公正証書遺言の証人|なれない人・費用相場・トラブルとリスク

公正証書遺言を作成しようとした際、「証人2名が必要です」と言われ、誰に頼めばいいのか戸惑う方は少なくありません。「家族や親族にお願いすればいいか」「友人に頼むと面倒をかけるかもしれない」と悩むこともあるでしょう。

実は、公正証書遺言の証人は誰でもなれるわけではなく、法律で「なれない人(欠格事由)」が決められています。もし誤って該当する人を証人にしてしまうと、せっかく作成した遺言が無効になってしまうおそれがあります。また、安易に知人に依頼したことで、遺言の内容が周囲に漏れて親族間のトラブルに発展するケースも少なからず存在します。

そこで、本記事では、公正証書遺言の証人が担う役割や責任から、証人になれない人、証人選びで起こりやすいトラブル、そして依頼先(知人・公証役場・専門家)ごとの費用相場やメリット・デメリットまで解説します。

この記事を公正証書遺言の証人選びの際の参考にしていただけると幸いです。

公正証書遺言に「証人2名」が必要な理由と役割

では、公正証書遺言を作成するには、なぜ証人が必要なのか、証人はどのような役割を負うかについて解説します。

【1】証人は何をするのか?

公正証書遺言の証人は、作成日当日、作成の現場に立ち会う必要があります。立ち会いでは以下のことを行います。

①遺言者本人の確認と意思確認

遺言者本人が間違いなく公証役場に来ているか、そして誰かに強制されることなく、自らの意思で遺言を作成しようとしているかを確認します。

※ご高齢や認知症など、遺言を作成する本人の判断能力(遺言能力)に不安がある場合の基準や対策については、以下の記事で詳しく解説しています。

②遺言内容の確認

公証人が作成した遺言書の内容を読み上げるため、証人はそれをしっかりと聞き、遺言者の意向と相違がないかを確認します。

③署名・押印

読み上げられた内容に間違いがないと確認できたら、遺言者・公証人と共に、証人も遺言書の原本に署名し、押印します。

このように、証人は、遺言が間違いなく本人の真意によってなされたことを客観的に担保するために重要な役割を担っています。

💡証人が準備しておくもの
立ち会いにあたって、証人があらかじめ準備しておくものは次のとおりです。

  • 本人確認書類:運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど、顔写真付きの公的な身分証明書を当日に持参します。
  • 印鑑:遺言書原本への押印に使用します。実印である必要はなく認印で可能ですが、シャチハタなどのゴム印は使用できません。

本人確認書類については、(顔写真なしの保険証等の場合の扱いなどなど)公証役場によって若干運用が異なるケースがあるため、あらかじめ公証役場へ確認しておくとよいでしょう。

【2】証人には重い責任がある?

「証人になる」と聞くと、「後からトラブルに巻き込まれたり、重い法的責任を負わされたりするのでは?」と不安になるかもしれません。しかし、証人になったからといって、遺言の内容や将来の相続トラブルに対して責任を負うことは一切ありません。借金の肩代わりや遺言を執行する義務が生じることもないため、その点は安心です。

ただし、証人には「守秘義務」があります。遺言は非常にプライベートな内容を含みます。証人になったことで知った遺言者のプライベートなことや遺言内容そのものを第三者や他の親族に漏らすようなことをしてはいけません。

万が一、秘密を漏らした場合は不法行為に基づく損賠賠償責任という法的責任を負う可能性があります。また、法的責任以上に、人間関係が破綻してしまうことになるでしょう。

友人や知人に証人を頼む場合は、証人にはこの守秘義務があることを説明し、納得した上で引き受けてもらうことが必要です。

【要注意】公正証書遺言の証人になれない人

公正証書遺言の証人は、誰にでも頼めるわけではありません。法律では、遺言手続きの公平性や中立性を守るために「証人になれない人(欠格事由)」を定めています。万が一、当てはまる人を証人にして公正証書遺言を作ってしまうと、せっかく手間暇かけて作った公正証書遺言が後から無効になってしまう可能性があるため、証人選びには細心の注意が必要です。ここでは、公正証書遺言の証人になれない人について解説します。

【1】未成年者

まず、18歳未満の未成年者は公正証書遺言の証人になることができません。

遺言の作成という重要な法律行為に立ち会うには、その内容や手続きの意味を正しく理解できる十分な判断能力が必要とされるためです。

【2】推定相続人・受遺者と、その配偶者・直系血族

次に、遺産を相続する予定の人(推定相続人)や、遺言によって財産を譲り受ける人(受遺者)も公正証書遺言の証人になれません。さらに、その配偶者(妻や夫)や直系血族(親、祖父母、子、孫など)も証人になれません。

上記の人は直接的あるいは間接的に遺言に利害関係をもつ人です。こうした利害関係者が作成の場に同席すると、遺言の内容を自分に有利になるよう誘導するおそれがあり、遺言の客観性や公平性が保てなくなるからです。「証人は身内にお願いするのが一番安心」と思われるかもしれませんが、意外にも証人にはなれないことになっているため注意が必要です。

