海外在住の相続人がいる場合の必要書類とは?手続きの流れを解説

相続が発生した際、(日本国籍をお持ちの方の)相続人の一人が海外に居住しているケースが出てくることがあります。しかし、いざ手続きを進めようとすると、「海外にいるため印鑑証明書が取れない」「遺産分割協議書にどうやって実印を押せばいいのか」など、国内の手続きとは異なる壁に直面します。
本記事では、海外在住の相続人がいる場合の相続手続きの進め方、必要となる代替書類(サイン証明書・在留証明書)、そしてスムーズに手続きを終えるための遺産分割協議書の工夫について詳しく解説します。

保有資格:R7司法書士試験合格者(2026年中に司法書士事務所を開業予定)、行政書士、ファイナンシャルプランナー(2級・AFP未登録)
取扱予定業務:遺産承継(預貯金、相続登記など)・生前対策(遺言、任意後見、信託など)・民事裁判・離婚
相続人が海外在住の場合の課題
遺産分割によって被相続人の遺産を承継するためには、相続登記や預貯金の解約・払い戻しなどの手続きを行う際に「遺産分割協議書」の提出を求められます。そして、その遺産分割協議書には相続人全員が「実印」を押印しなければなりません。また、「印鑑登録証明書」や不動産を相続する人の「住民票」の提出も求められます。
しかし、海外に住所を移している相続人は日本で印鑑登録がなされていないため、印鑑登録証明書を発行してもらえません。また、住民票も取得できません。そこで、海外にいる相続人には、実印・印鑑登録証明書や住民票の代わりとなるものを在外公館(日本大使館や総領事館)で取得してもらう必要があります。
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海外在住の相続人に準備してもらう必要書類
海外在住の相続人に「印鑑登録証明書」及び「住民票」の代わりに準備してもらうものは以下のとおりです。
【1】印鑑登録証明書→サイン証明書
印鑑登録証明書の代わりとして準備してもらうものは「サイン証明書(署名証明書)」です。これは、本人が間違いなく署名したことを領事等が証明するものですが、これには以下の2つの形式があります。提出先によって求められる形式が異なるため注意が必要です。
【形式1】貼付型
【形式1】は、作成済みの遺産分割協議書を現地の在外公館に持って行き、領事等の目の前でその書類にサインをします。そして、持参した遺産分割協議書と在外公館が発行するサイン証明書を綴り合わせ、担当官に割り印(契印)を押してもらう、というものです。
【形式2】単独型
【形式2】は、在外公館に備え付けの用紙に領事等の面前でサインをし、「サイン証明書」だけが単独で発行される、というものです。日本における印鑑登録証明書のように、証明書だけが1枚独立して発行されるイメージです。
【形式1】or【形式2】どちらを取得すべき?
相続登記がある場合(法務局に提出する場合)は【形式1】を取得してください。 金融機関の手続きのみであれば【形式2】でも通ることが多いですが、金融機関によっては【形式1】を求めてくるケースもあります。後々のトラブルや取り直しを防ぐには、あらかじめ提出先にどちらの形式のサイン証明書が必要かを確認しておくことが大切です。
サイン証明書の取得方法
海外在住の相続人がサイン証明書を取得するための一般的な手続きは以下の通りです。
【取得場所】
お住まいの国や地域を管轄する日本の在外公館(日本大使館や総領事館)
【必要なもの】
- 有効な日本のパスポート
- 署名する書類(遺産分割協議書など) ※【形式1】を取得する場合
- 証明書発給申請書 ※在外公館の窓口に備え付けられているほか、ホームページからダウンロードできる場合もあります)
- 手数料(現地通貨の現金での支払いが一般的です)
- (場合によって)滞在資格を確認できる書類(ビザやグリーンカードなど)
サイン証明書を取得する際に最も注意しなければならないのは「サインや拇印は、必ず在外公館の領事等の目の前で行わなければならない」という点です。【形式1】を取得するために日本の相続人から送られてきた遺産分割協議書を持って行く場合、事前に自宅などでサインしてから持って行くと、証明書を発行してもらえません。 書類は必ず未署名のまま(サイン欄を空欄にした状態)で窓口へ持って行くよう、海外の相続人に伝えておく必要があります。
なお、すでに日本国籍を離脱して外国籍となっている場合は日本の在外公館では手続きできません。現地の公証人(Notary Public)の面前で宣誓供述書(Affidavit)などを作成し、認証を受ける必要があります。
💡日本の公証役場でも取得できる
海外在住の相続人が一時帰国しているタイミングであれば、日本国内の公証役場で手続きを行うことも可能です。在外公館が遠方で手続きが難しい場合などに非常に便利な方法です。公証役場では、領事によるサイン証明書と同様に、公証人が本人の署名であることを証明してくれます(これを「私署証書の認証」と呼びます)。公証役場へ行く前には必ず電話等で予約を取り、必要なものなど確認を行ってください。
