合は「不明」とする方が安全なケースもあります。
その3~提出前に必ず「記入済みの照会書」をコピーしておく: 万が一、提出後に裁判所から電話で問い合わせが来た際、自分がどう回答したかを確認しながら答えるために必須です。スマホのカメラで撮影しておくだけでも構いません。
その4~回答期限を厳守する: 照会書には「到着から約1〜2週間以内」の回答期限が指定されています。仕事の都合などで期限に間に合わない場合は、絶対に放置せず、管轄の家庭裁判所に電話を入れて「いつまでに提出できるか」を伝えてください。
その5~嘘は書かない: 「少し遺産を使ってしまったが、バレないように隠しておこう」などと虚偽の回答をするのは極めて危険です。回答の仕方に迷う複雑な事情がある場合は、自己判断で記入する前に、必ず専門家に相談してください。

相続放棄照会書で致命傷となる失敗例

相続放棄照会書では、「①本人の意思」「②3ヶ月の熟慮期間」「③遺産処分の有無」に関する回答が、相続放棄の可否を決める上での最重要ポイントとなります。そこで以下では、この3点に関する致命的な失敗例と、正しい対処法について解説します。

失敗1:【本人の意思】「誰かに言われて手続きした」と書いてしまう

相続放棄は、あくまで「本人の意思)」に基づいて行われなければなりません。そのため、照会書で「他の親族に強要されたのではないか」「債権者から無理やり書かされているのではないか」と疑われるような回答をしてしまうと、致命傷になります。

例えば、「長男に遺産を集中させるため、兄に言われて仕方なく手続きしている」「債権者から放棄するように言われた」といった回答をしてしまうと、本人の意思に基づく申述ではないと判断され、相続放棄の申述は却下される可能性が高くなります。

失敗2:【3ヶ月の熟慮期間】「死亡を知った日」が申述書と矛盾している

相続放棄は、原則として、相続開始の原因及び自己が相続人であることを知ったときから3ヶ月以内(熟慮期間内)に行わなければならないという決まりがあります。

照会書に「被相続人の死亡をいつ知りましたか?」という質問がある場合、ここに最初に提出した申述書と違う日付を書いてしまったり、計算して3ヶ月を過ぎている日付を曖昧な記憶で書いてしまうと、「期間が経過した」と判断されて却下される可能性があります。回答する際は、必ず手元にある申述書の控えを確認し、矛盾のない日付を記入することが必要です。

失敗3:【遺産処分の有無】遺産を「処分・消費した」と安易に書いてしまう

被相続人の財産を一部でも処分(勝手に売却する、預金を引き出して使う、名義変更するなど)した場合、「相続を単純承認した(借金も含めてすべて引き継ぐことに同意した)」とみなされるルールがあります。これを法定単純承認と呼びます。

照会書で「遺産の中から自身の生活費を出した」「故人の車を売却した」「未払いの家賃を故人の預金から払った」などと安易に書いてしまうと、この法定単純承認に該当すると判断され、申述が却下されてしまいます。相続財産の取り扱いで少しでも不安な点がある場合は、照会書に書き込む前に専門家に相談した法が安心です。

もし却下されたら?

照会書を返送した後、家庭裁判所から「却下」の通知を受けたら、高等裁判所に対して「即時抗告」という不服申し立てを行うことができます。即時抗告は告知を受けてから2週間以内に行う必要があります。

一度不受理になった決定を覆すことは極めて難易度が高いため、不受理通知が届いた場合は、一刻も早く相続放棄に詳しい専門家(弁護士・司法書士)に相談してください。

相続放棄照会書のQ&A

最後に、相続放棄照会書に関してよくある質問にお答えします。

Q:裁判所から電話で問い合わせが来ることはないの?

A:相続放棄は多くの場合、書面審査で完結します。もっとも、事案によっては、家庭裁判所から、申述人宛てに直接電話がかかってくるケースもあります。電話では主に以下の確認が行われます。

  • 記入漏れや明らかな誤記がある場合 照会書の必須項目に書き忘れがあったり、日付の年号(令和と平成など)を明らかに間違えているような、軽微なミスの確認。
  • 回答内容が曖昧で、真意を確かめたい場合 照会書の自由記述欄に書かれた内容の意図が読み取れなかったり、法定単純承認に当たるかどうか際どい表現が含まれている場合の追加質問。
  • 手続きを急ぐ必要がある場合 書類に不備があり、再提出を待っていると熟慮期間(3ヶ月)を過ぎてしまう恐れがある場合など。

💡 電話がかかってきたら?
電話がかかってきたら、慌てずに以下の点に注意して対応してください。

  1. 控えを見ながら落ち着いて答える: 慌てて記憶だけで答えると、提出した書類と矛盾が生じる危険があります。「手元に提出した書類の控えを出しますので、少しお待ちください」と伝え、内容を確認しながら回答してください。
  2. その場で即答しなくても大丈夫:外出中などで確認が難しい場合は、無理に適当な回答をせず、「出先なので、後ほど資料を確認してこちらから折り返します」と伝えても全く問題ありません。
  3. 聞かれたことだけに簡潔に答える:不安になって余計な事情まで話しすぎると、かえって審査が長引いたり、不利な情報を与えてしまう可能性があります。質問された内容に対してのみ、事実を端的に答えるようにしましょう。

基本的には、提出した申述書や照会書の内容と「矛盾しないように事実を回答すること」が何よりも重要です。

Q:書き間違えてしまった場合、修正テープを使ってもいいですか?

A:修正液や修正テープは絶対に使用しないでください。 家庭裁判所に提出する公的な書類であるため、修正テープ等で消してしまうと「誰がいつ改ざんしたか分からない」とみなされ、書類の信用性が失われてしまいます。 万が一書き間違えてしまった場合は、間違えた箇所に二重線を引き、申述書に押印したのと同じ印鑑(認印で可)で訂正印を押して、すぐ近くの余白に正しい内容を書き直してください。不安な場合は、管轄の裁判所に連絡すれば新しい用紙を再発行してもらえることもあります。

Q:手続きをしてから2週間以上経ちますが、照会書が届きません。

A:裁判所の混雑状況や、事案によっては照会書が「省略」されることもあります。 通常は1〜2週間程度で届きますが、管轄の家庭裁判所が混雑している場合は3〜4週間ほどかかることもあります。 また、提出した申述書の内容や添付資料から「本人の真意であり、要件を満たしている」と裁判官が判断した場合は、照会書のプロセスが省略され、いきなり「相続放棄申述受理通知書(手続き完了の通知)」が届くケースも珍しくありません(特に司法書士や弁護士などの専門家が書類作成に関与している場合によく見られます)。 1ヶ月近く待っても何も音沙汰がない場合は、念のため管轄の裁判所へ進捗状況を電話で問い合わせてみましょう。