数次相続と代襲相続の違いとは?複雑な相続登記のポイントを解説

身内が亡くなり相続の手続きを進めようとしたところ、「以前亡くなっていた別の親族の相続手続きも終わっていなかった」「手続き中に、さらに別の相続人が亡くなってしまった」というケースは少なくありません。 このように複数の相続が重なる事態においてよく耳にするのが「数次相続」と「代襲相続」です。

どちらも「複数の相続が発生した」という点では共通していますが、法律上の効果や相続登記における手続きの方法は大きく異なります。本記事では、数次相続と代襲相続の違いから、それぞれのケースにおける相続登記のポイント、遺産分割協議書の書き方までをわかりやすく解説します。

数次相続とは?

数次相続とは、最初の相続(一次相続)が発生した後、遺産分割協議や相続登記などの相続手続きが終わる前に、相続人の一人が亡くなってしまい、次の相続(二次相続)が開始して相続が重なってしまう状況のことです。

たとえば、上の親族関係で、親Eが令和7年6月に亡くなり(一次相続)、その相続人である親F、本人A、弟Gの3人で遺産分割協議中に、令和8年1月に本人Aが亡くなった(二次相続)、というケースが数次相続です。

これに対し、代襲相続とは、被相続人(親E)が亡くなる前に、その相続人が亡くなるなどして相続人ではなくなっていた場合に、その相続人に代わってその相続人の直系卑属が被相続人の相続人となる相続のことです。

たとえば、上の親族関係で、親Eが令和8年1月に亡くなったものの、それより前の令和7年10月に本人Aが亡くなっていたという場合に、本人Aに代わって子Cと子Dが親Eの相続人となるのが代襲相続です。

なお、弟Gが親Eより先に亡くなっていたとしても代襲相続は発生しません。弟Gには直系卑属(子)がいないからです。

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数次相続と代襲相続の違い

数次相続も代襲相続も「複数の相続が発生した」という点では共通していますが、次の3点に大きな違いがあります。

①相続人の死亡のタイミング
➁相続人の範囲
③遺産分割協議に参加する人

①相続人の死亡のタイミング

被相続人(親E)が亡くなった、その相続人(上のケースでは「本人A」)が亡くなるのが数次相続です。これに対し、親Eが亡くなる(または同時)に相続人が亡くなるのが代襲相続です。

➁相続人の範囲

数次相続での、被相続人(親E)の相続人は「親F、本人A、弟G」です。妻Bや子C、Dは親Eの相続人ではありません。これに対し、代襲相続での親Eの相続人は「親F、子C、子D弟G」です。本人Aに代わって子C、子Dが親Eの相続人となっていることが代襲相続の特徴です。

③遺産分割協議に参加する人

今回、令和8年3月に、被相続人である親Eの相続財産(一次相続)について遺産分割協議を行うとします。

この場合、数次相続では、本来の相続人である親F、弟Gに加えて妻B、子C、子Dも遺産分割協議に参加しなければなりません。確かに、妻B、子C、子Dは親Eの相続人ではありません。しかし、本人Aが亡くなったことによって、妻B、子C、子Dは「本人Aの親Eの相続人としての地位」を相続するからです。なお、妻B、子C、子Dは、親Eのほか本人Aの相続(二次相続)についても遺産分割協議する必要があります。

これに対し、代襲相続では、本来の相続人である親F、弟Gに加えて代襲相続人である子C、子Dが遺産分割協議に関与しなければなりません。数次相続の場合と違い、子C、子Dは親Eの相続人だからです。妻Bは親Eの相続の遺産分割協議には参加しませんが、本人Aの相続の遺産分割協議には関与します。

【数次相続と代襲相続との違い】

項目数次相続代襲相続
被相続人の死亡被相続人の死亡
本来の相続人本来の相続人+代襲相続人
本来の相続人+本来の相続人の相続人本来の相続人+代襲相続人

数次相続における遺産分割協議書の書き方

前述のとおり、数次相続では一次相続と二次相続の2つの遺産分割協議を行う必要があります。そして、遺産分割協議書についても、手続きの煩雑さや混乱を避けるため、一次相続の分と二次相続の分とを別々に作成することが多いです。ただ、一次相続と二次相続の相続人が同じである場合などは、1通にまとめて作成することもあります。

ここでは、一次相続、二次相続で以下のような遺産分割協議が成立したとして、一次相続と二次相続の遺産分割協議書を別々に作成することとし、それぞれの書き方について解説します。なお、一次相続では、本来の相続人(親E、弟G)に加えて、死亡した相続人の相続人(妻B、子C、子D)も遺産分割協議に関与しなければなりません。

遺産分割協議の内容
【1】一次相続:親Fが親E名義の不動産(土地・建物)を取得する
【2】二次相続:本人A名義の預金1,000万円を妻B、子C、子Dが法定相続分どおり取得する

【1】一次相続の遺産分割協議書の書き方

遺産分割協議書

被相続人 :(親Eの氏名)  
生年月日 :昭和〇年〇月〇日  
死亡年月日:令和〇年〇月〇日  
本籍地  :〇〇県〇〇市〇丁目〇番地  
最後の住所:〇〇県〇〇市〇丁目〇番地