なお、提出先によっては公証役場での認証では受け付けてくれない可能性もあります。公証役場での認証で足りるか念のため確認しておくことをお勧めします。
【2】住民票の代わり→在留証明書
相続登記などで相続人の住所を証明する必要がある場合は、住民票の代わりに「在留証明書」を取得する必要があります。なお、在留証明書は、原則として「現地に3ヶ月以上滞在していること」が発給の条件となります。
在外公館が遠方にあったり、窓口が予約制であったりと、海外での手続きは負担がかかります。二度手間を防ぐためにも、「サイン証明書」と「在留証明書」は、同じ日にまとめて取得することをおすすめします。
在留証明書を取得する際の申請書には、日本の本籍地を番地まで正確に記入する必要があります。相続登記に在留証明書を使用する場合、法務局から「本籍地が記載された在留証明書」の提出を求められます。
【必要なもの】
- 有効な日本のパスポート
- 現地の住所を証明する書類(現地の運転免許証、公共料金の請求書、賃貸借契約書など)
- 滞在開始時期(期間)を確認できるもの
- 戸籍謄本(または抄本) ※発行から6か月以内のもの
相続人が海外在住のときは「遺産分割協議証明書」の活用を
ここまで「遺産分割協議書」に押す実印の印鑑登録証明書や在留証明書の話をしてきました。しかし、相続人が海外にいる場合、工夫をしなければ、この遺産分割協議書を作り上げるのに時間がかかってしまいます。
仮に1通の遺産分割協議書に相続人全員が署名・押印するとした場合、相続人全員に遺産分割協議書を送らなければならず時間がかかります。また、郵送の途中で紛失する可能性もないとはいえません。
そこで、遺産分割協議の成立を急いでいる、相続人が多い、海外に住んでいる相続人がいるなど、協議成立までに時間をかけたくない場合や負担を減らしたい場合におすすめなのが「遺産分割協議証明書」です。
遺産分割協議証明書とは、遺産分割協議の内容を記載した書面を相続人の人数分だけ作り、各相続人が個別に署名・押印(またはサイン証明)をする形式の書類です。 日本にいる相続人は実印を押印して印鑑証明書を添付し、海外にいる相続人はこの証明書を在外公館に持ち込んでサイン証明を受けます。
1通の遺産分割協議書を持ち回りせずに済み、時間短縮につながります。また、全員分の遺産分割協議証明書を一つにまとめることで、1通の遺産分割協議書に全員が署名・実印を押印したのと全く同じ法的な効力を持ちます。もちろん、相続登記や預貯金の解約・払い戻し手続きなどにも使用できます。
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【手続き別】相続人が海外在住のときの注意点
サイン証明書、在留証明書、遺産分割協議書(遺産分割協議証明書)以外に、手続き別に注意していただきたい事項をまとめました。
相続登記
もし、海外にいる相続人が不動産(の所有権)を取得することになった場合、相続登記(名義変更)のほか、日本国内における連絡先(連絡先となる人の氏名・住所など)もあわせて登記する必要があります。連絡先となる人がいないときは「連絡先となる人がいない」旨の登記が必要です。
預貯金の解約
銀行や証券会社などの金融機関では、海外のサイン証明書を受け付ける際の厳格なルールや、独自の所定用紙への署名を求められることがあります。後になって「この書式では受け付けられない」と言われないよう、必ず事前に金融機関の担当者に「海外在住の相続人がいる旨」を伝え、必要な書式や要件を確認してください。
また、解約した預貯金を海外の口座へ送金する場合にも注意が必要です。近年はマネーロンダリング対策が厳しく、多額の海外送金には遺産分割協議書などの根拠資料の提出が求められます。金融機関によっては、マイナンバーを持たない非居住者(海外在住者)への直接送金を受け付けていないこともあるため、解約手続きとあわせて「海外送金の方法」についても必ず事前確認を行いましょう。
相続税の申告(納税管理人の選任)
遺産総額が基礎控除額を超え、相続税の申告が必要な場合、海外在住の相続人も例外ではなく「相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」に申告と納税を行わなければなりません。海外に住みながら日本の税務署とやり取りをするのは難しいため、日本国内に住んでいる親族などを「納税管理人」として選任し、税務署へ届け出る必要があります。申告期限ギリギリになって慌てないよう、早めに税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

保有資格:R7司法書士試験合格者(2026年中に司法書士事務所を開業予定)、行政書士、ファイナンシャルプランナー(2級・AFP未登録)
取扱予定業務:遺産承継(預貯金、相続登記など)・生前対策(遺言、任意後見、信託など)・民事裁判・離婚