【3】公証人の配偶者、四親等内の親族、書記・使用人

遺言書を作成する公証人の配偶者や親族、また公証役場で働いている職員も公正証書遺言の証人にはなれません。

これは、公証人側の身内だけで手続きを完了できてしまう状態を防ぎ、遺言の作成手続きの中立性と透明性を確保するためです。

証人選びで起こりやすい3つのトラブルとリスク

「費用がかからないから」「身近で頼みやすいから」といった理由で、安易に友人や知人に証人を依頼すると、思わぬトラブルに発展するケースが少なくありません。ここでは、証人選びで起こりやすい3つの代表的なリスクについて解説します。

【リスク1】遺言の内容が周囲に漏れてしまう

まず、遺言の内容が周囲に漏れて生前の親族間のトラブルに発展してしまうリスクです。

友人や知人に証人を依頼したとしても、友人や知人には法律上の守秘義務はありません(行政書士、司法書士などの専門家にはあります)。そのため、悪気はなくても「〇〇さんが遺言を作っていた」「長男に多く財産を残すらしい」といった情報が、世間話の延長で周囲に漏れてしまう可能性があります。遺言の内容が親族の耳に入れば、「なぜ自分には残してくれないのか」などというトラブルに発展してしまうおそれがあります。友人や知人に証人を頼む場合は、情報漏洩のリスクを常に念頭に入れておかなければならなくなります。

【リスク2】証人の欠格事由を見落として遺言が無効になる

次に、証人の欠格事由を見落とした結果、作成した公正証書遺言が無効になってしまうリスクです。

この点に関し、「公証役場で事前にチェックしてくれるから大丈夫では?」と思われるかもしれません。しかし、公証人が証人の戸籍までさかのぼってきちんと調査するわけではなく、あくまで申告ベースでの確認にとどまります。そのため、「受遺者の配偶者」など複雑な関係性は、公証人も見落としてそのまま手続きが進んでしまうおそれがあります。万が一、欠格事由に気づかないまま遺言が作成されてしまうと、後から無効と判断されるリスクを抱え続けることになります。安全・確実な遺言を残すには、身分関係の確認が不可欠です。

【リスク3】当日急にキャンセルされて作成できない

次に、証人にお願いしていた人が当日になって急にキャンセルし、遺言の作成手続きがストップしてしまうリスクです。

公正証書遺言の作成には、必ず2名以上の証人が同じ日時に立ち会う必要があります。しかし、一般の友人や知人に依頼している場合、急な体調不良や仕事の都合などで当日突然欠席されてしまう可能性もないとはいえません。もし証人が1名でも欠けてしまうと、その日は遺言を作成できなくなります。再度日程を調整し直す必要が生じ、ご本人の体調不安など急を要する場面では、遺言を残せなくなるという最悪の事態も想定されます。

証人は誰に頼むべき?依頼先ごとの費用の相場とメリット・デメリット

では、公正証書遺言の証人は具体的に誰へ依頼するのがベストなのでしょうか。主な依頼先としては「友人・知人」「公証役場」「行政書士などの専門家」の3つが挙げられます。それぞれ費用相場やメリット・デメリットが大きく異なるため、ご自身の状況や優先したいポイントに合わせて最適な依頼先を選びましょう。

【1】友人・知人に依頼する場合

項目詳細
費用の相場無料〜数千円程度(お礼のお菓子や食事代、心付けなど)
メリット・費用を最も安く抑えられる
・顔なじみのため依頼のハードルが低い
デメリット・情報漏洩のリスクがある
・急病などで当日キャンセルの可能性がある
・知人に心理的負担をかける
依頼の方法本人に直接依頼し承諾を得たら、氏名・住所・生年月日・職業をあらかじめ公証役場へ伝える

【2】公証役場で手配してもらう場合

項目詳細
費用の相場1人あたり 5,000円〜1万円程度(2名で1万〜2万円程度)
メリット・欠格事由の心配がなく安心・確実
・自分で証人を探す手間がかからない
・当日ドタキャンされるリスクがない
デメリット・当日初めて会うため緊張感がある
・証人立ち会いのみで、事前相談や内容作成のサポートは受けられない
依頼の方法公証役場との事前打ち合わせの際に「証人の手配もお願いしたい」と依頼する

【3】行政書士などの専門家に依頼する場合

項目詳細
費用の相場1人あたり 1万円〜1万5千円程度(作成サポート全体に含まれる場合あり)
メリット・法律上の守秘義務が課されている
・欠格事由や当日キャンセルの心配がない
・内容の相談から当日の立ち会いまで一貫サポート
デメリット・他の方法に比べて費用がかかる
依頼の方法行政書士・司法書士などの専門家に、遺言書作成サポートまたは証人派遣を直接相談・依頼する