相続人兼被相続人:(子(本人)Aの氏名)・・・・①  
生年月日 :昭和〇年〇月〇日  
死亡年月日:令和〇年〇月〇日  
本籍地  :〇〇県〇〇市〇丁目〇番地  
最後の住所:〇〇県〇〇市〇丁目〇番地

上記被相続人 (親Eの氏名) の遺産について、共同相続人全員において遺産の分割について協議をした結果、次のとおり決定した。なお、共同相続人の1人である(子Aの氏名)が令和〇年〇月〇日に死亡したため、(子Aの氏名)の相続人である(妻Bの氏名)、(子Cの氏名)、(子Dの氏名)がその地位を承継し、本協議に参加した。・・・・➁

  1. 被相続人 (親Eの氏名) の有する下記不動産(土地・建物)は、(親Fの氏名)が取得する。

(不動産の表示)
<土地> 所 在:〇〇県〇〇市〇丁目  
     地 番:〇〇番  
     地 目:宅地  
     地 積:〇〇.〇〇平方メートル
<建物> 所 在:〇〇県〇〇市〇丁目〇番地  
     家屋番号:〇〇番  
     種 類:居宅  
     構 造:木造瓦葺2階建  
     床面積:1階 〇〇.〇〇平方メートル、2階 〇〇.〇〇平方メートル

以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したことを証するため、本協議書5通を作成し、各自署名捺印のうえ、それぞれ1通を保管する。

令和〇年〇月〇日

相続人 住所:○○県○○市〇丁目○○ ・・・・③
    氏名:(親Fの氏名) ㊞(実印)

相続人 住所:○○県○○市〇丁目○○
    氏名:(子Gの氏名) ㊞(実印)

相続人兼(子Aの氏名)の相続人 住所:○○県○○市〇丁目○○ ・・・・③
               氏名:(妻Bの氏名) ㊞(実印)

相続人兼(子Aの氏名)の相続人 住所:○○県○○市〇丁目○○
                氏名:(子Cの氏名) ㊞(実印)

相続人兼(子Aの氏名)の相続人 住所:○○県○○市〇丁目○○
                氏名:(子Dの氏名) ㊞(実印)

被相続人と「相続人兼被相続人」の併記

通常の遺産分割協議書は被相続人(親E)の情報のみを記載しますが、数次相続の場合は、誰が誰の地位を承継しているのかを明確にするため、途中で亡くなった子Aの情報を「相続人兼被相続人」として併記します。

前書き(冒頭文)で経緯を説明する

協議書の冒頭で、「遺産分割協議未了のまま子Aが死亡したため、その相続人である妻B・子C・子Dが地位を承継して参加した」という経緯を明記します。

当事者の「肩書」の使い分け

署名欄では、遺産分割協議に参加する相続人の立場によって肩書を書き分けます。親Fと弟Gは親Eの相続人であるため「相続人」と書きますが、妻B・子C・子Dは相続人ではないため「相続人兼(子Aの氏名)の相続人」と書きます。

【2】二次相続の遺産分割協議書の書き方

続いて、二次相続の遺産分割協議書の書き方について解説します。二次相続の遺産分割協議は、あくまで本人Aの遺産に関する話し合いをするため、本人Aの相続人ではない親Fや子Gは、遺産分割協議に参加する必要はありません。妻B、子C、子Dの3人で遺産分割協議を行います。

遺産分割協議書

被相続人 :(子Aの氏名)・・・・①
生年月日 :昭和〇年〇月〇日  
死亡年月日:令和〇年〇月〇日  
本籍地  :〇〇県〇〇市〇丁目〇番地  
最後の住所:〇〇県〇〇市〇丁目〇番地

上記被相続人(子Aの氏名)の遺産について、共同相続人全員において遺産の分割について協議をした結果、次のとおり決定した。

  1. 被相続人の有する下記預金については、相続人 (妻Bの氏名) が2分の1、相続人 (子Cの氏名) が4分の1、相続人 (子Dの氏名) が4分の1の割合で、それぞれ取得する。・・・・➁  
                         記
    〇〇銀行 〇〇支店  
    普通預金 
    口座番号 〇〇〇〇〇〇〇  
    口座名義 (子Aの氏名)
  2. 相続人 (妻Bの氏名) は、相続人を代表して上記預金の解約および払戻しの手続きを行う。払戻しを受けた金員のうち、(子Cの氏名)および(子Dの氏名)の取得分については、(妻Bの氏名)から別途指定する各自の口座に速やかに振り込んで引き渡すものとする。なお、振込みに必要な手数料は各自の負担とする。・・・・③
  3. 前項の解約・払戻しに伴い生じた利息等の端数については、(妻Bの氏名)が取得する。・・・④

以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したことを証するため、本協議書3通を作成し、各自署名捺印のうえ、それぞれ1通を保管する。

令和〇年〇月〇日

相続人 住所:○○県○○市〇丁目○○ ・・・・①
    氏名:(妻Bの氏名) ㊞(実印)

相続人 住所:○○県○○市〇丁目○○
    氏名:(子Cの氏名)㊞(実印)

相続人 住所:○○県○○市〇丁目○○
    氏名:(子Dの氏名)㊞(実印)

①被相続人と当事者の「肩書」

二次相続では子Aの遺産のみが協議の対象となります。したがって、被相続人の箇所には子Aのみの情報を書きます。また、遺産分割協議に参加した当事者は子Aの相続人の氏名を署名し、実印で押印します。

具体的な「金額」ではなく「割合」で記載する

預金は、相続発生後も利息がつくなどして変動する可能性があります。そのため「1,000万円を500万・250万・250万に分ける」と具体的な金額を指定してしまうと、解約時の利息分などの処理が不明確になり、金融機関で手続きが滞ったり、相続人間でトラブルとなる可能性があります。 金額ではなく「2分の1」「4分の1」と割合で指定することがポイントです。

「代表受領」の条項を入れておく

1つの口座を複数人で分ける場合、原則として預金を取得した相続人全員が金融機関の書類に実印を押印したり、窓口へ出向いたりする必要があります。 これを避けるため、上記の条項例のように「代表者(妻B)が単独で解約手続きを行い、あとで他の相続人(子C・子D)に送金する」旨を記載しておくと、金融機関には代表者1名が対応するだけで解約が完了し、手続きが非常にスムーズになります。

利息などによる「端数」の処理を決めておく

預金を割合で分割する際、利息などで1円未満の端数が生じ、きれいに割り切れないケースがあります。このような事態に備えて、「端数が生じた場合は〇〇が取得する」と明記しておくと安心です。また、代表受領をした場合の送金にかかる振込手数料の負担者についても明記しておくと、後々の不要なトラブルを防げます。

数次相続における相続登記のポイント

数次相続で不動産を相続する場合でも相続登記が必要となります。先ほどのケースは「一次相続の相続人(親F)」が不動産を相続するケースでした。しかし、たとえば妻Bのように「二次相続の相続人」が不動産を相続するケースでは、相続登記の難易度があがるため注意が必要です。

【1】原則:相続順に名義変更が必要

不動産の名義変更は、原則として実際に相続が発生した順番に行っていく必要があります。

たとえば、親E名義の不動産を、最終的に妻Bが引き継ぐことになったとします。この場合、いきなり「親E → 妻B」へ名義を変えることはできません。妻Bは親Eの死亡(相続)を原因として不動産の名義を取得したわけではないからです。

この場合、まずは親Eの相続を原因とする「①親E → 本人A」への名義変更(相続登記)をした後、本人Aの相続を原因とする「②本人A → 妻B」への名義変更を行わなければなりません。 申請が2つになる分、手間や費用も2倍かかってしまいます。

【2】例外:条件をクリアすれば1回で登記が可

もっとも、「中間の相続人が単独(一人)であること」という条件を満たせば、最初の不動産の名義人(親E)から最終的な不動産の名義人(妻B)にいきなり名義を移すことができます(中間省略登記)。

この「中間の相続人が単独である」という状態は、始めから相続人が一人の場合のほか、特別受益や相続放棄・遺産分割協議などによって相続人が一人になった場合も含まれます

したがって、たとえば、先ほどのケースの一次相続の遺産分割協議の結果、子(本人)Aが親Eの不動産を取得することになった場合も「中間の相続人が単独であること」にあたります。

この場合は、相続登記によって親Eの名義から妻Bの名義に直接名義を移すことができます。なお、今回は妻Bが単独で名義を取得していますが、最終の名義は複数(たとえば、妻B・子C・子Dの共有)でもよいとされています。

【3】土地の登録免許税がタダになる特例がある

名義変更の登記をする際、通常は法務局に「登録免許税」という税金を納める必要があります。しかし、数次相続の場合、途中で亡くなってしまった人の名義にするための登録免許税が「タダ(免税)」になる特例があります。 現在のところ、令和9年(2027年)3月31日までの時限措置です。

これを利用すればには、相続登記をする際に使う登記申請書の「登録免許税」の欄に、免税措置の根拠条文である「租税特別措置法第84条の2の2第1項により非課税」と書かなければなりません。また、特例の対象は「土地」のみで「建物」には使えない点にも注意が必要です。

【4】多くの戸籍を集める必要がある

名義変更には、被相続人の「生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍」が必要です。 数次相続の場合、最初の被相続人(親E)だけでなく、途中で亡くなった相続人(本人A)の分まで一生分の戸籍をさかのぼって集めなければなりません。古い戸籍(除籍謄本や改製原戸籍)は手書きで読み取りづらく、非常に骨の折れる作業になります。

💡 ワンポイント
戸籍をさかのぼって調査した結果、「全く面識のない親族」や「現在どこに住んでいるかわからない相続人」が発覚して手続きがストップしてしまうケースも少なくありません。もし連絡が取れない相続人が見つかった場合は、以下の記事をご参照ください。
参照: 相続人が行方不明の場合のNG行動とは?遺産分割を安全に進める方法